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2024.06.27
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「AIが質問を作る」時代の幕開け
~プロンプト自動生成がもたらすAI活用の新たな可能性~
柏村 祐
1.AI活用に重要と言われるプロンプト
AIの活用が様々な分野で進んでいる。特に自然言語処理の分野では、対話型AIや文章生成AIが注目を集めている。これらのAIを効果的に活用するには、適切なプロンプトを与えることが重要である。
プロンプトとは、AIへ質問や会話をする際の質問文・指示文のことである。自分が求めている精度の高い回答をAIから引き出すには、プロンプトを工夫する必要がある。明確な質問でなければ、AIは適切な回答を生成できない。
しかし、適切なプロンプトを作成することは、AIの利用者にとって必ずしも簡単ではない。プロンプトの質はAIの出力の質に直結するため、利用者はAIの特性を理解し、目的に合ったプロンプトを工夫する必要がある。そこで、もしAI自身がプロンプトを自動的に生成できれば、利用者の負担が大幅に軽減され、AIの活用がより一層進むことになるだろう。
本稿では、AIにプロンプトを作成させる実験を行い、AIが作るプロンプトの実態について詳しくみていくことにする。
2.AIが作るプロンプトの実態
今回、ビジネスシーンを想定して「会議の司会進行」「観光プランの立案」「文章の要約」の3つの事例により、AIにプロンプトを作成させる実験を行った。
まず、「会議の司会進行」に関するプロンプトをAIに作成してもらう。AIに対して「初めて会議の司会進行を任されました。質の高い会議にするためのプロンプトを思いつく限り作成してください」と指示したところ、AIは図表1のようなプロンプトを生成した。
AIが生成したプロンプトは、会議の目的設定から参加者の管理、時間配分、議論の促進まで、会議の司会進行に必要な多様な側面をカバーしている。特に、「会議の目的を明確にする方法」や「参加者全員が発言できるようにする工夫」など、具体的かつ実践的なプロンプトが含まれており、初めて司会を務める人にとって有用なガイドラインとなっている。これらのプロンプトをAIに指示することで、会議の質を高め、効果的な進行を実現できる具体的な案がAIから提案される可能性が高まると考えられる。

次に、「観光プランの立案」に関するプロンプトを作成させるために、AIに対して「北海道に観光することになりました。地元のガイドがおすすめするような最適なプランを立てるためのプロンプトを思いつく限り作成してください」と指示したところ、AIは図表2のようなプロンプトを生成した。
AIが生成した北海道観光に関するプロンプトは、季節や期間、予算、興味のある活動など、旅行計画に必要な多様な要素を網羅している。特筆すべきは、「北海道ならではの体験型アクティビティを、初心者向けと上級者向けに分けて3つずつ紹介してください。」や「北海道の郷土料理や名物グルメを5つ挙げ、それぞれのおすすめの店を教えてください。」といった、より深い体験を求めるプロンプトが含まれている点である。これらのプロンプトでAIに指示することで、観光客は単なる名所巡りにとどまらず、北海道の本質的な魅力を体験できるプランがAIから提案されると考えられる。

さらに、「文章の要約」に関するプロンプトを作成させるために、AIに対して「文章を要約してほしいです。重要な部分を分かりやすく要約するためのプロンプトを思いつく限り作成してください」と指示したところ、AIは図表3のようなプロンプトを生成した。
AIが生成した文章要約に関するプロンプトは、要約の核心を捉えるための重要な要素を網羅している。特に、「文章の主題や中心的な主張は何か」「重要な事実や統計データは何か」といったプロンプトは、文章の本質を把握するのに役立つ。また、「著者の意見や主張をどのように要約できるか」というプロンプトは、単なる事実の羅列ではなく、文章の意図や主張を適切に反映した要約を作成するのに有効である。これらのプロンプトをAIに指示することで、AIは文章の核心を捉えた、簡潔かつ的確な要約を生成すると期待される。

AIが作成したプロンプトは、会議の進行、観光プランの立案、文章の要約という具体的な場面について、様々な角度から質問を投げかけるものであった。プロンプトの内容は具体的で多岐にわたっており、効果的な会議運営、充実した観光体験、的確な文章要約を実現するための重要な観点を網羅しているといえる。
特に文章要約に関するプロンプトは、文章の主題や結論、キーポイント、全体構造、主な洞察など、要約に必要な要素を幅広くカバーしている。これらのプロンプトを使用することで、AIは文章の重要な部分を抽出し、分かりやすく要約することが期待できる。
テクノロジーリサーチャーの立場からみると、今回の実験結果は非常に興味深いものであった。AIがプロンプトを自動生成できるということは、利用者の負担を大幅に軽減し、AIの活用をより一層促進することにつながる。特に、AIに関する専門知識をもたないビジネスパーソンにとっては、質の高いプロンプトを簡単に作成できるようになり、AIをより身近なツールとして活用できるようになるであろう。
たとえば、長文の報告書や論文を要約する際に、上記のようなプロンプトを活用することで、AIは文章の本質を捉えた簡潔な要約を生成できる。これにより、情報の迅速な把握や意思決定の効率化を図ることができるだろう。
3.人間とAIの質問生成プロセスの比較と今後の可能性
AIがプロンプトを自動生成できるようになることは、AI活用におけるユーザーの負担を大幅に軽減し、AIをより身近で使いやすいツールにするための重要な進化だといえる。前節の実験結果から、AIが様々な状況に応じた多様なプロンプトを生成できることが示されたが、人間とAIの質問生成プロセスには図表4のような違いがある。
この比較表をみると、人間とAIの質問生成プロセスには大きな違いがあることがわかる。人間は経験や学習を通じて獲得した知識を柔軟に組み合わせ、状況に応じた質問を生成できる。一方、AIは大量のデータから学習したパターンをもとに質問を生成する。本質的な違いは、人間がもつ「文脈理解能力」と「創造性」にある。人間は状況や相手の意図を深く理解し、それに応じた質問を柔軟に考えることができる。また、過去の経験や知識を新しい方法で組み合わせ、独創的な質問を生み出す力をもつ。AIにもある程度の文脈理解や創造性はあるものの、人間のような深い理解や真に革新的な発想には現段階では限界がある。この違いが、質問を考えるプロセスにおける本質的な差異となっている。

また、AIによるプロンプト生成には、効率的な情報収集、質問の多様性といったメリットが想定される。特定のトピックに関する包括的な質問セットを短時間で生成することで効率的な情報収集を実現するとともに、人間が思いつかないような角度からの質問を生成し、新たな視点を提供する。
一方で、AIによるプロンプト生成には課題もある。倫理的配慮、文脈理解の限界、創造性の制約、個人化の難しさなどである。AIが生成するプロンプトの倫理性や適切性を確保する仕組みが必要であり、複雑な状況や暗黙の了解を完全に理解することも現状のAIには難しい。また、AIの創造性は学習データに基づくため、真に革新的な質問の生成には限界がある。個々のユーザーの背景や意図を完全に理解し、それに応じたプロンプトを生成することも容易ではない。
AIによるプロンプト生成技術は、今後さらなる発展が期待される。人間とAIの協働、コンテキスト理解の向上、パーソナライゼーション、マルチモーダル対応、メタ学習の導入といった方向性が考えられる。AIが生成したプロンプトを人間が評価・修正する仕組みを構築し、両者の強みを活かすことが重要である。より高度な自然言語処理技術により、AIの文脈理解能力を向上させることも必要である。ユーザーの履歴や好みを学習し、個々のニーズに合わせたプロンプトを生成するパーソナライゼーション技術の発展も期待される。テキストだけでなく、画像や音声などを含むマルチモーダルなプロンプト生成への対応も今後の課題である。プロンプト生成自体を学習するAIが開発されれば、より効果的なプロンプトの自動生成を目指すことができるだろう。
AIによるプロンプト生成は、人間の思考プロセスを補完し、より効果的な問題解決や創造的な発想を支援する可能性を秘めている。今後、人間とAIがそれぞれの強みを活かしながら協調することで、より高度で洗練されたプロンプト生成システムの実現が期待される。
柏村 祐
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。
- 柏村 祐
かしわむら たすく
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政策調査部 主席研究員
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション
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