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- 時評『地域脱炭素と各国脱炭素〜県勢と国勢〜』
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地域脱炭素の取り組み
地球温暖化問題の解決には、私たちのライフスタイルを持続可能なものに極力転換していくことが重要であると言われる。わが国の2050年脱炭素に向けた2030年46%削減目標の中でも民生・業務部門は66%削減という大きな数値となっており期待は大きい。
こうした中、東京都、京都市、横浜市など800超もの各地域の自治体が2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロというカーボンニュートラル宣言を行っている。
こうした地域では、各地域における経済構造や社会構造の特徴を踏まえて、それぞれの地域課題と脱炭素とを総合的に同時解決していこうとする地域脱炭素という施策が進められている。具体的には余剰再エネ電力の自己託送や風力発電の売電収入の地域還元などの再エネ導入促進、省エネ、電力需要調整、環境配慮型観光MaaSや商業施設における太陽光発電・蓄電池・EVのAI最適制御等のモビリティ対策、更には公共施設のレジリエンス強化による地域防災力の向上、地域森林資源によるバイオマス発電や可燃ごみからの固形燃料製造などの地域資源活用などが挙げられる。
県勢と国勢
これらの施策は、個々の地域自治体の取り組みであるが、我が国の地域というのはそれなりの経済規模があり、国際的には一国にも相当する地域も多々ある。矢野恒太記念会発行の「データで見る県勢」をはじめとする各種統計を横断的に眺めてみると、もちろん為替水準によって影響があるものの、例えば県民総生産では大阪、愛知、神奈川は約3000億ドル程度であり、これはマレーシア、シンガポール、フィリピン、ベトナム、欧州ではノルウェー、デンマーク、フィンランドなどとほぼ近い規模であり、同様に約1兆ドル規模のインドネシア、オランダ、メキシコなどは、東京都と同規模となっている。
これら各国も同様に脱炭素と地域課題との同時解決を追求しており、カーボンニュートラル宣言を含め、各種の再エネ導入、水素やアンモニアの供給網構築や技術開発等、省エネの促進などを進めつつある。日本の各地域が地域脱炭素で取り組む課題にはこれら各国と共通するものも多く、資金確保や継続的な住民参加、企業活動との両立、送電網や交通網に関する近隣地域や近隣国との協働の在り方などは、地域と各国とが経験を共有し、相互に比較検討することに一定の意味がある思われる。
県民総生産以外にも一人当たり県民所得(我が国道府県では300万円≒22000ドル程度が多い)、人口、農業出荷額、電源構成など様々な指標で県勢と国勢を比較し、更には地域同士の知見を国境を越えて直接に共有する機会を持つことも重要である。環境省は都市間連携セミナーとして我が国の各都市とアジア諸都市とが共に都市に関わる環境問題を共に検討するフォーラムを定期的に開催してきているが、その中では各都市が悩む廃棄物問題や大気水質環境の改善などと合わせて、交通流対策や市民運動など気候変動への対策も議論されてきている。
身近な地域で地道に取り組まれてる施策が実は世界各地で同様に悩みながら進められているグローバル課題への最前線である。こうした実感を時々確認していくことは、ライフスタイルの変革という長期に及ぶ脱炭素移行を具体的かつ彩り豊かに支える静かなモチベーションの一つにならないかと考えている。
近藤 智洋
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。