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Well-being『誰もが自分らしく暮らせる共生社会へ』

後藤 博

目次

2024年4月、改正障害者差別解消法が施行され、障害者が生活するうえでのバリア(障壁)を取り除くための「合理的配慮」が、国や自治体だけでなく、民間事業者にも義務付けられた。

また同年7月には、首相を本部長とする「障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部」が設置され、差別解消に向けた新たな行動計画を策定する方針が示されている。

ただ内閣府の調査によると、障害者に対する差別や偏見が「存在すると思う」人は2022年でも9割近くにおよぶ。これは、障害者のインクルージョン(社会的包摂)がまだ進んでいないことを示している(資料1)。

資料1 障害者への差別・偏見はあるか
資料1 障害者への差別・偏見はあるか

そこで本稿では、障害者に対する合理的配慮の向上と社会における制約・障害(社会的障壁)の解消に向けた対応について考察したい。

改正障害者差別解消法の改正点

障害者差別解消法では、差別解消のための措置として、障害者への「不当な差別的取り扱い禁止」「合理的配慮の提供」「環境の整備」が挙げられている。

「不当な差別的取扱いの禁止」は、事業者や行政機関が障害を理由に正当な理由なく差別することを禁じる措置である。「合理的配慮の提供」は、社会的障壁(バリア)を取り除く対応を必要とする場合、事業者や行政機関が過重な負担のない範囲で対応することである。「環境の整備」については、障害者に対する合理的配慮が効果的に行えるよう、事業者や行政機関に施設のバリアフリー化などの改善措置が求められている。

今回の最大の改正点は、これまで民間の事業者に「努力義務」とされていた「合理的配慮の提供」が、国や地方公共団体などと同様に「義務」となった点だ。これにより、差別を解消するための合理的な配慮を提供することが事業者に義務付けられている。

社会生活において提供されている設備やサービスなどを、障害者が障害のない人と同様に利用できるよう対応する「合理的配慮の提供」は、何らかの障害や病気があり、社会に残るバリアによって暮らしにくさを感じている人も含めたすべての人のための取組みともいえる。

その観点でも、企業や学校、交通機関など、あらゆる施設・場面での対応が求められる。事業者等は過度な負担にならない範囲で、設備、施設などの変更や、障害者への支援に取り組まなければならない。ただ、障害者の希望に事業者等が対応しきれないケースも想定される。そのような場合に障害者と事業者等との間に立って、話し合いや歩み寄りを促す仕組みをつくることも、今後に向けて重要となるだろう。

障害者差別解消法に関する相談窓口が開設

同法の周知・啓発のため、内閣府は説明会や研修会、広報活動などに取り組んでいる。その一環として、2023年10月に障害者や家族、事業者、自治体からの問い合わせに対応する「つなぐ窓口」が開設された(注1)。これは障害者差別解消法に関する相談を適切な機関に取り次ぐ機能をもち、開設から半年の照会件数は累計で1,163件になっている(資料2)。

資料2 障害者差別相談 「つなぐ窓口」照会件数
資料2 障害者差別相談 「つなぐ窓口」照会件数

この窓口は2025年3月までの試行的な取組みとされており、啓発の浸透や照会ニーズ等の状況によっては、開設期間が延長されたり、常設化される可能性もある。

すべての人が自分らしく生きる共生社会の実現を

今回の法改正による合理的配慮の向上、社会的障壁の解消を通じて、社会的なつながりが強化され、コミュニティ全体で支え合う文化が育まれる方向に進むことが期待される。

また、障害者雇用促進法の改正により、民間企業における障害者の法定雇用率が2024年4月に2.5%となり、2026年には2.7%まで引き上げられることになっている。職場でも他者への理解と共感力が高まり、人間関係も豊かになるだろう。

以上のように、障害者差別の解消を推進するには、障害の有無によって分け隔てられることなく、人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するという基本的な考え方と、それにもとづくインクルージョン(社会的包摂)が求められる。「誰にも起こり得る障害を抱えること」を我がことと認識し、一人ひとりが意識改革・行動変容に取り組むことを通じて、障害の有無にかかわらず、すべての人が自分らしく生きる共生社会が実現することを期待したい。

注1:「つなぐ窓口」の問い合わせ先
   <障害を理由とする差別に関する試行相談窓口(2025年3月迄)>

対象:障害者手帳を持つ人に限らず、社会的障壁により多くの制限を受けているすべての人、個人・法人に限らず、商業その他の事業を行う企業や団体、店舗等

  • 電話:0120-262-701(10:00〜17:00)祝日を除く

  • メール:info@mail.sabekai-tsunagu.go.jp

後藤 博


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