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2026.10.16
アジア経済
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インドネシア株に逆風、MSCIが「スタンドアローン」への格下げ検討
~新興国市場からの除外を検討、市場の透明性とガバナンスに向けた改革の行方が焦点に~
西濵 徹
- 要旨
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- 2026年のインドネシア株式市場は、情報開示や市場の透明性を巡る懸念を背景に低迷が続いている。MSCIが1月末に同国株の指数組み入れ比率引き下げやフロンティア市場への格下げの可能性を示唆したことをきっかけに、FTSEラッセルやS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスも相次いで懸念を表明した。当局は最低浮動株比率の引き上げなど市場改革を進めたものの、協調的な取引への疑念や情報開示、法執行の実効性を巡る問題は解消されていない。
- こうしたなか、MSCIは10月15日、インドネシアを新興国市場から「スタンドアローン市場」に再分類する案について市場参加者との協議を開始すると発表した。2027年4月までに市場のガバナンスや機能改善を示す明確な証拠が確認されなければ、再分類が進められる可能性がある。実現すればパッシブ投資家を中心に資金流出が加速し、株式市場やルピア相場への下押し圧力が一段と強まることが懸念される。格付機関も政策決定の信頼性低下を警戒するなか、プラボウォ政権による実務重視への軌道修正と市場の信頼回復が今後の焦点となる。
2026年のインドネシア株式市場は低迷している(図1)。きっかけは、指数算出会社のMSCIが1月末に株式市場の情報開示に懸念を表明したことにある。同社は、情報開示の透明性向上に向けた取り組みが進まなければ、同社が算出する世界株指数などへの同国株の組み入れ比率を引き下げるほか、フロンティア市場に格下げする可能性を示唆した。これを受けて、同業のFTSEラッセルも定例で実施を予定していた同国株指数の見直し延期を発表した。このため、主要株価指数(ジャカルタ総合指数)は、格下げによるパッシブ投資家を中心とする資金流出への警戒から調整の動きを強めた。

その後、当局は最低浮動株比率の大幅引き上げなど、海外投資家の懸念解消に向けた対策を矢継ぎ早に打ち出し、市場改革を加速させる姿勢を示した。これを受けて、MSCIは当局の改革姿勢に一定の評価を示したものの、審査の延長を決定するなど、最終判断を持ち越した。そのうえで、特定株主による保有割合が高い銘柄を同社が算出するMSCIインドネシア指数、MSCIインドネシア小型株指数から除外した。その後も、価格形成を歪める協調的な取引の兆候、英語での詳細な市場情報の提供が不十分であること、当局が公表した市場改革の一貫した持続的な取り組みが必要となることなどを指摘し、MSCIは審査を再延長することを明らかにした。
さらに、7月にはS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが、株式市場の透明性に関する問題を理由に、新興国市場からフロンティア市場に格下げする可能性を警告した。具体的には、同国を2027年の市場区分見直しの対象となる可能性のある監視リストに加えた。同社は、当局による情報開示に関する懸念のほか、市場の流動性への潜在的な影響や保有構造の透明性向上に向けた取り組みを注視するとした。状況が悪化した場合には、同国の証券に対する特別措置の導入を検討する必要があるとし、特別措置の導入から1年経過しても問題が解決しない場合には、市場区分の見直しを実施するとした。FTSEラッセルは8月、同国株指数の見直し作業を再び延期する決定を下したため、各社がどのような評価を下すかが注目されていた。
こうしたなか、MSCIは10月15日、同国を新興国市場に分類することはもはや適切でないと判断し、「スタンドアローン市場」に再分類する方針について、市場参加者からの意見募集を行うことを明らかにした。その理由について、フロンティア市場への再分類では市場の問題の深刻さが適切に反映されないとの市場参加者からの意見が寄せられていることを明らかにした。また、当局による市場改革の発表以降も、協調的な取引行為への疑念や、実効性のある法執行の証拠がみられないことなど、市場の機能不全を巡る重大な懸念が残っているとした。今後、同社は2027年4月まで市場参加者との協議を行い、市場のガバナンスと機能の改善を示す明確な証拠が確認されない限り、再分類を進めるとした。同社は、市場へのアクセスや規模、流動性が著しく悪化した場合にスタンドアローンへの再分類を行っており、直近では2021年にアルゼンチン、2022年にロシアを再分類している。
仮にインドネシアが再分類されれば、パッシブ投資家を中心に資金流出の動きが一段と加速することが予想されるなど、年明け以降低迷が続く市場環境が厳しさを増すことは避けられない。同国を巡っては、主要格付機関であるムーディーズとフィッチが、政策決定の信頼性が低下していることを理由に、将来的なソブリン格付けの格下げにつながり得る見通しの引き下げ(ネガティブ)を行うなど、金融市場から厳しい目が向けられている。プラボウォ政権は9月以降、財務相や外相が相次いで交代し、実務重視に軌道修正する動きをみせている(注1)。しかし、その成否はプラボウォ大統領が専門的な判断をどこまで尊重するかに掛かっており、低迷が続くルピア相場の行方にも影響を与える展開が続くであろう(図2)。

注1 10月13日付レポート「インドネシア、財務相に続いて外相も交代、実務重視への軌道修正か」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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