よく分かる!経済のツボ『金利上昇の良し悪しは何で決まるの?』

小池 理人

急速に上昇する米国の長期金利

新型コロナウイルスの感染拡大に伴うFRB(連邦準備制度理事会)の大規模な金融緩和政策を受けて低水準で推移していた米国長期金利ですが、2021年初以降、急速に上昇しています(資料1)。金利が上昇する理由を解釈する上で、良い金利上昇、悪い金利上昇という言葉をしばしば耳にしますが、金利上昇の良し悪しは何によって判断されているのでしょうか。

資料1
資料1

金融市場で懸念される悪い金利上昇

良い金利上昇とは、実体経済の回復(もしくは市場参加者によるその予想)を伴った長期金利の上昇を指します。一方、悪い金利上昇とは、債券需給の悪化や急速な物価上昇等を背景とした、実体経済の回復を伴わない長期金利の上昇を指します。

足もとの動きをみると、ワクチンの接種が進む中で(資料2)、徐々に経済活動の正常化が意識され、景気回復観測が強まることで、金利の上昇が進んでいると考えられます。一方で、バイデン政権のもと、拡張的な財政政策を背景に米国債務が拡大する中で(資料3)、米国債券の需給が悪化し、金利が上昇しているとも考えられます。

資料2
資料2
資料3
資料3

このように足もとの金利上昇は、良い金利上昇の側面と悪い金利上昇の側面の両面が考えられ、市場参加者による急速な金利上昇に対する警戒感から、一時株式市場には動揺がみられました。しかし、イエレン米財務長官やバーキン米リッチモンド連銀総裁などの米金融当局者が長期金利の上昇について、経済の改善を反映したいわゆる良い金利上昇であるとの認識を示したことなどから、市場参加者の懸念が和らぎ、足もとで株式市場は落ち着きを取り戻しています。

今後、金利の動向を巡って懸念されるのは、緩和縮小観測の高まりによる市場の混乱です。ワクチンの普及が進み、経済活動が正常化した場合には、現在の緩和的な金融政策も徐々に縮小していくことが見込まれます。金融政策の正常化を進める中で悪い金利上昇が生じないよう、FRBには難しい舵取りが求められます。

小池 理人

小池 理人

こいけ まさと

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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