ここが知りたい「デジタル庁」『政府が目指すデジタル改革とは』

丸山 雄平

目次

菅首相が自身の政権の目玉政策として掲げたデジタル庁が9月1日に設立される。昨年9月の首相就任後の記者会見では、「複数の省庁に分かれる関連政策を取りまとめて強力に進める体制として、デジタル庁を新設する」ことを表明し、デジタル改革相として平井卓也衆議院議員を指名した。

今回のデジタル改革は、政府の本気度が随所に現れている。デジタル改革関連法案は、デジタル社会の基本理念や重点計画を規定するデジタル社会形成基本法など6法案から成り立っており、政権発足から8か月という異例の速さで成立した。また、これまで不足していたデジタル人材を確保すべく、デジタル庁約500名の職員のうち、100名程度を民間から公募しており、今後は、国家公務員総合職試験にデジタル区分を新設することが既に発表されている。

本稿では、着々と進むデジタル改革の取組みについて解説するとともに、政府が目指すデジタル改革の方向性について説明する。

政府が目指すデジタル改革とは

現在、菅内閣が「国民のために働く内閣」として取り組んでいる政策のうち、デジタル改革の8つの取組みについて、首相官邸のホームページで説明されている(資料1)。

図表
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デジタル社会の実現に向けて、政府は「一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」を掲げており、デジタル社会の実現に向けた司令塔の役割として、デジタル庁に対する期待は非常に大きい。

これまでの政府の取組みと現状

政府のIT戦略は古く、2000年に成立したIT基本法、および森政権が掲げたe-Japan戦略に遡る。当時は「すべての国民がITのメリットを享受できる社会」を目指し、5年以内に世界最先端のIT国家になることを打ち出したが、政府のIT専門人材やリーダーの不足など、この改革の実行に必要なリソースを準備することができなかった。また、国民の関心も高くなかったことから、行政運営の効率化や国民の利便性を向上させるような仕組みを構築することができなかった。平井大臣はこの失敗を「デジタル敗戦」と呼んでおり、新型コロナウイルス感染症にて日本のデジタル化の遅れが浮き彫りになったことは周知のとおりである。

国民一人あたりに10万円を配った特別定額給付金では、マイナンバーカードを使用したオンライン申請を受け付けたが、人手による本人確認作業に時間を費やした。また、新型コロナウイルス感染者数のデータ収集や本人確認時におけるアナログ対応、小中学校でのオンライン授業の対応の遅れなど、非デジタルな状況が露わになった。このことは、世界電子政府ランキングにおける日本の順位を見れば明らかであり、先行する韓国や北欧諸国から大きく遅れをとっている(資料2)。

図表
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デジタル改革の成功の鍵

デジタル社会の実現に向けて、マイナンバーカードの普及は必要不可欠である。現在マイナンバーカードの普及率は30%を超えたものの、2022年度末までにほぼすべての国民が保有するという政府目標にはまだほど遠い(資料3)。政府には、発行・交付体制の強化や、個人情報の取扱いの見直しなど、マイナンバーカードを持つことの負担や不安の解消に向けた不断の努力が求められる。

また、今回のデジタル改革法案で注目すべきポイントの一つとして、マイナンバーカードの電子証明書機能をスマートフォンに搭載できるようにしたことが挙げられる。平井大臣は今年2月の記者会見において、「スマートフォンで、60秒であらゆる行政手続ができるようにするなど、デジタル社会での利用シーンの拡大を実現していく」と語った。現在の予定では、2022年から順次スマートフォンを使用した本人確認が可能となり、確定申告をはじめとする行政の手続きや、銀行口座の開設、携帯電話申込みなど民間サービスも行えるようになる。

今後、デジタル庁が主導して、行政手続きのオンライン化を進め、民間を含めた利活用範囲の拡大や利便性の抜本的な向上を実現することで、国民の利用シーンを増やし、一人一人が「マイナンバーカードを持っていてよかった」と実感できるようになれば、自ずとデジタル改革が実現していくだろう。

図表
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政府が目指すデジタル改革に向けて

明治初期や戦後の日本は「世界に追いつけ、追い越せ」のモデルで成功したように、デジタル改革においても、国民が同じ方向を向くことができれば、日本はデジタル化の遅れを一気に挽回することができる。そのために政府が掲げる「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」のコンセプトを徹底的に追求し、国民目線での利便性の高いサービス提供や、国民への丁寧な説明を行わなければならない。

また、海外の取組みも参考となる。台湾では民間出身のオードリー・タン担当相が、シビックハッカー(市民エンジニア)と連携し、デジタル社会を実現している。韓国では1997年の通貨危機をきっかけに、国策として「デジタル・ニューディール政策」を掲げ、経済の復活を目指し、国全体のDX化に成功した。

日本においても、新型コロナウイルス感染症をきっかけに世論が変化しており、デジタル社会の実現に向けた千載一遇のチャンスを迎えている。デジタル社会の実現は、日本が抱える少子高齢化による労働力人口減少の対策の一つとして、労働生産性の向上および経済成長の実現をもたらすであろう。その司令塔として、デジタル庁のリーダーシップに期待したい。

最後に、政府はデジタル庁の設立を記念し、2021年10月10、11日を「デジタルの日」に制定した。一般にはまだ馴染みが薄いが、デジタル社会の実現に向け、産官学をあげて様々な形で盛り上げ、気運を高めていきたい。

丸山 雄平

丸山 雄平

まるやま ゆうへい

総合調査部 マクロ環境調査G 主席研究員
専⾨分野: テクノロジー、DX、イノベーション

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