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マイオピニオン~若手研究員の意見~『2024年夏の電力予備率を振り返る』

牧之内 芽衣

目次

予備率がマイナスになる異常事態が頻発

2022年3月に電力需給ひっ迫警報、同年6月に注意報が発令されました。2023年には発令されず、2024年も10月時点までで発令されていませんが、2024年夏の電力予備率(ピーク時の電力需要に対する供給余力)には余裕があったのでしょうか。

電力の安定供給には一般的には7~8%、最低限3%の予備率が必要とされており、5%を下回ると注意報が発令されます。2024年夏は停止中の電源などの追加供給力により予備率が5%を上回ると見込まれたため、発令されませんでした。しかし、電力広域的運営推進機関のデータによれば、2023年6~9月の東京エリアでは、一週間前時点で予備率が8%以下と想定される日が5日だったのに対し(資料1)、2024年には29日発生していました(資料2)。

さらに、2日前の時点では予備率が8%以下の日が35日と、一週間前時点に比べて増加しています。予備率の予報を元に発電事業者が供給力を積み増すはずが、どうしてこのような事態を招いたのでしょうか。

資料1 2023年6~9月 前週段階での東京エリアの予備率
資料1 2023年6~9月 前週段階での東京エリアの予備率

資料2 2024年6~9月 前週段階での東京エリアの予備率
資料2 2024年6~9月 前週段階での東京エリアの予備率

需給調整市場の応札不足

資源エネルギー庁によると、大きな要因は需給調整市場での応札不足です。従来は一般送配電事業者が主に公募で不足分を確保していましたが、2024年度からは市場での全面調達に切り替わりました。ところが、東京エリアなどでは応札量が少なく、調達不足が常態化しているのが現状です(資料3)。

調整力の種類によっては入札価格の上限が設定されており、容量市場の余力活用契約による追加起動に応じた方が経済的メリットの大きい場合もあるなど、応札意欲が削がれている状況も考えられます。応札が少なければ落札価格が高騰し、結果として国民負担の増大につながりかねません。不足分は市場外で調達されていますが、市場が機能しなければ、効率的な調達という市場の目的も果たせないことになります。供給力の調整が可能な火力などの電源のリプレイスや既存設備の維持、予備電源の拡充など、電力の安定供給に向けた諸施策が急務です。

資料3 2024年4~9月 東京エリアの一次調整力募集量と応札量
資料3 2024年4~9月 東京エリアの一次調整力募集量と応札量

牧之内 芽衣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。