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2021.10.04
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コロナ禍は男性の家族へのサポート意識を強めたのか
~「第11回ライフデザインに関する調査」から~
北村 安樹子
1.コロナ禍と家事・子育てをすることへの意向
新型コロナウイルスの感染拡大以降求められてきた外出の自粛要請等により、同居する家族がいる家庭では、以前に比べ家族が自宅内で過ごす時間が増えた家庭も多かったと思われる。子どもの散歩や外遊びの時間帯や場所、自宅室内での過ごし方等を工夫した家庭も多かっただろう。
就学前の幼い子どもがいる時期は、親にとって、家事や子育てに関わる直接的なサポートとともに、子育てに関する様々な情報を得たり、日々の生活の支えとなる精神面のサポートが重要になる時期だと考えられる。外出の自粛等が求められた感染拡大以降の生活は、親世代の家事・子育ての意向やこのようなサポート意識にどのような形で影響したのだろうか。
当研究所が2021年1~2月に行った「第11回ライフデザインに関する調査」では、子どもと同居する人に対し、家事・子育てをすることや同居家族への精神的サポートに関する今後の意向をたずねている。「家事や子育てをすること」への意向について配偶者のいる人の回答結果をみると、男女とも最も多かった回答は「現状でよい」であるが、男性の3割弱、女性の約1割は「増やしたい・計」となっている(図表1)。性・ライフステージ別にみた場合、就学前の子どもがいる男性では「増やしたい・計」が4割強を占め、同じ時期の子どもがいる女性に比べ30ポイント近く高い。就学前の子どもがいる男性には、家事・子育てへの意向をもつ人が同じ時期の女性や他のライフステージにある男性に比べ多くなっている。
2.コロナ禍と同居家族への精神面へのサポート意識
一方、「同居する家族を精神面でサポートすること」への意向をみると、この設問でも最も多かった回答は「現状でよい」であり、全体の7割強を占めた(図表2)。ただし、男性では「増やしたい・計」が3割弱を占め、女性の割合を上回っている。
性・ライフステージ別にみた場合、就学前の子どもがいる男性では「増やしたい・計」が4割近くを占め、同じ時期の子どもがいる女性に比べ大幅に高い。就学前の子どもがいる男性には、家事・子育てへの意向に加え、同居家族への精神面でのサポート意識をもつ人も同じ時期の女性や他のライフステージにある男性に比べ多くなっている。
3.コロナ下という子育て環境
今回の調査においてこの時期の男性に家事や子育てをすることや家族への精神面でのサポート意識をもつ人が多い背景には、外出の自粛等によって、同居する家族の生活をあらためて目にする機会が増えたことに加え、気軽な外出や家族以外の他者との対面機会が、様々な形で制約を受けたコロナ下という子育て環境の影響も大きかったのではないだろうか。地域差はあるものの、コロナ下の生活では、自分の子どもだけでなく、周囲の子どもやその親等への感染に気をつける必要もあり、自由な外出がままならなかった時期も多かった。また、祖父母等の親族に助けを求めることや、子ども関連の施設利用等も控えられて、家族が自宅で家族だけで過ごす時間が増えたケースも多かったと考えられる。子ども同士が同じ空間で過ごす場合に、親が互いの感染に気を使う経験をしたり、子どもも幼い時期からそうした感覚を身につけることが必要になった(注1)。
このような日々に家族で向き合ったことが、男性の家事や子育てへの意向とともに、男女の双方が配偶者や子どもをはじめ、同居する家族への精神的なサポートの意向を強めることにつながった面もあったのではないだろうか。コロナ下という新たな時代の環境下での子育ての経験を通じて、家事・子育てや家族のコミュニケーションの重要性について考える気づきを得た人もいたと思われる。
【注釈】
1) 当研究所が昨年5月に行った調査では、回答した20~69歳の男女1,000名のうち「他者を自宅に招くことを自粛している」「家族以外の人に会うのを控えている」と答えた人(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」の合計)は8割を超えていた。この結果については下記のリリース及びレポートを参照。
「第2回 新型コロナウイルスによる生活と意識の変化に関する調査(つながり編)」
北村安樹子「「孫疲れ」のない夏 ~帰省・滞在の中止・減少で気づくこと~」
なお、当研究所のホームページには、このような影響を含めて、新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした様々な変化に注目したレポート・ニュースリリースの一覧ページ「新型コロナ(生活)」がある。
北村 安樹子
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。