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2024.05.31
ライフデザイン
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人生設計
人生設計の経済面に関する情報は高校生の関心事
~資金に関する知識・情報が、人生設計を考えやすくする~
北村 安樹子
- 目次
1.高校生の人生設計~職業は「なんとなく決めている」、結婚・子どもは意向ありが最多~
現代の高校生は、自身の職業や家族形成などの将来についてどのような意識をもっているのだろうか。
(公財)消費者教育支援センターと(公財)生命保険文化センターが全国の高校1・2年生を対象に行ったアンケート調査によると、将来就きたい職業について「はっきりと決めている」とした生徒は23.6%、「なんとなく決めている」を合わせると3分の2近くに及ぶ(図表1①)。卒業後の進路選択に向けて、希望する職業を考えたことのある生徒は多いものの、「考えてはいるが、まだ決めていない」も3割超を占める。
一方、結婚や親になることについては、「結婚したい」「親になりたい」とした人が各々6~7割弱と多数を占めるが、「よく分からない」も2~3割弱みられ、「結婚したくない」あるいは「親にはなりたくない」との回答も各々約1割を占める(図表1②・③)。

近年は、仕事の種類や働き方、キャリア形成の方法が多様化しており、同じ職業でも異なる働き方や、キャリア形成のプロセスがある。社会環境や経済状況が変化するなかで、希望する職業に直結する技術や専門性を身に付ける一方、希望する職業を柔軟に捉える視点をもつことが、職業選択の可能性を広げたりキャリア形成につながる場合もあるだろう。いずれにしても、まだ具体的ではないケースも含めほぼすべての生徒が自身の将来の職業について考えているというこの結果は、現代の高校生が自身の将来に真剣に向き合っていることを示している。
これに対して、結婚や親になることをめぐっては意向をもつ人(「結婚したい」「親になりたい」)の方が多いものの、「よく分からない」との回答も一定程度みられる。人々のライフコースや価値観の多様化等を背景に、家族形成を所与として考えたことのない生徒や、家族をもたない生き方を選択しようと考えている生徒もいると考えられる(注1)。
2.中長期的な生活設計~20歳より先を思い描けると答えた生徒は3割弱~
また、この調査では、既述した職業や家族形成の意向などに加え、将来の生活設計に関し、今からどのくらい先の生活まで思い描くことができるかについてもたずねている。その結果によると、20歳より先の将来を思い描いていると答えた生徒は全体の3割程度にとどまり、「全く想像できない」とした生徒も2割程度を占める(図表2)。半数超の生徒は「高校卒業後まで」を含め「20歳まで」と答えており、この時点で長い生涯の生活設計を具体的に思い描くのは、難しいことを示唆する結果となっている。

3.人生設計にかかわる資金情報への高い関心
このようななか、高校1年生を対象に金融経済や家計管理にかかわる教育についてたずねた別の調査では、「将来に向けて用意しておく必要があると考える費用」として「大学や専門学校への進学にかかる費用(学費・一人暮らしの費用など)」を挙げた割合が8割超と、最上位に挙げられている(図表3)。また、「自分の趣味や娯楽にかかる費用」「自分が将来購入する住宅や賃貸にかかる費用」とともに、「自分や家族が、病気やけが、災害などで収入・給与が不十分なときの生活費用」「自分や家族の医療費・介護にかかる費用」「定年退職後の自分や家族の生活費用」など、自身や家族の将来の生活にかかわる費用を挙げた生徒も各々4~6割程度を占めた。この傾向は義務教育を終える前の段階の中学3年生においてもおおむね共通しており(参考値)、中学3年生でも多くが生活設計にかかわる資金面の情報に関心をもっていることがわかる(注2)。

また、高校生では「資格取得や海外留学など自分のスキルアップのための費用」「自分が将来起業したり、個人で事業を始めたりするための費用」など、進学や職業選択にかかわる費用を挙げた生徒も各々4割弱、1割超を占める。卒業後の進路や20歳以降のキャリアデザインを具体的に考えている高校生では、これらのテーマへの関心も高いようだ。
さらに、同調査では「将来に向けて知っておきたいこと」についてもたずねている。結果をみると、最も多く挙げられたのは「18歳成人にともなう契約や支払い(ローン・クレジット)について」であり、「将来のライフプラン(人生設計)や自分自身が働いて得たお金の管理方法について」も僅差で上位に挙げられている(図表4)。また、高校生では「家計の資産形成や経済的なリスクへの備えについて」を挙げた生徒も4割超を占める。先にみたように、20歳より先の未来を具体的に思い描いている生徒が少ないなかで、自身の進学や資格・技術の習得、現在・将来の生活にかかわる様々な費用を計画的に用意していくことに加え、そのための多様な手段に関する知識・情報に関心をもつ生徒が多くなっている。
学校教育の場に限らず、このような将来の生活にかかわる資金面の知識・情報について学ぶ機会があることは、若者が将来のライフプランを主体的に考え(注3)、経済的に持続可能な形で生活を営んでいく上で役立つだろう。

【注釈】
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この調査では、アンケート調査に加え、教員へのヒアリング調査も行われている。授業内容に関しては「家族についてふれる際は、家庭環境が複雑な生徒もいるので配慮が必要」「少ない指導時間でどれを重点的に伝えていったらよいか悩む」(筆者抜粋)など、日ごろの生徒の様子や現場を知る教員ならではの率直なコメントを確認することができる。
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「自分の結婚にかかる費用」を挙げた人は3割弱で他の項目に比べ少ない。結婚を考えていない生徒もいることや、誰もが必要とする費用ではないことによると思われる一方、将来の住居費や健康面を含む不測の事態への備え、老後の生活資金などの回答には、現在の家族との生活だけでなく、将来家族をもった場合の生活を想定した回答も含まれるのではないか。
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人生の自己決定はウェルビーイングに関連し、「ウェルビーイングは自ら積極的に実現しようという意識が大事で、受け身の姿勢では実現できない」(第一生命経済研究所、2023)とされる。不確実な状況のなかで個々人がキャリアや人生設計をめぐる自己決定を主体的に行っていくには、将来の生活にかかわる経済面の知識・情報が必要になることがあると筆者は考える。
【参考文献】
- 第一生命経済研究所『ウェルビーイングを実現するライフデザイン-データ+事例が導く最強の幸せ戦略-ライフデザイン白書2024』東洋経済新報社、2023年11月
北村 安樹子
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。