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2023.03.24
ライフデザイン
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「マスク生活」の遺産(レガシー)としたいもの
~皆がコミュニケーションしやすい社会に向けて~
水野 映子
1.「マスクなし生活」が3年ぶりに到来
去る3月13日から、政府の方針により「マスクの着用は、個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本」となった。それまでマスク着用は「屋外では原則不要、屋内では原則着用」とされていたが、この日からは基本的に個人の判断に委ねられたことになる。ルール変更から10日余りが過ぎた現段階ではマスクを着用している人が多いように見受けられるが、いずれは新型コロナウイルス感染拡大前のように、ほとんどの人がマスクを着用しない生活に戻るだろう。
2020年に感染拡大が始まってから3年余りの間、マスクの着用は対面でのコミュニケーションにも大きな影響を与えた。本稿ではまず、コロナ禍でのマスク着用によるコミュニケーションの状況を振り返る。それをふまえ、障害の有無や年齢、国籍などにかかわらず誰もがコミュニケーションしやすい社会を目指すという観点から、マスクを着用しない生活になった後に残したいことや、取り戻したいことについて考える。
2.「マスク生活」のコミュニケーションを振り返る
①マスク着用による不便さ
まずは、マスク着用の実態を振り返ってみよう。当研究所は、感染拡大初期から昨年(2022年)9月まで5回にわたり、感染拡大防止行動の実践度について調査を実施した。図表1の通り、いわゆる三密(密集・密閉・密接)の回避や外出自粛の実践度は、昨年9月の時点で7割台に減っていた。一方、外出時のマスク着用の実践度は、一貫して9割前後で推移しており、ほとんど減らなかった。マスク着用のルールがいかに守られていたかがわかる。

そのような中、マスクを着用したままでのコミュニケーションにはさまざまな問題が生じていた。前述の調査においても、「マスクをしている人の声が聞こえにくい」「マスクをしている自分の声が相手に伝わりにくい」「マスクで表情や口元が隠れるために会話しにくい」と感じることがあると答えた人の割合は、2021年ではそれぞれ75.1%・74.9%・65.4%にのぼり、前年より増えていた(図表2)。

このように、一般の生活者ですらマスク着用による不便さを感じたのだから、感染拡大前からコミュニケーションに支障を感じていた人々はさらに不便になった。たとえば聴覚に障害のある人は、会話の相手がマスクを着用していると、口の動きや顔全体の表情をコミュニケーションの手がかりにすることができない。また、聴力が多少あっても、声がこもってより聞きとりにくくなる。そうした問題がコロナ禍の中で指摘されていた(注1)。
②生み出された工夫
一方、コミュニケーションの不便さを解消するための工夫もおこなわれるようになった。前述の調査(図表2)で、一般生活者が「声が聞こえにくい状況の時、ジェスチャーや指さし、うなずきなどの動作を積極的におこなうこと」や、マスクをして話している時に「発音に気を配ること」「表情に気を配ること」と答えた割合は、2021年ではそれぞれ半数前後を占めており、前年より増えていた。
また、生活者の側だけでなく、サービスを提供する側も工夫するようになった。たとえば一部のコンビニなどは、レジ袋や箸、弁当のレンジでの温めの要・不要などをイラストで描いたシートをレジに用意し、来店客が店員と音声でやり取りをしなくても指さしで意思を伝えられるようにした。
3.「マスク生活」後に残したい・取り戻したいもの
これから先、マスクを着用しない人が増えるにつれ、前述のようなコミュニケーションの不便さは減ると予想される。だが、障害・病気や加齢により聞くことや話すことに不自由がある人、日本語が不得意な外国人などの中には、会話の相手や自分がマスクを着用していなくても、コミュニケーションに不便さを感じる人がいる。。
そういう人々を取り残さないためにも、この3年余りで皆が多かれ少なかれ感じたコミュニケーションの不便さや、それを解消するための工夫は忘れないでほしい。たとえば、聴覚・言語に障害のある人や外国人に接する際などには、言葉だけでなくジェスチャーやイラストを用いる、はっきり発音するなどの工夫を引き続きおこなう必要がある。
一方、マスクをしないでコミュニケーションするようになったら、取り戻してほしいものもある。たとえば、今までマスクで隠れていた口の動きや、顔全体の表情にも意識を配ることはその一つだ。また、人との距離を保つことが叫ばれ、話しかけることすら遠慮がちになる中では、街中で困っている人への声かけや手助けも少なくなっていたが(注2)、これからはためらうことなくおこなってほしい。
長いマスク生活で得られた経験が、今後のコミュニケーションに良い形で遺産(レガシー)として受け継がれ、進化していくことを望む。
【注釈】
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水野映子「「誰もがコミュニケーションしやすいウィズ/アフターコロナに ~『新しい生活様式』での対面コミュニケーションの問題と工夫~」」2021年1月
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水野映子「「ソーシャルディスタンスは心の距離も広げたのか ~コロナ禍でより助け合わなくなった日本人~」」2021年11月
水野 映子
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。