注目のキーワード『中長期の経済財政に関する試算』/編集後記(2021年7月号)

松村 圭一

「中長期の経済財政に関する試算」(以下、内閣府試算)は、足元から向こう10年程度の経済成長や財政状況等の試算を示したもので、内閣府が年2回、概ね1月と7月(つまり今月)に公表しています。内閣府によると、この試算は、「経済再生と財政健全化の進捗状況を評価するとともに、今後の取組に関する検討に必要な基礎データを提供することで、経済財政諮問会議における審議に資することを目的」としています。

政府は民主党政権下の2010年に、社会保障や公共事業といった政策的経費が、国債等の借金に依存しない(税収等)で賄えているかを示す「プライマリー・バランス(PB)」の黒字化を、2020年度までに達成するとの目標を掲げました。これはその後の第二次安倍政権以降でも引き継がれましたが、目標年度が近づいた18年、消費増税の延期等を理由に達成時期を25年度へと先延ばししました。

執筆時点で最新となる今年1月の内閣府試算によると、物価変動の影響を除いた実質成長率が2%程度で推移する「成長実現ケース」で29年度、1%程度の成長で推移する「ベースラインケース」では試算期間の30年度までにPB黒字化は達成できないとの結果になっています。なお、アベノミクスにより最近では経済が比較的堅調だった安倍政権下(第二次以降)においても、平均成長率は1%弱だったことを考えると、先行きもベースラインケースが実体に近いと考えられます。

IMFによると日本の政府債務残高は足元でGDPの2.5倍を超え(米国の約2倍)、世界でも突出した高さになっています。財政赤字の累増は、将来への増税・収入不安から家計や企業の消費や投資を萎縮させるだけでなく、将来世代への借金の先送りにも繋がります。また、増大する社会保障費が政策的経費である「一般歳出」に占める割合は過半を超えており、これを放置することは科学技術や文教といった今の日本に必要な政策に、必要な予算が回らないという「財政の硬直化」も招きます。

足元では25年度PB目標の折り返し地点(18年起点で)に入ろうとしています。内閣府試算が冒頭の目的に真に資するべく、試算方法と中立性を不断に見つめ直すとともに、英豪のように試算と実績の乖離について事後検証を行うなど一層の精度向上を図り、今まで以上に経済・財政政策の場で適切な羅針盤として尊重されることが期待されます。

(取締役・総合調査部長 松村 圭一)

編集後記

最近のテクノロジーの進化は凄まじい。気が付けば、便利になったな~と感じる電子機器、サービス、そのスピード。子供の頃、漫画、TVの特撮もの、映画で見た「こんなこと出来たらいいな~」ということが実現し、毎日普通に使っていたりする。確実にテクノロジーは進化し浸透し社会は変化している。一方で少子化高齢化の進む日本では今後イノベーションが進まず、今後ますます中国や若いアジア諸国に追い抜かれ置いて行かれることになりはしないかという見方もある。

確かに少子高齢化は社会の変化にマイナスに働く面はあるかもしれない。英国の脚本家、SF作家であるダグラス・アダムスは「人は自分が生まれた時に既に存在したテクノロジーを自然な世界の一部と感じる。15歳から35歳の間に発明されたテクノロジーは新しくエキサイティングなものと感じられる。35歳以降になって発明されたテクノロジーは、自然に反するものと感じられる」と書いた。ダグラス・アダムズの法則と言われたりしているが、彼が書いた小説の一節であり法則と言うほど積み上げられたデータがあるわけではない。ただ自分を振り返っても「そういうことあるかも?」と考えさせられるところはある。

しかし年齢を重ねたからと言って“一般的に”テクノロジーの進化に背中を向けるということはないと思う。確かにこれまでのやり方を変えたりするのは面倒くさい。だが日常生活がより楽になる、楽しくなるのであれば積極的に取り入れる人は多いはずだ。日本には若い勢いはないかもしれないが経験豊富な大人の知恵はあると信じたい。

(H.S)

松村 圭一

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