時評『個人の防災活動の習慣化 ~いざというときに備えて~』

原 正英

9月1日は防災の日だ。政府、地方公共団体等関係諸機関をはじめ、広く国民が台風、高潮、津波、地震等の災害についての認識を深め、これに対処する心構えを準備することを目的として、伊勢湾台風が上陸した翌年の1960年に創設されたものだ。9月1日とされたのは、関東大震災が同日に発生したことが背景にある。日本の防災体制は自然災害における経験を踏まえながら整備されている。そこで、これまでどのように整備されてきたのか、内閣府から昨年公表された防災白書をもとに振り返ってみた。

1923年に関東大震災が発生し、その翌年の1924年に法令による地震力の規定が世界で初めて制定された。また、1925年には、地震・火山現象を科学的に解明し、それらに起因する災害を軽減することを使命とする地震研究所が現在の東京大学に設立された。

1959年の伊勢湾台風による被害の発生を踏まえ、1961年に災害対策基本法が制定された。同法にて政策転換され、災害の予防から応急対策、復旧・復興まで一貫した災害対策を実施していくこととなり、また総合的な防災対策の推進のために調整する仕組みも構築された。

1995年の阪神・淡路大震災の後には、政府の初動体制が強化され、24時間体制で情報収集を行う内閣情報集約センターや官邸の危機管理センターが設置され、さらに被害の早期予測システムが整備された。また、全国各地から延べ130万人以上の人々がボランティア活動に参加し、後に「ボランティア元年」と言われた。ボランティアの役割が重要との認識の下、1995年の改正で災害対策基本法にボランティアの活動環境の整備に関する規定が初めて設けられた。

2011年の東日本大震災の後には、被災者支援体制の充実等が図られた。2012・2013年の改正で災害対策基本法に、被災地の要請を待たずに国等が自らの判断で物資等を供給できるプッシュ型支援に係る規定や避難所などを予め指定する規定などが設けられた。また、避難所運営に関する取組指針やガイドラインの制定なども行われた。

そのほかにもさまざまな整備が進められているなか、今年1月に能登半島地震が発生した。突然のことであり恐怖や不安、深い悲しみにつつまれた。発災直後にはNHKアナウンサーの避難を促す呼びかけがあり、その後の救助等の活動には北陸以外の地方公共団体から職員が派遣されていた。ボランティア団体、神戸や熊本などから個人支援者もかけつけたとの報道もあり、これまでの経験が生かされていると感じた。

大規模地震の切迫性は高まっている。地震調査委員会によると、千島海溝、日本海溝、南海トラフなどに、30年以内に発生する確率が70%以上となっている地域がある。中には、最新の評価で発生確率が高まった地域もある。本稿執筆時点の8月8日に、気象庁が「巨大地震注意」発表し、南海トラフ巨大地震へ注意を促した。他地域も含め、今後も一層の警戒が必要な状況である。

近年は気候変動による影響が顕著になっている。気象庁によると、日本の年平均気温は100年あたり1.35℃の割合で上昇している。また年間降水量や台風の発生件数には長期的な傾向がみられないものの、平均気温の上昇と相関するように、全国的に大雨や短時間強雨の発生頻度が増加している。さらに、日本近海における年平均海面水温は、100年あたり1.28℃の割合で上昇しており、日本の平均気温の上昇幅と同程度となっている。海面水温の上昇は、一般に台風の勢力拡大に影響を与えるとされており、台風による被害拡大につながるおそれがある。

自然災害は突然、発生する。災害対策には時間のかかるものもあり、公助に加えて自助や共助も重要だ。そして、いざというときの行動に役立てるため、平時の準備が欠かせない。例えば、最近機能が向上している防災アプリ使えば、関連知識の習得のほか、発災時の行動計画の策定も手軽にでき、準備すべきことの整理も可能だ。いざというときに備え、個人の防災活動の習慣化が欠かせない。

原 正英


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