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マイオピニオン~若手研究員の意見~『コメを巡る適正価格と公正価格』

牧之内 芽衣

目次

「適正価格」と「公正価格」

食料自給率がわずか38%、主業農家数が20年間で約3分の1に減少する日本において、主食であるコメの値上がりが議論を呼んでいます。店頭価格が5kgあたり2023年6月の2,283円から2025年6月には5,072円へと約2.2倍に上昇し、令和の米騒動とも呼ばれています(資料1)。

図表
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日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」では「ゆとりがなくなってきた」との回答が55.9%に達し、96.1%の人が物価上昇を実感しています。生活者が体感している物価(体感物価)は実際の消費者物価指数を大きく上回り、価格負担感の深刻さが鮮明になっています(資料2)。

図表
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「適正価格」に明確な定義はありませんが、消費者と生産者などの立場により認識が分かれます。このような状況下では、フェアトレードのように生産コストや持続可能性への配慮を含む「公正価格」を考える必要があるのではないでしょうか。問題は、コメ市場の透明性の欠如から、価格形成プロセスの実態が把握しづらい点です。

生産コストと価格転嫁の現状

農林水産省の農業物価指数では、コメの価格指数が2025年4月に156.9(令和2年=100)、農業生産資材価格指数は124.4となり、生産コストの価格転嫁が進展しました(資料3)。

図表
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価格抑制のために放出された備蓄米は、短期的には消費者負担の軽減に有効です。しかし、長期的には農家の収入減少を通じて食料安全保障の脆弱化に拍車をかける恐れがあります。農業の持続可能性への配慮とともに、大規模化・効率化が必要という構造的な課題を改めて浮き彫りにしました。

このような背景から、適正価格だけでなく公正価格とは何かを考えることが重要です。2025年6月に成立した食料システム法では、コスト指標の作成・公表や卸売市場での情報開示の枠組みが定められました。これらを踏まえ、公正かつ透明な価格形成メカニズムを構築し、農業の持続的再生産を支える価格水準を確保することが、持続可能な食料システム実現に向けて急務となっています。

牧之内 芽衣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。