ライフデザイン白書2024 ライフデザイン白書2024

ライフデザインの視点『企業の力を地方創生に生かすということ』

稲垣 円

目次

「地域をおこす」生き方の普及

移住・定住のみを地域との関わりの帰着点とするのではなく、一定期間滞在しながら、地域住民と交流することを通じて地域の暮らしを学び、地域おこしの支援する事業が展開されている。その代表的な制度として「地域おこし協力隊」がある。

「地域おこし協力隊」は、総務省の主導で2009年度から取り組まれている制度で、本年で14年目を迎えた。過疎や高齢化の進行が著しい地方において、都市地域から人材を積極的に受け入れ、地域協力活動を行ってもらい、その定住・定着を図る。制度が始まった2009年度は隊員数89人、受け入れ自治体数31団体であったが、2021年には隊員数は6,015人、受け入れ自治体も1,085団体まで増加している。政府は、2024年度までに隊員数を8,000人に増やす目標を掲げて強化を行っている。「関係人口」(「何らかの形でその地域に関わってくれる人」「特定の地域に継続的に多様な形でかかわる人」を指す)の創出という観点から、また、新型コロナウイルス感染症の影響で、この2年ほど停滞している社会・経済活動の再開や人の往来のきっかけづくりとしての期待もある。

企業が地域おこしにかかわる

他方、企業が専門知識やノウハウを持つ人材を地域へ派遣し、地域の課題解決の事業に従事させることで、社会貢献と社員の人材育成・キャリアアップの両方を実現するという制度の活用も進んでいる。それが「企業版ふるさと納税(人材派遣型)」(2020年度~)と「地域活性化起業人」(2021年度~)制度だ。

「企業版ふるさと納税」はこれまでも行われてきたが、人材派遣型は金銭のみを寄付するのではなく、文字通り「人材を派遣する」ことで税額控除が受けられる。企業から企業版ふるさと納税に係る寄附があった年度に、当該企業の人材が寄附活用事業に従事する自治体の職員として任用される場合、または地域活性化事業を行う団体等で寄附活用事業に関与する場合に適用される。

自治体にとっては実質的に人件費の負担なしに人材を受け入れることができ、地方創生に関わるプロジェクト等の充実・強化が期待できる。企業は、派遣した人材の人件費(相当額)を含む寄付により、寄付金の最大約9割に相当する税額控除を受けることができる。

対して「地域活性化起業人」制度は、3大都市圏に所在する企業等に勤務する者、または、3大都市圏に本社機能を有する3大都市圏外の企業等に勤務する者が対象となる。起業人は、6ヵ月以上3年以内の期間、継続して自治体に派遣され、地域活性化に向けた幅広い活動に従事する。そして、国はこの取り組みに対して必要な支援を「特別交付税措置」として行う。

制度そのものは2014年度から行われており、受け入れ自治体と派遣人数は着実に増加している(2014年度:受け入れ自治体17、派遣人数22人→2021年度:受け入れ自治体148、派遣人数395人)。

「企業版ふるさと納税」、「地域活性化起業人」いずれの制度も、企業のノウハウ活用による地域貢献と併せて派遣人材の育成の効果を期待することができる。派遣される人材にとっては、任期終了後の仕事について心配することなく、企業に籍を置きながら、地域で自分の力を試したり、新たな知見やスキルを身に付けたりすることが期待できる。

試される企業の本気

これまで、企業が地域社会や住民に貢献する方法として、資金支援(例えば売上の一部を寄付する)や物的支援(自社製品やサービスの提供、設備や施設の貸与等)、人的支援(ボランティア、プロボノ)などが行われてきた。

働き方という側面でみれば、国は「テレワーク」といった地方のサテライトオフィス等で都市部と同じように働き、都市部と地方での事業リスク分散や全国から幅広い人材の確保を目指すといった都市から地方への人の流れをつくる事業を積極的に推し進めている。新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、こうした地方での生き方、働き方に関心を持った人も少なくないだろう。こうした流れの中で、本稿で紹介したように、一定期間社員が地域にどっぷりと浸かりながら地域の魅力を高めたり、課題解決に努めたりすることで、地方創生に資することを目的とした取組事例も増えてきている。重要なのは、行政や地域の多様な人びとと共に動き、自社のノウハウを活かしつつ地域のニーズに応える事業を生み出すことのできる人材(そうした力を身に付けたい人材)が求められているという点だ。

その土地に暮らし、人びとと関わりながら民間企業と行政組織双方の視点を持って活動できる人材、地域に関わることを面白がれる人材が期待されている。それは、地方公共団体のみならず、地方創生への貢献に臨む企業の本気度が試されているともいえるのではないだろうか。

【参考資料】

図表1
図表1

稲垣 円


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