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働き方改革の視点『「働く場所」の多様化~サテライトオフィスの広がり』

的場 康子

目次

今年の仕事始めはテレワークから

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、2021年1月8日に1都3県、同14日にも2府5県を対象に再び緊急事態宣言が発令された。これらの地域では「出勤者数の7割削減」を要請されたこともあり、今年の仕事始めはテレワークからという人も多かったのではないだろうか。

ただ、内閣府の調査をみると、2020年5月のテレワーク実施率は全国で27.7%であったが、12月には21.5%に低下している(資料1)。2020年4月の全国的な緊急事態宣言によりテレワークが広がったものの、その後、感染者数が沈静化した際に、再び元の出勤スタイルに戻った企業が多いようだ。今回、再び緊急事態宣言が発令されたため、テレワーク実施率も上昇すると思われるが、テレワークを定着させることの難しさを実感している企業も多いのではないか。

資料1 地域別のテレワーク実施率
資料1 地域別のテレワーク実施率

テレワークの難しさは「在宅勤務」?

テレワークはなぜ難しいのか。多くのテレワーク経験者が挙げるテレワークのデメリットはコミュニケーションに関することである。内閣府の調査でも「社内での気軽な相談・報告が困難」「取引先等とのやり取りが困難」「画面を通じた情報のみによるコミュニケーション不足やストレス」が上位である(資料2)。オンラインツールとその運用の工夫によって、テレワークであっても出社勤務と同じように気軽に雑談や相談ができ、職場の人とのつながりを感じられるような環境づくりが、テレワークの定着のために重要なことがわかる。

さらに、テレワークのデメリットとして「テレビ通話の質の限界」「通信費の自己負担が発生」「仕事と生活の境界が曖昧になることによる働き過ぎ」「在宅では仕事に集中することが難しい住環境」「同居する家族への配慮が必要」などが挙げられている。これらは主に「自宅」で仕事をすることの難しさ、「在宅」勤務の限界を示していると思われる。通信環境が不安定で、同居家族を気にしながらの在宅勤務では仕事に集中することは難しい。

こうした中、自宅以外のテレワークとして、サテライトオフィスが注目されている。

資料2 テレワークのデメリット
資料2 テレワークのデメリット

サテライトオフィスの設置形態

サテライトオフィスとは、企業の本社や事業所等から離れた場所に設置されるテレワークのためのオフィスである。

サテライトオフィスは設置形態によって「自社専用型」と「共用型」の2つに分けられる。

「自社専用型」は設置、運営を自社で行う、自社及び自社グループ専用のオフィスである。例えば、全国展開している金融機関の中には、コロナ以前から働き方改革の一環として、自社社員向けのサテライトオフィスを開設しているところがある。支店の遊休スペースを活用して、本店や所属店まで通勤しなくても、自宅近くの支店で仕事ができるようにしている。新型コロナの感染拡大後は、サテライト拠点数を拡大し、社員のテレワークを支えているということだ。

「共用型」は、サテライトオフィス運営会社と契約し、複数の企業と共同で、通信環境やセキュリティが整えられたオフィススペースを利用するものである。複数の企業の社員が契約内容に応じて利用することから、「シェアオフィス」や「コワーキングスペース」等とも呼ばれている。

多様化するサテライトオフィス

最近では、ホテルや鉄道など、様々な業界がその特性を活かして、サテライトオフィス事業に参入している。

例えば、東京都では、コロナにより大きな打撃を受けたホテル業界団体と連携し、客室等をサテライトオフィスとして開放するサービスを展開するホテルと、テレワークの場を確保したい都内事業者をマッチングし、ホテルへの支援とテレワークを促進する取組をおこなっている(テレワーク促進に向けた宿泊施設利用拡大支援事業)。都ではさらにウェブサイトHOTEL WORK TOKYOを立ち上げ、エリアや利用料金、通信環境などの情報を参考にして、テレワークができるホテルを検索できるようにしている。

また、鉄道業界でも、駅直結あるいは駅の近くに郊外型のサテライトオフィスを設置して、沿線住民のテレワーク需要への対応をおこなっている。中でも注目されるのは子育て支援機能付きのサテライトオフィスである。託児スペースが併設されており、主に育児中の社員が必要に応じて利用できる。仕事場と託児スペースが隣接しているため、送り迎えに時間のロスがなく子どもの様子をみながら働くことができる。子どもと一緒にランチを食べたり、授乳もできる。子育てを大切にしながら、自分らしく仕事をしたいという人のニーズに対応したサテライトオフィスである。

地方型のサテライトオフィス

テレワークの拠点として、こうした社員の自宅近くの郊外に設置される郊外型サテライトオフィスの他に、もう一つ、地方に設置される地方型サテライトオフィスも注目されている。

例えば、都市部に本社がある企業が、地方企業との連携による新たなビジネスや事業拡大などの目的で、地方に設置するものである。地方人材の活用のみならず、地方移住を希望する社員の働き方の選択肢を広げ、地方創生や雇用促進が期待できる。そのため、総務省や地方公共団体では、こうした地方型サテライトオフィスを支援する事業を実施している(総務省「ふるさとテレワーク」「おためしサテライトオフィス」など)。

実際、地方公共団体が誘致または関与したサテライトオフィスは年々増えており、2019年度末の開設数は累計654か所となっている(総務省「地方公共団体が誘致又は関与したサテライトオフィスの開設状況調査結果」2020年10月)。若者を中心に、地方移住を希望する人が増えていることもあり、今後、地方でのサテライトオフィスの展開も注目される。

「働く場所」を自分で選べる時代に

新型コロナウイルス感染拡大防止のために要請されているテレワークであるが、今後も「ノーマル」の働き方として徐々に社会に浸透していくことが予想される。サテライトオフィスの場合でも、依然としてセキュリティ確保や社内コミュニケーションなど、対応すべき課題はある。

しかしサテライトオフィスの中には、勉強会や交流会などのイベントを通じて、利用者同士が積極的にコミュニケーションを図り、新たな人脈やビジネスチャンスを促す工夫をしているところもある。今後、新しい働き方として試行錯誤をしながらも、「働く場所」の選択肢の多様化を働く人の意欲を高め、新たなイノベーションにつなげることができれば、経済復興の原動力となるに違いない。

的場 康子


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

的場 康子

まとば やすこ

ライフデザイン研究部 主席研究員
専⾨分野: 子育て支援策、労働政策

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