内外経済ウォッチ『米国~出口戦略に踏み出したFRB~』(2021年12月号)

桂畑 誠治

目次

11月FOMCでテーパリング開始を決定

FRBは、新型コロナウイルス感染症による経済危機に対して実施してきた大規模な金融緩和策の出口戦略の開始を決めた。11月2、3日に開催されたFOMCで、経済がFRBの目標に向けて一段の顕著な進展を遂げたことを踏まえ、11月から毎月国債を100億ドル、政府支援機関保証付きの不動産担保証券を50億ドルずつ減額することを全会一致で決定した。現在の月額最低1,200億ドルの資産購入額が11月に1,050億ドル、12月に900億ドルに減額され、22年6月に資産購入を終了する。7月以降直ちにバランスシートを縮小させるか否かは未決定であるが、政策金利をある程度引き上げるまでは再投資によってバランスシートの水準を維持するとみられる。

一方、政策金利であるFFレート誘導目標レンジは0.00~0.25%に据え置かれたほか、政策金利に関するフォワードガイダンスの維持も全会一致で決定された。また、警戒された利上げ前倒しに関して、パウエルFRB議長は「本日のテーパリング開始の決定は政策金利に関して何の直接的な示唆を与えるものではない」とこれまでの見解を変えなかったうえ、議長は「利上げには辛抱強くなれる」と利上げに慎重な姿勢を示した。テーパリングの決定は既に金融市場で織り込まれていたほか、議長が利上げを急いでいない姿勢を示したこともあり、出口戦略開始決定による金融市場の混乱は回避できた。

一時的なインフレ高進の結論は22年半ばに明確化

次の焦点は利上げの時期となっている。7-9月期には、デルタ変異株による感染拡大、供給制約によって実質GDP成長率が前期比年率+2.0%と減速し、労働市場の改善ペースも鈍化した。しかし、10-12月期以降は感染収束などによって、経済成長や労働市場改善のペースが再加速すると予想される。

一方、インフレはパンデミックに関連した需給の不均衡や経済活動の再開によって一部セクターでの大幅な物価上昇を背景に、9月にPCEデフレーターが前年同月比+4.4%、PCEコアデフレータが同+3.6%と高進し、ベース効果もあり少なくとも22年1-3月期まで高止まりする可能性が高い。ただし、FRB議長は、「供給制約が22年まで続き、物価上昇率を押し上げるが、パンデミックが収まれば供給制約が緩和するため、22年4-6月期、あるいは7-9月期に物価も現在の高インフレの水準から低下するだろう」と説明しており、FRBは22年半ば頃にかけてインフレ高進の要因を見極めるとみられる。ただし、インフレの高止まりが続いていれば、需給バランス改善のために、FRBは大幅利上げに追い込まれるリスクがある。

桂畑 誠治

桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

執筆者の最新レポート

関連記事

関連テーマ

Recommend

おすすめレポート