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韓国株が急落、AI・半導体好況の陰で市場の調整が深まる

~AI投資の先行き不安や米国の金利上昇、外国人投資家の売却圧力が重しに~

西濵 徹

要旨
  • 韓国総合株価指数(KOSPI)は10月15日まで7営業日連続で下落し、半導体関連株を中心に売りが広がるなか、6月半ばの最高値から4割以上下落した。一時はサーキットブレーカーが発動する事態となったが、輸出や主要企業の業績は好調であり、株安は韓国経済の急激な悪化よりも、AI関連投資への期待の見直しを反映している可能性がある。

  • 背景には、巨額のAI関連投資の収益性・持続可能性への懸念、中国半導体企業との競争激化への警戒、米国のインフレ加速に伴う追加利上げ観測がある。さらに、外国人投資家の売却が株価下落を増幅しており、国内投資家の買いでは吸収しきれていない。当局は市場安定に向けた対応を強化する姿勢を示したものの、海外投資家によるリスク回避の動きが続けば、調整が長期化する可能性には注意が必要である。

  • 旺盛なAI・半導体需要は引き続き韓国経済を下支えする一方、株価の先行きは外部環境に左右されやすい。エネルギー価格が高止まりするなか、ウォン安が進めば輸入インフレが強まるほか、株安の長期化は家計消費や企業投資、政権支持率にも悪影響を及ぼしかねない。足元の株価の急激な調整は、半導体関連産業への依存度の高さが、国際金融市場の変動に対する脆弱性を強める構造的な問題を浮き彫りにしている。

目次

【韓国株は7営業日連続で下落、半導体関連株を中心に売り圧力が強まっている】

韓国株式市場において急速な調整が進んでいる(図1)。韓国総合株価指数(KOSPI)は、10月15日に7営業日連続の下落となったほか、一時的に下落率が9%を上回り、サーキットブレーカーが発動して取引が20分間停止される事態となった。特に、時価総額上位のサムスン電子とSKハイニックスを中心とする半導体関連株で売り圧力が強まっている。その結果、足元の株価水準は2ヵ月半ぶりの安値となり、6月半ばに記録した最高値から4割以上も下落した格好となった。

図表1
図表1

足元の株価下落を巡って注目されるのは、韓国経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が比較的堅調であるにもかかわらず、株式市場では大幅な調整が進んでいることである。韓国では、世界的なAI(人工知能)・半導体関連需要の旺盛さが輸出を押し上げており、9月の輸出額は前年比+83.5%と過去最高を更新した。なかでも半導体輸出は前年比+262.8%と急拡大している。さらに、サムスン電子が10月8日に公表した7~9月期の暫定決算も過去最高を更新するなど、業績面では好調な動きが続いている。それにもかかわらず、同社をはじめとする半導体関連株が急落していることは、これまでの株価上昇を支えてきたAI関連投資への期待が見直され始めている可能性を示唆している。

【AI関連投資の収益性への懸念に加え、中国企業の技術力向上も警戒材料となっている可能性】

背景には、米国を中心に進められてきた巨額のAI関連投資が、企業収益の持続的な拡大につながるかに関する不透明感が高まっていることがある。世界的なAI需要の拡大を受けて、韓国の半導体関連企業は旺盛な需要を取り込んできた。しかし、AI関連インフラへの投資規模が拡大するなか、市場では、こうした投資の収益性や持続可能性に対する懸念が強まっている。加えて、中国の半導体メーカーが、新たなメモリーセル構造を採用したサーバー向けDRAMを年内に投入する方針を示しており、韓国の半導体関連株を下押しする要因となった。現時点においては、同社の量産能力や歩留まり、顧客による採用の見通しには不透明感が残るものの、中国企業との競争激化が中長期的にメモリー半導体の需給や価格形成に影響を及ぼすことが警戒される。

さらに、米国の金利動向を巡る不透明感も株価を下押ししている。米国の9月の消費者物価は前年比+3.7%と前月(同+3.4%)から加速した。イラン情勢の悪化を受けた原油価格の高止まりがインフレ圧力を強めており、米連邦準備制度理事会(FRB)が追加利上げに動く可能性が改めて意識されている。米国の金利が高止まりすれば、将来の高い利益成長を織り込んできたAI・半導体関連株には、株価評価の切り下げ圧力がかかりやすい。韓国は、株式市場において半導体関連企業の存在感が大きく、国際金融市場の動向に左右されやすい構造にある。このため、米国を発端とする株価調整の動きや投資家のリスク回避姿勢の強まりが、韓国株式市場に大きな影響を及ぼしていると考えられる。

【外国人投資家の売りが調整を増幅、先行きも外部環境に左右される展開が続くか】

こうしたなか、外国人投資家による売却の動きが株価下落に拍車をかけている。韓国国内の個人投資家のほか、機関投資家による買いの動きはみられるものの、外国人投資家による売り圧力を吸収するには至っていない。さらに、半導体関連企業による自社株買いの動きが縮小しつつあることや、ETF(上場投資信託)を巡る資金移動なども需給環境に影響を与えている模様である。韓国の金融当局は15日に緊急会合を開催し、金融市場の安定に向けて対応を強化する姿勢を示したものの、海外投資家のリスク回避姿勢が続けば、株式市場の不安定な動きが長期化する可能性もある。

先行きについては、韓国の半導体関連企業の業績が直ちに悪化するとは見込みにくいものの、株価の調整が収束するかは不透明である。世界的なAI・半導体需要の旺盛さは韓国経済の下支え要因である一方、米国の金融政策を巡る不透明感や中国企業との競争激化への懸念が株価の重しとなる可能性がある。さらに、イラン情勢の悪化を背景にエネルギー価格が高止まりしており、7月以降堅調な動きをみせてきたウォン相場が下落に転じる動きをみせれば(図2)、輸入インフレを通じて国内の物価上昇圧力が一段と強まることも懸念される。そのうえ、株価下落が長期化すれば、家計の資産効果や企業の投資マインドを通じて実体経済に悪影響が広がるほか、政権支持率のさらなる低迷を後押しすることも考えられる(注1)。このところの株価調整は、韓国経済の急激な悪化を直接的に意味するものではないものの、半導体関連産業への依存度の高さが、国際金融市場の変動に対する脆弱性を強める構造的な問題を改めて浮き彫りにしたと捉えられる。

図表2
図表2

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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