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- 内外経済ウォッチ『日本~現時点における高市政権の取り組み~』(2026年6月号)
日本経済の現状認識
筆者は経済財政諮問会議の民間議員を務めている。そこでまず、高市政権が直視している『基本認識』についての説明である。日本には、世界に誇る技術革新力や労働の効率性という素晴らしい底力がある。その傍証として、日本経済の潜在成長率を要因分解すると、全要素生産性の伸びは健闘している。しかし、長年、国内投資の不足と労働時間の減少によるこれらの投入不足で、潜在成長率は低迷したままである。
この停滞の要因は、過度な緊縮志向と未来への投資不足、行き過ぎた労働時間規制の強化である。高市政権はここから完全に脱却し、国が自ら一歩前に出ることで、民間の投資を力強く呼び込むことを宣言している。
危機管理投資と成長投資
そして、具体的な投資の方向性について、柱となるのは『危機管理投資』と『成長投資』の二段構えとなる。
まず危機管理投資とは、単なる守りではなく、経済安全保障、食料・エネルギー自給、国土強靱化、サイバーセキュリティなど、国民の命と暮らしを守るためのリスクを最小化する投資となる。
一方で成長投資では、AI、スタートアップ、量子技術、そしてそれらの社会実装や海外展開を全面的にバックアップすることを目指す。
こうした方向性に向けて官民がタッグを組み、設備投資の優遇税制などにより戦略的に国内投資を促進することで、雇用を創出し、国民の所得、そして生産性を底上げしていく。これがサナエノミクスのエンジンとなる。
予算編成の見直しと家計支援
一方で、投資を加速させるためには、お金の使い方のルール、つまり『財政ルール』も見直さなければならない。
これまでの日本の財政運営は単年度主義で、補正予算に依存する傾向が強かったが、これでは長期的なプロジェクトが描きにくいという欠点があった。そこで高市政権では、補正予算を当初化するとともに、複数年度予算や長期的な基金を活用し、投資の予見可能性を高めようとしている。
そこで強調されるのは、野放図に使うわけではないということである。無駄な補助金の見直しなど、行政改革を徹底し、財政の持続可能性は確保する。その上で、政府債務残高の対GDP比を安定的に引き下げるための明確な指標を設定しようとしている。
また、国民生活に直結する『家計支援』も重要視している。具体的には、主要国よりも高水準にある飲食料品の時限的な消費税引き下げ、そして、諸外国より手薄な低所得者向けの支援を強化すべく『給付付き税額控除』への段階的移行を検討している。本当に支援が必要な層へ手厚く、より精度の高い支援を届ける仕組みへと進化させていくことを目指している。
アベノミクスとの違い
最後に、関心が多く集まる『アベノミクスとの違い』について明確にする。
かつてのアベノミクスは、金融緩和・機動的な財政・成長戦略の『3本の矢』で、需要を喚起し、デフレ脱却することに重点を置いてきた。
対するサナエノミクスは、そこから一歩進んだ『責任ある積極財政』である。つまり、需要喚起というよりも、官民協調による戦略的な投資によって『供給力、すなわち潜在成長率』そのものを高めることに主眼を置いている。投資が成長を生み、その成長がさらなる投資を呼ぶという『好循環』を、今回こそ定着させるのが狙いである。
日本が再び世界をリードする経済大国として再興するため、この『サナエノミクス』の実行力が今、問われているといえよう。
永濱 利廣
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

