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- 内外経済ウォッチ『欧州~不安定化する欧州の政治情勢~』(2024年8月号)
EUに懐疑的な極右が躍進した欧州議会選挙
6月初旬に欧州連合(EU)に加盟する27ヶ国で行われた欧州議会選挙では、親EUのリベラル政党や環境政党が大幅に議席を失った一方、EUに懐疑的な極右政党、保守政党、ナショナリスト政党などが議席を伸ばした。北アフリカや中東などからの移民流入が続いていることや、各国で悪化する治安、新型コロナウイルスの感染拡大時の経済活動停止やロシアによるウクライナ侵攻後の物価高騰による生活困窮などが重なり、各国で政権を率いる主流派政党に対する不満票が集まった。欧州議会は加盟国の閣僚が集まる閣僚理事会とともに、EUの共同立法機関だ。かつては諮問・監視機関だったが、現在では欧州議会の合意なしに、EUの立法行為や予算を決定することができない。
EU懐疑派が躍進したものの、親EU会派で過半数の議席を堅持したため、EUの政策運営や高官人事への影響は限定的となりそうだ。欧州議会での承認作業が残るが、欧州委員会の委員長には、中道右派会派のフォン・デア・ライエン氏が続投する可能性が高い。EUに懐疑的な保守会派を率いるイタリアのメローニ首相や、新たな右派会派の結成に動いているハンガリーのオルバン首相が人事案に反対したものの、欧州理事会の常任議長には中道左派会派に所属するポルトガルのコスタ前首相、外交・安全保障上級代表にはリベラル会派からエストニアのカラス首相が就くとみられ、親EU派で重量級ポストを独占する。

極右政権誕生阻止も混迷を深めるフランス政局
欧州議会選挙の結果は、フランスの政局流動化の引き金となった。与党連合が極右政党に大敗したことを受け、マクロン大統領は国民議会(下院)の前倒し解散・総選挙を決断した。6月30日に初回投票、7月7日に決選投票が行われた国民議会選挙は、初回投票で極右政党が最多支持を獲得したものの、決選投票では左派連合と与党連合が候補の一本化で対抗、極右政権の誕生を恐れる有権者が投票所に足を運んだことも奏功し、左派連合が逆転で議会の最大勢力となった。
左派連合、与党連合、極右政党の何れの勢力も過半数に届かず、次期政権の枠組みや政権発足に向けた今後の政局展開は不透明さを増している。本稿執筆時点(7月8日)で事態は流動的だが、①左派連合が非多数派政権を発足する、②極左と極右を除いた中道政党で挙国一致政権を発足する、③暫定政権を発足し、次に議会の解散が解禁される1年後に再選挙を行うなどのシナリオが考えられよう。左派連合の選挙公約には、マクロン大統領が引き上げた年金支給開始年齢の再引き下げなど大幅な財政悪化につながる政策メニューが盛り込まれ、EUに懐疑的な主張も並ぶ。極右政権の誕生を阻止できたからと言って、フランスの政局不安が払拭される訳ではない。財政不安を通じて金融市場の動揺を招く恐れがあるほか、EUの中心国であるフランスでEUに懐疑的な政権が誕生することで、EU運営にも影響が及ぶ恐れがある。

田中 理
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