Side Mirror(2024年6月号)

佐久間 啓

このところの世間の関心は為替レートだ。SNS等では止まらぬ円安にややイライラ感を滲ませたコメントも多い。

ドル円レートは、2022年には1998年以来となるドル売り介入が実施される中、一旦151.90円台のピークを付けた。その後は米国のインフレの落ち着きもあり、一時的に売られる局面もあったが、米国経済の強さからFFレートが“より高く、より長く”推移するとの思惑からじりじりドル高が進行。2023年11月には再び151.90円台まで買われたが、FRBによるハト派発言が相次ぎ、2024年の利下げが確実視されると140円台まで下落。しかし、米国のしつこいインフレ、好調な雇用環境から利下げ期待も徐々に萎み、再度ドル高の流れが強まり、2024年4月、これまでの151.90円台のポイントを抜けると更に一段とドル高が加速した。

円安は日米金利差が要因だから日銀が何とかするべきではないのか、といった意見も大きくなる中で、4月25~26日に日銀の金融政策決定会合が開催された。3月にマイナス金利を解除したばかりであり、特段の政策変更なしがコンセンサスとなっていた。ただ一部では、152円を上回る円安の動きに、日銀が何らかの対応を見せるのではとの期待もあり、決定会合後の総裁記者会見が注目されていた。会見では為替についての質問が多かったが、植田総裁はこれまで通りの姿勢を崩さず、「好循環実現に支障が出るということであれば何らかの対応を検討」するとしながら、足元の円安の動きは今のところは無視できるとした。

日銀はけしからんのか?今今、通貨防衛のために利上げすべきか?筆者はそうは思わない。2022年以降のドル高の動きを振り返ってみたが、お気づきだろうか。ドル高の主な要因は米国経済の柔軟性、レジリエンスの強さ、故のFRBによる金融引締めの長期化によるものだ。もちろん為替レートは金利差で動く。それは否定できないが、その動き方は単純ではない。時に市場は暴走するが、基本、合理的だ。中立金利に向けた利上げに自信を深めつつある日銀の動きに関心が移れば、市場は一変するリスクも考えておいたほう良い。

(佐久間 啓)

佐久間 啓


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佐久間 啓

さくま ひろし

経済調査部 研究理事
担当: 金融市場全般

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