SDGs達成に役立つマッチングギフトのすすめ

髙宮 咲妃

要旨
  • 昨今の新型コロナウイルスに関わる医療支援や災害緊急支援等のオンライン寄付サイトで「あなたの寄付が2倍になる」と謳っているものを目にする機会が増えたが、この仕組みは、一般的に「マッチングギフト」と呼ばれる。

  • マッチングギフトとは、企業・団体の構成員である従業員が非営利団体等に金銭的な寄付を行った場合、所属する企業も社員の寄付に合わせて(マッチングして)金銭的寄付を行い、社員の寄付を増強・支援する仕組みのことをいう。

  • 寄付大国であるアメリカでは社会貢献の有力なツールとして一般的なものとなっている一方、日本の大手企業でこの制度を導入している企業は2017年時点で全体の21.2%にとどまっている。

  • 日本企業が行うマッチングギフトの事例では、従業員が給与天引きなどの方法で継続的に行う寄付に対して行い、公募などによりいくつかの団体を選定して寄付する例が多い。

  • 近年は企業や団体の構成員にとどまらず、広く一般から寄付を募るクラウドファンディングやオンライン寄付サイトなどでも企業がマッチングギフトを行う新しい動きも出てきている。

  • 2006年にアメリカで行われた実証実験では、マッチングギフトを行わなかったグループに比べてマッチングギフトを提案されたグループの方が、個人が寄付をする可能性が22%増加しただけでなく、1回の勧誘あたりの寄付額が19%も増えることがわかった。

  • マッチングギフトの導入により、企業の単独寄付では巻き込み切れなかった人や資金を動かすことができ、自社の進めるSDGsへの取組みをより効果的に進めることができるだろう。

目次

1.はじめに

昨今の新型コロナウイルスに関わる医療支援や災害緊急支援等のオンライン寄付サイトで「あなたの寄付が2倍になる」と謳っているものを目にする機会が増えた。この仕組みは、一般的に「マッチングギフト」と呼ばれ、これを活用することで寄付者は寄付先に高額の寄付を効率的に届けることができる。 近年は、一般から広く寄付を募るクラウドファンディングやオンライン寄付サイト等でもマッチングギフトが取り入れられているが、従来、マッチングギフトは企業がCSR活動の一環として、従業員の社会貢献活動を促進するために採用していた仕組みである。詳しくは3章で説明するが、広く一般から寄付を募るクラウドファンディングに協賛企業がマッチングギフトを行う新しい動きも出てきている。

2.マッチングギフトとは

従来型のマッチングギフトとは、企業・団体の構成員である従業員が非営利団体等に金銭的な寄付を行った場合、所属する企業も社員の寄付に合わせて(マッチングして)金銭的寄付を行い、社員の寄付を増強・支援する仕組みのことをいう。企業の上乗せ寄付ともいわれる。企業・団体が上乗せする額は多くの場合、従業員の寄付額と同額であるため、寄付金額は倍になる。

この制度は1960年代にアメリカのゼネラル・エレクトリック社が自社の従業員に対し、自らが学んだ教育機関(母校)に対する寄付を奨励したことに始まると言われている。寄付社会である現在のアメリカでは、フォーチュン500(全米の総収入上位500企業)のうち65%はマッチングギフトプログラムを提供している(Double the Donation(2021))。マッチングギフトによる企業の寄付額は年間20億ドル~30億ドル(約2,200~3,300億円)と推計されており(Double the Donation(2021))、社会貢献の有力なツールとして一般的なものとなっている。一方、経団連会員企業及び、1%クラブ法人会員企業(注1)を対象にしたアンケート調査によると、この制度を導入している企業の割合は、2003年度以降、徐々に増加し、一時23.3%まで上昇した。これは2003年6月に主要国首脳会議(エビアン・サミット)のG8宣言においてCSRが項目として取り上げられ、企業内にCSR推進の専門部署が設置される等、企業の社会貢献活動が活発化したことによるものと考えられる。しかしその後は停滞し、2017年時点では全体の21.2%に留まっている(図表1)。

図表1
図表1

実際に企業がマッチングギフトを行っている事例をみると、日本では、従業員が給与天引き等の定期的な寄付に対して行い、公募によりいくつかの団体を選定して寄付する例が多い。その他、災害時の緊急募金やチャリティイベント等で従業員寄付にまとめて上乗せする事例や、寄付金付きの社員食堂のメニューで集まった寄付に上乗せする事例もみられた(図表2)。

図表2
図表2

企業以外にも、地方自治体が主体となってマッチングギフトに取り組む例がある。例えば、宮崎県宮崎市では2001年にマッチングギフト方式を取り入れた事業を実施している。市が拠出した1千万円をベースに、市民の寄付金(今まで市に寄付された各種寄付金の残金)244万円と、市がマッチングギフトとして同額の244万円を上乗せした合計1,488万円を原資に2001年4月1日に「市民活動支援基金」を新設した。

その後、毎年、新たな市民の寄付金がある度に、同額を市が負担し、基金に積み立てている(図表3)。同基金を財源に、市民活動団体が企画・運営する事業に対し補助金を交付する。基金が設立された2001年から2015年までの15年間で累計318の事業に補助を行っている。前年の市民による寄付金額に連動して当該年度の補助金総額が変動することを通じて、市民の寄付に対する意識が高まることを期待して、この方式を採用したという。

図表3
図表3

3.進化するマッチングギフト

冒頭でも触れたとおり、広く一般から寄付を募るクラウドファンディングに協賛企業がマッチングギフトを行う新しい動きも出てきている。

企業のSDGs目標、支援テーマに該当するNPOのプロジェクトに対し、協賛企業がクラウドファンディングを通じて、その調達目標金額の一定割合(50%など)を上限にマッチングギフトを行う仕組みを提供している企業がある。(図表4)。例えば、調達目標額の50%を上限とするマッチングなら、プロジェクト実施者は一般の支援者から本来の調達目標額の50%を集めれば、企業から残り50%分の金額を受け取ることができる。つまり、500万円の活動資金が必要な場合、通常のプロジェクトでは500万円の調達が必要だが、マッチングギフト型では実質250万円でプロジェクトを達成させることができる。上記の仕組みを活用し、現在、電力会社や住宅メーカーグループはSDGsの目標11.「住み続けられるまちづくりを」を目指したプロジェクトを、製薬会社はSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」を目指したプロジェクトの支援をしている。

図表4
図表4

地方自治体でも同様の例が見られる。佐賀県では、クラウドファンディング型ふるさと納税(注2)を活用し、マッチングギフト方式での官民協働での新型コロナ対策基金、「佐賀支え愛基金(新型コロナウイルス感染症対策活動支援基金)」を設立した。クラウドファンディング型ふるさと納税とは、ふるさと納税の中でも「文化遺産を修繕したい」等、寄付の使い道を明確にして課題解決プロジェクトを作り、寄付金を募集しているものを指す。同基金では、プロジェクトで集めた寄付金に佐賀県と公益財団法人 佐賀未来創造基金がマッチングギフトで上乗せを行い、それを原資に基金を設立したという。この基金ではSDGsの目標3.「すべての人に健康と福祉を」の達成を目指し、新型コロナウイルス困窮者への支援を行っている。

その他、オンライン寄付サイトや寄付金充当型の保険などでも各企業がマッチングギフトを行っており、このような動きが広がればクラウドファンディングやオンライン寄付サイトを通じて一般個人もマッチングギフトに触れる機会が増加するだろう。こうした形で社外でマッチンギフトを活用した従業員は、勤務先の制度にも気づきやすく、利用への抵抗感が減少するなどのかたちで、企業のマッチングギフト制度の利用が増加することが期待される。

4.おわりに

アメリカで行われた実証実験で、非営利団体への寄付と同額を寄付する(マッチングギフト)という申し出が、個人が寄付をする可能性と金額を変えるかどうかを調査したものがある(Karlan and List 2006)。 とある非営利団体と協力し、50,083 人を対象としてダイレクトメールで寄付の勧誘を行った。その際、対象を以下の4グループに分け、調査し、比較した。

①マッチングギフトを行わない
②1ドルに対して1ドルのマッチングギフトを行う(寄付先は合計 2ドルを受け取る)
③1ドルに対して2ドルのマッチングギフトを行う(寄付先は合計3ドルを受け取る)
④1ドルに対して3ドルのマッチングギフトを行う(寄付先は合計4ドルを受け取る)

結果、マッチングギフトを行わなかったグループ(①)に比べてマッチングギフトを提案されたグループ(②~④)の方が、個人が寄付をする可能性が22%増加しただけでなく、1回の勧誘あたりの寄付額が19%も増加することがわかった。また、②~④のマッチングギフトの比率の大きさによる変化は認められず(図表5)、ダイレクトメールでマッチングギフトの提案を告知するだけでも一人あたりの寄付額が増えることが示唆された。

図表 5
図表 5

企業寄付や募金箱の設置などを行っている企業は多いが、まだ従業員の寄付に上乗せを行うマッチングギフトは浸透していない。従業員に対して「自社は○○へ寄付しました」「○○への寄付を募っています」という一方的な声かけをするのではなく、「(会社と)一緒に○○へ寄付を行いませんか」等といった、従業員と同じ目線に立って声かけを行えることがマッチングギフトのメリットでもある。マッチングギフトの導入により、企業の単独寄付では巻き込み切れなかった人や資金を動かすことができ、自社の進めるSDGsへの取組みをより効果的に進めることができるだろう。

以上

【注釈】

1)経団連1%クラブは1990年に企業および企業人による社会貢献活動の普及・啓発のため、任意団体として設立され、2019年に経団連企業行動・CSR委員会(現SDGs委員会)の下部組織となっている。1%クラブの会員は、経常利益や可処分所得の1%相当額以上を自主的に社会貢献活動に支出しようと努める企業や個人であり、NPO等とネットワークを築きつつ、企業の実務担当者同士の知見の共有、共通課題を検討している。

2)クラウドファンディング型ふるさと納税であっても、プロジェクトによっては、支援に対する御礼として返礼品が貰えるプロジェクトもある。

【参考文献】

  • 日本ファンドレイジング協会「寄付白書2021」(2021)
  • 公益財団法人 えひめ地域政策研究センター「ECPR Vol.22」(2007)
  • 特定非営利活動法人 ジャパンウェイ「個人・企業の社会貢献とマッチングギフト」(2000)
  • ”American Economic Review” Karlan and List (2006)
  • 一般財団法人 地域活性化センター「地域づくり 2020年12月号」(2020)

髙宮 咲妃

髙宮 咲妃

たかみや さき

総合調査部 マクロ環境調査G 研究員
専⾨分野: QOL・ハピネス戦略

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