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マイオピニオン~若手研究員の意見~『AIブームとデータセンター、地域社会との共存に向けて』

牧之内 芽衣

目次

AIブームの影で起きていること

生成AIは産業のあらゆる分野に浸透し、その処理能力を担うデータセンター(以下、DC)への投資は、内閣府が目標とする対日直接投資残高100兆円の柱の一つとも位置付けられています。しかし、生成AIの爆発的な普及に伴うDCの建設ラッシュは時として地域社会との摩擦を生みます。

米国における反対運動の理由

米国では2025年3月下旬から6月の約3カ月で3.8兆円分の投資計画が中止に追い込まれたとの報道もあります。米国ではDC稼働に必要な送電網の増強コストが地域の消費者に転嫁される仕組みとなっているため、主な反対理由は電気料金への影響懸念です。

DCは非常用電源として大量のディーゼル発電機やガスタービンを備えています。停電時や定期点検時にこれらから排出される窒素酸化物やPM2.5による健康被害を懸念する住民もいます。

水が貴重な地域では冷却用水の消費の問題もあります。米国のDCによる年間水使用量は日本の生活水50万人分に相当する660億リットルにのぼり、年々増え続けています。

また、ピュー・リサーチ・センターの調査では、AIのリスクを懸念する声が恩恵を感じる声を大きく上回っており、巨大テック企業への不安感がDC反対運動の根底にあるようです。

米国と異なる日本での受け止め

一方、日本のDCはデータの需要地からの距離や、電力・通信ネットワークの充実等が重視されることから、約9割が東京圏と大阪圏に集中しています。そのためか、住宅地との「距離の近さ」に起因する生活環境の悪化が焦点となりがちです。

DCはセキュリティの観点から窓が少なく、巨大な箱のような外観となることが多いです。これが住宅街に建設された場合、日照阻害や圧迫感といった景観問題が生じる可能性があります。さらに、24時間稼働する空調室外機からの騒音や排熱への懸念が、近隣住民の不安を増幅させているという調査もあります。

DCを巡る摩擦の根底には、従来から各地で見られてきた大規模開発と住民との軋轢という構図があります。高層マンション建設や産業施設の誘致でも起きてきた問題が、AI時代のインフラであるDCに向けられている面もあります。

図表
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共存に向けた視点

こうした状況を受け、自治体にも動きがみられます。東京都江東区は2025年4月に「データセンター建設対応方針」を打ち出しました。建築計画の標識設置時期を通常より前倒しするとともに、事前説明会の義務化や空調室外機の配置見直しなど生活環境への配慮を事業者に求めています。

反対運動は、DC側の努力に関わらず起こる可能性があります。DC事業者による情報公開はもちろん必要ですが、周辺配慮や説明を事業者任せにするのではなく、自治体が都市計画を示し、合意形成の土台を整えることも、摩擦を減らす鍵ではないでしょうか。

牧之内 芽衣


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