ライフデザインの視点『情報通信・テクノロジーへの適応をめぐる世代間ギャップ』

北村 安樹子

目次

新たな技術への期待と不安

6月に公表された通信利用動向調査によると、個人のインターネット利用者は13~59歳の各年齢層で9割を超えた(資料1)。主な利用機器をみると、70代までの人ではスマートフォンが最も多い。利用機器や使い方には依然個人差がみられるものの、インターネットの利用は、日常生活の多様な場面に広がっている。

図表
図表

インターネットの利用を含め、情報通信技術やテクノロジーの広がりは、私たちの暮らしを豊かで便利なものにするといわれている。しかしながら、一方でそれらへの適応に不安を感じる人もいる。

当研究所が2019年に行ったアンケート調査では、情報通信や人工知能(AI)などのテクノロジーに関して対になる考え方を示し、回答者の意識をたずねている。その結果、「A便利になる」については、Aに近い(「Aに近い」「どちらかといえばAに近い」の合計)とした人が全体の9割を超え、「B不便になる」に近いとした人を大幅に上回った(資料2)。

一方、「A不安はない」については、「B不安がある」に近いとした人がAに近いとした人を上回った(資料3)。若い女性ではより明確に「Bに近い」とした人の割合が高い。つまり、「便利になる」とした人はどの世代でも多数派であるが、これらの変化に子どものころから触れてきた若い世代の方が、期待と不安を併せ持っていると考えられる。

図表
図表

シニア世代の方が「自分ごと」

これらの社会変化に対する対応力については「ある程度努力することで対応できると思う」(37.8%)とする人が最も多く、「問題なく」「かなり努力が必要だが」を含めれば、7割超が対応できると答えている(資料4)。

注目されるのは、「自分には関係ない話だと思う」とした人が年齢の高い人ほど少ないことである。特にITなどのテクノロジーによる社会変化を中高年期以降に経験してきた60代の場合、変化への対応に迫られた経験が多かったためか、このような人は1割に満たない。「ある程度努力することで対応できる」「かなり努力が必要だが、対応できる」とした人も6割以上おり、対応を自分ごととして捉えている人が多い。

図表
図表

世代間ギャップを埋めるには

これに対して29歳以下の若い世代では「問題なく対応できると思う」とする人の割合が最も高く、対応力に自信を持つ人が多い。ただ、若い世代のなかにも自信がない人はいて、それが資料3でみた若い女性の不安につながっているとみられる。

前述のように、年をとるほど、年下の世代より技術によって変化する前の社会を知っている期間が長いため、その変化を感じやすい。対応力には個人差もあるが、自分より年長の世代の方が新しい技術に抵抗を感じやすいことについて、中高年以上の人は若い世代よりもイメージしやすいだろう。これに対して、インターネットや情報通信機器の操作に不慣れな人がそれらの利用に煩わしさや違和感を持つ場合があることを、若い世代は理解できないかもしれない。また、若い世代にとっては当たり前のことと感じられるような基本的なリテラシーが共有されていないために、IT技術を使ったコミュニケーションを行ったり、それらの使い方を聞かれたりした際に違和感を覚える場合もあるだろう。その点、自らも新たな技術の利便性を経験する一方、それらへの対応に迫られてきた中高年以上の世代であれば、70代以上の高齢世代を含め自分より上の世代の心情を理解しやすいだろう。世代差だけでは語れない部分はあるが、中高年以上の人は、時代の変化やコミュニケーションに対する感覚の違いを、高齢世代と若い世代の双方にわかりやすく伝える橋渡し役になれる場面もあるのではないだろうか。

北村 安樹子


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 副主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

執筆者の最新レポート

関連レポート

関連テーマ