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2024.11.25
国際秩序
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オリンピック
民主主義
答え合わせ:「経済力から紐解くパリ五輪のメダル予想」
~米・中・日はほぼ予想通り、開催国フランスと競泳王国オーストラリアが上振れ~
石附 賢実
- 要旨
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2023年11月の拙稿において、夏季オリンピックの「メダル数シェア」(上位25か国)と、経済力を示す「GDPシェア」(名目米ドル)との間には強い相関が認められることを示した(相関係数0.8524)。
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当該レポートでは、上記相関の単回帰式に2023年のGDPシェアを代入してパリオリンピックのメダル数を予測した。日本については直前のオリンピックを開催しており、そのレガシーから「開催国プレミアム」は消滅せず、「東京オリンピックで獲得したメダル数と回帰直線上の理論値の中間」である47個と予想した。また、金メダルはその3分の1の16個と予想した。
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実際の総メダル数は45個、うち金20個とかなり予想と近しい結果となった。金メダルの割合は44%とこれまでの海外開催オリンピックの「内弁慶ディスカウント」を払拭した。また、米・中の総メダル数は米125個(回帰直線上の理論値は121個)、中国91個(同86個)とこちらもニアピンとなった。
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経済力との相対感でメダル数が上振れている主要国は、日本以外では英国、オーストラリア、フランス。フランスは「開催国プレミアム」、オーストラリアは種目数の多い競泳一競技でメダル数を稼いでいる。英国は多くのスポーツ・ルールの発祥の地であるとともにパクス・ブリタニカの系譜を持つ。
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日本が多くのメダルを獲った種目として、柔道(8個)、そして今回はレスリング(11個)とフェンシング(5個)の健闘が光った。オーストラリアの競泳と同様に、日本が得意とする競技は種目、体重別、個人、団体などの掛け算でメダル数が多い。経済力が相対的に下がっているなかで日本が存在感を示し続けるためには、メダル数の多い得意種目に活路を見出す必要があるのかも知れない。
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オリンピックは国単位で争う以上、紛れもなく国家間の競争である。国のバックアップとともに、国民のスポーツ文化への理解と経済的余裕が重なって、プロスポーツやアマチュアスポーツが発展する。だからこそ経済力がメダル数に効いてくる。
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1.はじめに~経済力を元にしたメダル数予想(2023年11月時点)
2023年11月の拙稿(石附(2023b))において、夏季オリンピックの「メダル数シェア」(上位25か国)と、経済力を示す「GDPシェア」(名目米ドル)との間には強い相関が認められることを示した(相関係数0.8524、資料1)。

当該レポートでは、上記の表中の単回帰式に2023年のGDPシェアを代入してパリオリンピックのメダル数を予測した。単回帰式からは米国121個、中国86個、日本36個となるが、日本については直前に自国でオリンピックを開催しており、そのレガシーから「開催国プレミアム」は消滅せず、「東京オリンピックで獲得したメダル数58個と回帰直線上の理論値である36個の中間」である47個と予想した。また、金メダルはその3分の1の16個と予想した。
2.結果
実際には日本のメダル数は45個、うち金20個とかなり予想と近しい結果となった。金・銀・銅に占める金メダルの割合は44%とこれまでの海外開催オリンピックの「内弁慶ディスカウント」(注1)を払拭した。また、米・中の総メダル数は米125個(回帰直線上の理論値は121個)、中国91個(同86個)とこちらもニアピンとなった(資料2、3)。


資料2の「差異」の列で、0%を超える国が経済力と比して上振れているイメージとなる。メダル数上位10か国を見ると、上振れている国が殆どで、下振れているのはドイツのみである。この後、少し詳しく見ていくが、ロシアが国として出場できておらず、また個人資格での出場もベラルーシと合わせて30名程度(報道ベース)とかなり少なく、その分のメダルが他国に回ったと思われる。ドイツは例外だが、ヨーロッパの国々が実質的なホームアドバンテージを享受した可能性もあるだろう。
ここで、資料1の東京オリンピックと同様の手法で、パリオリンピックにおけるメダルシェアとGDPシェア(2023)との関係を散布図でみてみよう(資料4)。回帰直線、プロットされている国の位置は資料1とかなり近しいが、ロシアが消えたのと、開催国フランスの上振れが際立つ。なお、相関係数は0.8868となり、東京の0.8524から更に相関が強まった。回帰直線の傾きが若干スティープ化したのは、米国のメダル数シェアが10.5%から12.1%伸びたこと、つまり寡占が強まったことによる。

3.経済力から上振れた開催国フランス、競泳王国オーストラリア、そして日本
経済力との相対感でメダル数が上振れている上位国として、日本以外でフランス、オーストラリア、英国を紹介したい。フランスはホーム有利の「開催国プレミアム」があったものと思われる。オーストラリアは種目数の多い競泳一競技でメダル数を稼いでおり、経済力の倍以上の活躍を見せたと言える。英国はこれまでのオリンピックでも強さを見せており、多くのスポーツ・ルールの発祥の地であるととともにパクス・ブリタニカの系譜を持ち、日本では馴染みが薄いがその名残ともいえる英連邦のスポーツ大会「コモンウェルスゲームズ」も4年毎に開催されている。
日本は、直近の東京オリンピック含め4度の自国開催に裏打ちされた国民のオリンピックに対する熱量、選手層・指導者層の厚み、競技施設などのレガシーがあり、上振れているものと思われる。その日本がパリオリンピックで多くのメダルを獲った種目としては、これまでと同じく柔道(8個)、そして特に今回はレスリング(11個)とフェンシング(5個)の健闘が光った。オーストラリアの競泳(18個)と同様に、格闘技は種目、体重別、個人、団体などの掛け算でメダル数が多い。経済力が相対的に下がっているなかで日本が存在感を示し続けるためには、メダル数の多い得意種目に活路を見出す必要があるのかも知れない。
4.おわりに
オリンピックは国単位で争う以上、紛れもなく国家間の競争である(注2)。権威主義的とされる国のみならず、民主主義的な国でも多額のスポーツ関連予算を計上するなど国が全面バックアップしている場合も少なくない。国民のスポーツ文化への理解と経済的余裕が重なって、プロスポーツやアマチュアスポーツが発展する。だからこそ国力の源泉たる経済力がメダル数に効いてくる(資料5)。

なお、パリオリンピック閉幕後に同パラリンピックが開催されているが、こちらは様相がかなり異なり、中国が圧倒的な存在感を放っている(メダル数220個、2位の英国が124個)。パラリンピックの場合は経済力に加えて人口、障害に応じたカテゴリーなどの競技特性、国家の意志、パラスポーツへの理解と支援、このほか様々な要因が複雑に絡み合っているものと思われる。
最後に、経済力からメダル数を紐解く試みは、アスリートの努力や競技成績などを一切考慮しておらず、その点はご容赦いただきたい。あらためてオリンピアン・パラリンピアンそれぞれの限界への挑戦に心からの敬意を表して、結びとさせていただく。
【注釈】
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「内弁慶」とは家のなかでは強がっているが外では意気地のないことを指し、本稿では「アウェーに弱い」という趣旨で使用している。日本のプロ野球では2003年の阪神タイガース対ソフトバンクホークスの日本シリーズが「内弁慶シリーズ」と称されており、史上初めて7戦全試合においてホームチームが勝利した。
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厳密には国のみならず、地域やオリンピック委員会として参加しているチームもある。なお、オリンピック憲章第6条第1項には「国家間の競争ではない」と明記されているものの、これと表彰式の運営や各国の意識とは乖離している状況があると思われる。
【参考文献】
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石附賢実(2021)「オリンピックと国威発揚、メダル数と経済力の深い関係~データで見る国際秩序(4)~」()
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石附賢実(2022)「冬季オリンピックは西側OECD諸国が席巻~メダル獲得には気候・スポーツ文化・資金力を兼ね備える必要~」
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石附賢実(2023a)「世界のパワー・バランスは西側優勢?~時間は中国に不利に働く、西側は繁栄・協調・高潔性を示し続けられるか~」
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石附賢実(2023b)「経済力から紐解くパリ五輪の金メダル予想、日本は16個?~総メダル数は47、世界のパワー・バランスは西側優勢か?(番外編)~」
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IMF(2023、2024) “World Economic Outlook Database”
石附 賢実
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

