障害者福祉 相談支援の充実へ

~well-beingの実現に向けて (1)障害者相談支援体制~

後藤 博

目次

1.はじめに

我が国の障害保健福祉施策は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(以下「障害者総合支援法」)と児童福祉法に基づく「障害福祉計画」と「障害児福祉計画」によって、総合的かつ計画的に整備されている。

それらの計画の指針となる「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」は、障害保健福祉施策の基本的事項や成果目標等を定めている。この指針は2020年5月に告示(令和2年厚生労働省告示第213号)され、これに沿って各都道府県・市町村は、「障害福祉計画」及び「障害児福祉計画」を策定している。 今期の計画期間は2021年度から2023年度であり、「障害福祉計画」は第6期に、「障害児福祉計画」は第2期に入ったところだ。

こうした施策の進展状況を踏まえつつ、2021年3月から社会保障審議会障害者部会では、「障害者総合支援法」の附則で規定された施行後3年を目途とする見直し規定によって、その検討が進んでいる。

その中で、公共あるいは指定された民間の機関や相談員への相談を含め、障害者に対する相談支援のあり方についても検討が重ねられている。本稿では、この動向を踏まえたうえで相談支援体制に注目し、利用者側の視点から地域における相談支援の方向性と展望について考察する。

2.障害総合支援法等の見直しにおいて「相談支援」に注目する理由

障害福祉分野では、2021年4月からサービスの質の向上等のため報酬改定が行われ、支援の充実に向けた新たな計画期間に入った。障害者福祉を推進するうえでは、住居や移動、育児・教育など様々な課題があるが、本稿では相談支援に注目する。

障害者にとって外部の誰かに相談することは、人とのつながりをもたらす社会参加という側面ももつため、well-being(幸せ)を実現する重要な行動の1つだと思われる。そして誰かに相談ができる環境は、安心して暮らすことができる生活の基盤になるだろう。

それに加え、現行の障害福祉サービスは、利用者の意思・判断によって選択することが前提になっており、適切なサービス選択を支援するという観点でも、相談支援の環境整備は重要になると思われる。

少子高齢化や医療技術の進歩などを背景に、障害保健福祉分野では、地域における障害者への生活支援が検討課題の一つになっている。

障害者は増加傾向にあるが(図表1)、加えてライフスタイルの多様化に伴う支援ニーズの増大もあって、障害福祉サービスの利用者は増えている(図表2)。

図表
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これに対応すべく、サービスの利用援助や専門機関の紹介、カウンセリングなどについて身近な相談機関による支援体制を整備することは、障害者の暮らしの安心の確保、より良い生活の持続・実現といった観点から重要である。

また、誰しもが障害を抱える可能性があるという観点からも、地域住民共通の生活基盤として、相談支援体制の整備は大切である。

3.障害福祉サービス・相談支援の課題と概況

障害者に対する相談支援については、地域共生社会の実現に向けた社会参加支援や地域づくりといった観点も踏まえ、以下の3点が検討の遡上にあげられている。

すなわち、①相談支援の制度のあり方、②自立生活への移行や継続など多様なニーズに対する相談対応、③「自立支援協議会」の活性化を通じた「まちづくり」の推進である。

まず、①の相談支援の制度のあり方については、現行制度が細分化され複雑でわかりにくく、適切な支援に障害者がアクセスしにくいことが検討課題の一つとなっている。

障害者への福祉サービスは図表3のような体系になっており、相談支援は障害者総合支援法、児童福祉法に基づいて提供される給付と市町村等による地域生活支援事業として位置づけられている。相談支援体制がわかりにくい理由は、全国共通の個別給付による相談支援と市町村の支援事業による相談支援があり、相談内容によって相談窓口が異なることにある。例えば、市町村の支援事業による相談支援においても病院施設等から居住地域への移行案件は地域相談、支援サービスを利用するためには計画相談というように、内容によって窓口が分かれている。1つの相談拠点で全ての相談に対応できるとは限らない。

適切な相談支援にアクセスしにくいのは、利用者側の理解不足の問題もあるだろうが、サービス拠点の配置など、利用環境にも問題がある。例えば山間部など身近に適切な相談拠点がない場合は、障害者・家族が継続的な支援を受けにくい環境に置かれてしまう。そのような場合、適切な助言を受けられないことなどから独自の判断で支援を中断してしまうこと、孤立化も検討課題の一つとなっている。

図表
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検討課題の②、多様なニーズに対する相談対応については、基幹相談支援センター機能を中心にした相談対応力の向上が課題となっている。社会情勢や環境の変化もあって、これまでの体制では対応しきれない案件が生じている。例えば障害者の家族が障害を抱えるようになったり、本人が重度化することが考えられる。まさに8050問題(注1)のように複合化した生活問題が深刻化することが、社会的な課題として認識されるようになった。当事者が抱える生活の問題全体に向き合うには、各問題に関する専門性と知識、調整力が求められる。こうした問題に対して十分な相談支援が得られるよう、地域全体として対応力の向上を図るには、相談支援従事者のレベルアップは欠かせない。そのためにも、相談支援の中核となる基幹相談支援センターの機能強化が求められる。基幹相談支援センターは、地域における相談支援の中核的な役割を担う。それは、障害者等に関する総合的・専門的な相談支援の実施、相談支援体制の強化の取組み、権利擁護・虐待防止などである。

障害者の増加と相談ニーズの多様化に対応すべく、基幹相談支援センターを設置している市町村は増加しつつある。しかし2020年4月時点の調査で全市町村を見ると、設置している市町村の割合は、は半数以下(45%)にとどまっている(図表4)。どのくらいの住民をカバーできるのか、必要な支援を確保できるのかといったことが課題となっているといえる。

図表
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検討課題の③、「自立支援協議会」の機能強化による「まちづくり」の推進については、自立支援協議会の活性化が課題とされる。2012年4月に法定化された自立支援協議会は、地域における障害者等への支援体制の整備を図るため、関係者間で情報や課題を共有し協議する機関であり、市町村と都道府県に設置されている(図表5)。

図表
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さらに、2013年に施行された障害者総合支援法により、自立支援協議会の名称は地域の実情に応じて定められるようになり、現在では全ての自治体で設置されている。

しかしながら自立支援協議会によっては、設置が目的化し形骸化しているとの見方・指摘もあり、機能発揮が決して十分とは言えない状況にある。専門機関や人材も限られた地域では、より良い相談体制構築に向けた協議・協働は不可欠だ。相談体制の強化を考える場合、不足する対応力を地域全体でどのように補うのか、その工夫と対応が期待されている。

4.障害者等への相談支援見直しの期待・方向性

利用者側の立場から望ましいと思われる方向性として、以下の3点が考えられる。それは、①相談支援機能の強化、②不測の事態を想定した相談体制の検討、③「自立支援協議会」の機能強化による「まちづくり」の推進である。

まず、①相談支援機能の強化については、相談支援の人材育成と対応体制の整備をどう行うかである。人材育成については、多様で専門性の高い相談にも対応できるように、相応の能力を持つ人材を現場に配置する必要がある。そのためには、人材育成の強化が重要となる。対策として、相談支援の中核である基幹相談支援センターを軸にした相談員等の教育推進や啓発が求められる。必要知識の習得、実践に即した体系的研修など、育成体系・研修カリキュラムの確立と普及が待たれる。

さらに、相談の包括的対応の推進である。相談は最初の窓口で包括的に受けられることが、利用者にとって望ましい。その後、必要に応じ専門性の高い相談窓口に誘導する体制の整備が望まれる。例えば、デパートの売り場案内のような体制である。総合窓口があって、そこから専門店に案内される。専門店でも、照会があれば一定の対応ができるよう整備されている。相談案件によっては、利用者が解決に向けての軌道に乗るまでフォローする体制をどう構築するのかも検討すべきだろう。

②の不測の事態を想定した相談体制の検討とは、生活問題の捉え方対応と緊急時対応の検討である。

障害者の生活は、同居家族の支えで成り立っていることが多い。このため、障害者本人だけでなく、家族一人ひとりが抱える問題も含めて、包括的に捉えることが重要である。相談案件の問題が複合化しているのは、同居家族の問題も絡むケースも増えているからだ。さらに同居家族だけでなく、遠隔地に暮らす家族の問題が関係する事態も想定される。また、自然災害や感染症の拡大といった生存を脅かす事態を想定した相談支援へのアクセス体制の整備も検討を進めるべきであろう。

③の「自立支援協議会」の機能強化による「まちづくり」については、限られた地域資源をどのように活用し、不足する機能・資源をいかにして補うかが課題である。支援人材の再配置や施設の統配合を含め、どのように社会資源を配分するのか、また廃校となった校舎、空き家などと住民有志を組み合わせて有効活用ができないか、といった問題の検討や実行は、その地域の「まちづくり」にも直結する。相談支援に関する地域課題を共有し、その課題克服への協議を実効性のあるものにするためには、既存の協議会との連携や合同開催なども有効だと考えられる。

策定された計画・目標をスローガンに終わらせないために、協議会が設置できた段階で計画・目標をフォローする仕組みを公開・共有し、住民を含む関係者のコンセンサスを得ることが求められる。取組みの進捗を点検するため、障害福祉サービスに対する利用者の評価・意見を積極的に収集し、地域住民や関係者と共有する仕組みの検討も期待したい。

5.おわりに

「障害者総合支援法」の理念は、すべての障害者と障害児が身近な場所で必要な支援を受けられることによって、社会参加の機会が確保されること等が謳われている。さらに社会生活をおくる上で障壁となるような事物、制度、慣行、観念、その他一切のものを除去することへの貢献が求められている。このような理念に基づく施策によって様々な事業が展開されている。そうした中で、今回提示したような課題や方向性を踏まえ、支援制度の一層の整備を図ることが、真の障害者支援につながると思われる。また、こうした相談支援の体制の充実をはかることは、障害者だけでなく、すべての地域住民のwell-beingを高めることにも繋がるはずだ。

この「障害者総合支援法」施行3年後を目途とする見直しの議論は、年内にとりまとめられる予定である。親や孫にも関係する生活基盤の行方という観点からも注視していきたい。

【注釈】
1) 高齢の親と働いていない独身の50代の子が同居している世帯で、それぞれの抱える課題が複合化している問題。

2) 「障害者相談支援事業の実施状況等の調査結果について」厚生労働省2021.3

【参考文献】

  • 「令和3年4月版 障害者福祉ガイド」社会保険研究所(2021.6)
  • 「障害者総合支援法とは」社会福祉法人東京都社会福祉協議会(2020.10)
  • 「第106回社会保障審議会(社会保障審議会障害者部会 資料)」厚生労働省(2021.3)
  • 「第114回社会保障審議会(社会保障審議会障害者部会 資料)」厚生労働省(2021.7)

後藤 博

後藤 博

ごとう ひろし

ライフデザイン研究部 主任研究員
専⾨分野: 社会福祉、保健・介護福祉

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