ライフデザイン白書2024 ライフデザイン白書2024

迫る介護の「2025年問題」

~改正育児・介護休業法を受けて求められる企業の対応~

的場 康子

目次

1.「2025年問題」への対応が急務

高齢化が進行する中、介護が必要になる人口が増え、働きながら家族の介護を担う、いわゆるビジネスケアラーへの支援が大きな課題となっている。2025年には団塊の世代全員が75歳以上となり、介護需要が急増する可能性が高い。「2025年問題」として注目されているこの問題に対し、介護と仕事との両立を支える環境整備が急務となっている。

これまでの国の取組みにより、介護休業制度など様々な支援制度が整備され、介護を理由として離職する人、いわゆる介護離職者は20年ほど前と比べて減少傾向にある。しかし、過去10年間は介護離職者数が横ばいであり、毎年10万人前後の人が介護のために離職している(図表1)。介護離職者の性別割合は女性が多いものの、男性の割合も上昇傾向にある 。

図表1 家族の介護・看護を理由とする離職者数の推移
図表1 家族の介護・看護を理由とする離職者数の推移

2.働きながら介護をしている人は40~50代が中心

正規職員・従業員として働いている人の中で、介護をしている人の年齢分布をみると、2022年には男女ともに50代が半数を占め、40代を含めると、40~50代が7割を占めている(図表2)。40~50代といえば働き盛りであり、子どもの教育費用などがかかる年代でもある。介護による離職は家計への経済的負担が大きい。また、企業においても、管理職など責任のある業務を任されることの多いこの年代の離職は、業務遂行に支障をきたし、経営への影響も懸念される。

これからも介護をしながら働く人が増えることが予想されており、介護と仕事との両立支援の環境整備は、家計と企業双方にとって重要な課題となる 。

図表2 介護をしている正規職員・従業員の年齢別割合
図表2 介護をしている正規職員・従業員の年齢別割合

3.なぜ介護離職するのか

介護離職は、経済面だけでなく、先の見えない不安から精神的な負担にもつながるものである。できる限り離職せずに、自らの生活を維持しながら介護ができることが望ましい。にもかかわらず、介護のために離職を余儀なくされる人が後を絶たないのはなぜだろうか。

介護のために仕事を辞めた人が挙げる理由の中で最も多かったのは、「勤務先の両立支援制度の問題や介護休業等を取得しづらい雰囲気等があった【勤務先の問題】」である(図表3)。「介護保険サービスや障害福祉サービス等が利用できなかった、利用方法がわからなかった等があった【サービスの問題】」という介護保険等サービスの課題や、自分や家族・親族等の希望よりも、「勤務先の問題」が上回っている。

法により両立支援制度が整備され、希望すれば誰でも利用できるにもかかわらず、勤務先において制度を利用しにくいことが、介護と仕事の両立の壁になっているようだ 。

図表3 介護のために仕事を辞めた理由<複数回答>
図表3 介護のために仕事を辞めた理由<複数回答>

4.どのような取組みがあれば介護離職しなかったか

それでは勤務先の課題により介護離職した人は、どのような職場の取組みがあれば仕事を続けられたと考えているか。

最も多かった回答は、「仕事と介護の両立支援制度に関する個別の周知」であり、5割以上を占めている(図表4)。

介護をしながら働いている人の中には、介護休業制度などの両立支援制度を知らなかったり、勤務先に整備されていないと思い込んだりしている人もいる。

あるいは、両立支援制度を利用したくても、職場の人に迷惑をかけてしまうのではないかと思い、利用をためらう人もいる

さらに、自身のキャリアに悪影響を及ぼすのではないかとの不安から、自分が介護をしていることを会社や職場に知られたくないと感じる人もいる。

このように、介護と仕事の両立は職場内で顕在化しにくい場合がある。両立支援制度の利用が必要になった際に誰でもが利用しやすいように、職場内で両立支援制度に関する情報の周知徹底が、介護離職を防止ための重要な一歩である 。

図表4 どのような取組みが職場にあれば仕事を続けられたと思うか<複数回答>
図表4 どのような取組みが職場にあれば仕事を続けられたと思うか<複数回答>

5.改正育児・介護休業法による介護と仕事との両立支援策の強化]

このように、介護と仕事の両立においては情報提供が非常に重要であることを踏まえ、両立支援のために整備された制度を職場内で利用できず、離職せざるを得ない状況をなくすために、改正育児・介護休業法が2024年5月24日に成立した。この改正法では、職場内での両立支援制度の周知強化を行い、介護が必要になった際に誰でも両立支援制度を利用できる体制を整えることを目指している。

たとえば、介護に直面する前(40歳等)の早い段階から、介護休業制度や介護休暇制度などの両立支援制度等に関する情報提供や、研修・相談窓口の設置などを企業に義務づけた。

また、社員が家族の介護に直面した旨を申し出たときには、両立支援制度について個別に説明し、利用するかどうかの意向を本人に確認することを企業に義務づけた。

さらに、介護をしながら働いている間、テレワークを選択できるようにすることも努力義務としている。

こうして企業が両立支援制度に関する情報提供を徹底し、利用の確認を行うことで、制度を利用して働き続けることができるように後押しすることを目指している。この改正法は2025年4月以降、順次施行されるが、企業は可能な限り準備を進めておくことが望ましい。

6.介護離職を防ぐために

介護離職を防ぐには、まずは行政による介護サービスの提供体制の強化、介護保険制度や両立支援制度の周知などが前提となる。

また、私たちも自ら介護保険制度や職場の両立支援制度について理解を深めるとともに、必要な時に相談できるように親の居住地の地域包括支援センターを把握しておくことも必要である。

そのうえで、企業はテレワークなど柔軟な働き方を利用しやすくするとともに、制度の周知に努め、制度利用の心理的ハードルを下げ、必要とする人が気軽に相談や制度利用ができるような職場環境を整備することが重要である。

これからの人口減少社会においては、介護の経験もキャリア形成に活かせるものと捉え、前向きに支援することで、人材力強化につなげ、多くの人が自分の能力を活かして活躍できる社会の構築が求められている。

的場 康子


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

的場 康子

まとば やすこ

ライフデザイン研究部 主席研究員
専⾨分野: 子育て支援策、労働政策

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