Well-being QOLの視点『2040年問題における就職氷河期世代のさらなる絶望』

永原 僚子

2040年問題とは、高齢化と人口減少が進む中で予想される一連の社会的・経済的課題を指します。2040年頃には、団塊ジュニア世代(1971年から1974年生まれ)が65歳を超え、65歳以上の高齢者が全人口の約35%を占める見込みです。このため、医療、介護、年金など社会保障制度の持続性に対する疑念が指摘されることから、「2040年問題」と呼ばれています。

2040年問題で特に注目されるのは、「就職氷河期世代」が2040年頃に65歳を迎える点です。内閣府の定義では、バブル崩壊後の1993年から2004年頃の厳しい雇用環境で就職活動をした世代です。就職氷河期世代の生年月日の定義には幅がありますが、内閣府の定義では1974年から1983年生まれ、厚生労働省の定義では1968年から1988年生まれとなっています。

この世代の就職環境は極めて厳しく、内閣府の資料によると、1993年から2004年にかけては大学(学部)卒業者の就職率は平均69.7%であり、その期間を除く1985年から2019年の全体平均80.1%を10ポイント以上下回っています。厚生労働省のデータでは、2005年の正社員有効求人倍率は0.58で、リーマンショック後の2009年には0.28まで低下し、2012年までは0.5を切る水準が続きました。このような新卒採用の大幅減少と正社員求人の低迷により、多くの若者が非正規雇用や派遣、アルバイトに就かざるを得ず、その結果、賃金水準が低くなり、経済的不安から未婚率の高さも指摘されています。さらに、厚生年金の加入期間が短いため、公的年金の受給額が少ない傾向にあります。

2040年頃にこの世代が高齢期を迎えると、経済的困窮や単身高齢者の増加が深刻化し、医療費負担の増加も生活の安定を難しくし、社会保障制度への負担増加も懸念されます。また、この問題は親世代にも影響を及ぼします。子どもの不安定な収入を補うために生活費や医療費を負担することで、親の老後資金が圧迫され、精神的な負担も増す恐れがあります。このように、2040年問題は人口構造の変化に加え、就職氷河期世代特有の雇用・経済問題が課題をより深刻にしているのです。

厚生労働省の2024年人口動態統計速報によると、年間出生数は約72万人で9年連続の過去最少を更新しており、少子高齢化の問題は依然深刻です。こうした状況下では、2040年問題は避けられないものと予測されます。

もちろん2040年問題対策としてさまざまな政策が実施されており、就職氷河期世代支援としても、就職氷河期世代活躍支援特設サイトの開設やハローワークでの専門窓口設置など、多様な支援制度が実施されていますが、15年後に迫る2040年問題の根本的な解決は困難な状況です。

以上のように、就職氷河期世代は、高齢期においても経済的困難に直面する可能性が高いと考えられます。これに備えるためには、まず厚生年金への加入を優先し、正社員や社会保険に加入する働き方を選ぶことが重要です。また、老後資金の見直しやiDeCo・NISAの活用、デジタルスキルや資格取得による就労継続の準備も大切です。さらに、人とのつながりや健康維持も大切にし、孤立や介護リスクを軽減しましょう。

就職氷河期は非常に厳しい就職環境の時代でした。筆者自身もその世代に属し、生まれた時代によってこれほど大きな差が生じるのは正直理不尽に感じられます。ただ、その状況を嘆いているだけでは何も変わりません。簡単ではありませんが、自助と社会的支援を組み合わせた早めの準備をし、主体的に備える姿勢が鍵となります。

永原 僚子


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