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2024.07.16
ライフデザイン
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家計・親族交流・子育てに関する夫婦の意思決定では、「情報共有」と「振り返り」が重要
北村 安樹子
1.お金、親・親族、子育てをめぐる夫婦の意思決定者
夫婦の財布を管理しているのは夫か妻か。図表1は、この問いに対する有配偶女性の回答結果をみたものである(注1)。この調査では、回答の選択肢として「夫」「どちらかというと夫」「ふたりで一緒に」「どちらかというと妻」「妻」の5つが設けられている。前者2つと後者2つの選択肢は、夫婦のいずれかが中心となって意思決定を行う点で「担当型」、「ふたりで一緒に」は夫婦の相談・協議等が想定される点で「相談型」といえる。
調査結果をみると、「①車や耐久消費財など高価なものの購入」に関しては、「ふたりで一緒に」がほぼ半数を占めて最も多いものの、「夫」(「夫」「どちらかというと夫」の合計値、以下同じ)も4割弱で、約1割の「妻」(「妻」「どちらかというと妻」の合計値、以下同じ)を大きく上回っている。これに対して「②家計管理・運営」に関しては、「妻」が6割超を占めて最も多く、「ふたりで一緒に」を含めると、妻の関与割合は9割弱を占める。つまり、①では「ふたりで一緒に」を含め夫の9割近くが意思決定に関与するのに対し、②では4割に満たない。これらから、日常の家計は妻が中心となって管理・運営を行っているが、高価な物を購入する場合は夫の裁量が大きい夫婦が多いことがわかる。
家計以外の③親や親族とのつきあい、④育児や子どもの教育についても、「ふたりで一緒に」もしくは「妻」と答えた人が大半で、「夫」と答えた人は1割に満たない。夫が意思決定に関与する割合に注目した場合、もっとも高い①が9割弱、③が6割超であるのに対し、②や④では4割前後と、日常の家計の管理・運営や子育てについては限定的である。夫婦の意思決定が行われる場面は多様であるため、この結果だけでは判断できないが、家庭のことに関する意思決定では、①を除くと、妻が中心となって意思決定が行われている夫婦が多いことがうかがえる。

2.若い世代で多い「相談型」
また、これらの調査結果を妻の年代別にみると、①~④のいずれでも、夫婦が「ふたりで一緒に」意思決定を行う「相談型」は、おおむね若い世代で多い傾向にある(図表2)。若い世代には共働きが多く、結婚当初から各々が一定の額を出し合う形や、費目別に分担するスタイルをとるケースも少なくない。そのため、夫婦で相談しなくては意思決定が行えないケースが多いのかもしれない(注2)。
家計だけでなく、③親や親族とのつきあいや、④育児や子の教育に関しても、若い世代では「相談型」が多い傾向にある。若い世代には、家計の管理・運営や情報共有、親や親族との交流のための日程調整、育児に関する連絡やコミュニケーション等に、スマホなどの情報通信機器を活用する人が多い。妻にも収入があることや、夫婦の役割分担に対する価値観に加え、そのようなツールの広がりも、若い世代で「相談型」が多い傾向に関連しているのではないか(注3)。

3.よりよい意思決定に向けて~情報共有と振り返りの機会を~
夫婦の一方が中心となって意思決定を行う「担当型」では、意思決定を行う人に一定の裁量が任されている。ふたりで一緒に意思決定する「相談型」で必要な相談や合意形成を必要としないため、一方の自由な判断にもとづくスピーディな意思決定が行える。だが、夫婦どちらかに責任が偏ったり、決定を委ねた方が経過や結果に不安を感じるというデメリットもある。
一方「相談型」は、仕事や家庭生活をめぐる環境変化が大きいなかで、これらのことを相談し、互いに納得した意思決定を行えるというメリットがある。家計や家族に関する情報共有が進み、安心感や信頼につながるからだ。しかし、意思決定に時間や手間がかかることや、決定者の裁量の狭さに不自由さを感じる人もいるだろう。
個人差があり、同じテーマでもケースによって異なるため、どちらが望ましいかは一概にいえないが、「担当型」では必要に応じて情報を共有したり、担当する内容を調整することで、担当者がさらに裁量をもって決めやすくなるだろう。他方、「相談型」では、相談の仕方を見直したり、最後は相手に任せることで、かえって効率的に進むことがある。
当たり前のことではあるが、ケースに応じて方法を変えてもいいだろう。その場合でも、夫婦双方が納得できる決定を行えているのかを話し合い、家庭運営を振り返る機会をもつことが望ましい。それが、家族一人ひとりにとっての、よりよい意思決定につながっていくのではないだろうか。
【注釈】
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妻の立場にある女性の回答であるため、夫の評価は反映されていない。
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就労形態別のクロスデータからは、①車や耐久消費財など高価なものの購入、②家計管理・運営に関しては、妻が常勤雇用者の場合に「ふたりで一緒に」(相談型)と答えた割合が他の場合に比べ高い傾向を確認できる(図表省略)。妻の年齢による意思決定タイプの違いは、若い世代で常勤雇用者の割合が高いことや、妻の年収水準、ワークスタイルにともなう時間的な制約によるものである可能性もある。
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同じ調査によれば、「家庭で重要なことがあったときは、父親が最終的に決定すべきだ」という考え方に賛成する人の割合(「まったく賛成」「どちらかといえば賛成」の合計値。他の選択肢は「どちらかといえば反対」「まったく反対」)は、29歳以下では33.8%、30~39歳では41.1%、40~49歳と50~59歳では50%前後、60~69歳では58.6%、70歳以上では67.2%と年長世代ほど高い。ただし、賛成する人の割合は常用雇用者で低く、価値観の面でも年代以外の属性の影響が想定される。
北村 安樹子
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。