暮らしの視点(30) :シニア世代の医療・健康情報の利用実態

~スマホ・ネット利用の広がりの中で~

北村 安樹子

目次

1.7割超は情報を集めることはできる

65歳以上のシニア世代を対象に昨年行われた調査によると、医療・健康に関する情報を利用する行動のうち、「新聞、本、雑誌、テレビ、インターネットなどから、情報を集めることができる」と答えた人は7割を超えた(図表1)。情報収集の目的やライフスタイルなどにもよるが、これらの資料やメディア等を通じて医療・健康に関する情報を集めることについては、7割を超える人が自分でできると感じていることになる。

一方、「たくさんの情報の中から、自分の求める情報を調べることができる」「情報を理解し、人に伝えることができる」「情報をもとに健康改善のための計画や行動を決めることができる」「情報がどの程度信頼できるかを判断できる」とした人は、各々半数弱から4割前後にとどまった。

これらの結果から、シニア世代には医療・健康に関する情報を集めることはできても、それらを活用することには自信がないと感じている人が少なくないことがうかがえる。

図表1
図表1

2.大半が健康を心がけているが、60代以降に意識した人が多い

一般に、シニア世代は、医療・健康に関する情報への関心が高く、この調査でも回答者の9割超が健康について「心がけている」としている(図表2)。実際、健康によいといわれるライフスタイルに関心を寄せるシニア世代は多い。

しかしながら、現在のシニア世代には、健康に関する心がけを、若い頃から意識したり、行い始めていた人はそれほど多くはない。この調査でも、40代以前、あるいは50代から心がけていたという人は各々2割前後にとどまり、60代以降に心がけた人の方が多い。年齢とともに健康面の変化や体力の低下を感じる機会が増え、自身や家族の高齢期の過ごし方を意識するなかで、60代を迎えてから健康を心がけるようになった人も多いのだろう。

ただ、コロナ禍は、若い世代を含め人々の健康志向をさらに強めたとされる。これからのシニア世代には、もう少し早い時期から健康を心がける人が増えるかもしれない。

図表2
図表2

3.約半数が、情報収集にインターネットを利用

シニア世代にもスマートフォンなどの情報機器やインターネット利用が急速に広がるなか、この調査でもインターネットで医療や健康に関する情報を調べることがあるか、また、どのような情報を得ているかをたずねている。結果をみると、シニア世代では「インターネットで調べることはない」と答えた人が4割弱を占めた一方、調べることがあると答えた人が約半数を占めてこれを上回った(図表3)。

得ている情報として最も多く挙げられたのは「病気について(病名や症状、処置方法等)」(39.0%)で、「病院などの医療機関」(30.1%)、「薬の効果や副作用」(25.1%)、「自分でできる運動(体操ストレッチ等)やマッサージの方法」(19.7%)などがこれに続いている。このような行動には、病気・症状・処置への不安や関心といった動機で行われるものに加え、自身や家族の健康づくりや介護・看護などに向き合うなかで、よりよい生活や自立した生活を続けたいとの思いから行われるものも含まれるだろう。一方、「インターネットで調べることはない」とした人のなかには、調べるためのスキルや環境をもたない人とともに、利用する必要がないと感じている人や、利用に抵抗感を感じている人なども含まれる可能性がある。

図表3
図表3

4.情報収集・活用スキルの重要性と加齢にともなう変化

シニア世代にとって、多様な手段で医療や健康に関する様々な情報を自ら調べられることは、自身や家族の自立した生活の持続性を高めたり、健康的な生活を送る助けになるだろう。その意味でも、多様な情報の中から正しい情報を得る力を身につけたり、他の情報と合わせて総合的に判断すること、必要に応じて自身のライフスタイルに取り入れていくことなどが、より一層重要になる。

一方、シニア世代が、医療・健康に関する情報や、健康によいライフスタイルに関心を寄せる背景には、自立した生活ができなくなることや家族に心配をかけることへの不安がある。また、自分や家族の医療・健康にかかわる情報のなかには、家族を含め他者には知られたくないこと、知らせたくないことが含まれるケースもあると考えられる。

そして、多様な情報手段をもち、それらを活用して自立した生活を送っている人であっても、高齢期には自身や家族の心身機能が衰えたり、家族を失うなどライフスタイルの大きな変化を経験することがある。行動範囲や生活環境、コミュニケーションスキルや対人関係などが変化して、それまで行っていた行動をうまく行えなくなることもあるだろう。

そのような事態を考えれば、正しい知識をもつことや情報の利用スキルを高めることに加え、他者の支援や外部サポートの利用をどう考えるかなど、自身や家族が将来の治療・介護で大切にしたい価値観について考えておくことも重要になる。情報収集・活用の方法を見直してみることや、家族を含め信頼する他者の支援を得ながら行動につなげていくことも、医療・健康に関する情報利用のよりよい形といえるのではないだろうか。


北村 安樹子


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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