武器になる経済指標 武器になる経済指標

利上げの効果を確認したFOMC

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月72,000円程度で推移するだろう

  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう

  • 日銀は政策金利を12月に1.5%とした後、27年末までに2.25%とするだろう

  • FEDはFF金利を、12月に4.25%として、その後は据え置くだろう

  • FOMCは大方の予想通り政策金利の据え置きを決定。FF金利(誘導目標上限値)は4.0%となった。この決定に対してクック理事とハマック・クリーブランド連銀総裁が共に25bpの利上げを主張して反対票を投じた。筆者は今回のFOMCを受けて12月の利上げを予想する。実体経済が予想以上に堅調であることを踏まえ、もはや金利据え置きはハト派過ぎると判断した。

  • 声明文では景気の総括判断を「堅調に拡大している(solid)」から「力強く拡大している(strong)」に上方修正した。これについてウォーシュ議長は、AI投資が急増するなか「企業の設備投資は2桁の伸びとなる可能性が高い」「雇用者数の増加ペースは2025年を上回っている」などと補足した。

  • 声明文におけるインフレと政策金利の判断については単に「より多くの情報が集まることで、委員会はインフレ率を目標である2%に速やかに戻すために適切な政策スタンスを決定できるだろう」とされた。口数の少ないウォーシュ氏を象徴する示唆に乏しい表現であるが、12月の利上げに向けた地均しをする含意があるように思える。なお、利上げを決めた9月FOMCでは「今回の政策措置は、インフレ率の2%目標へのより早期の回帰を後押しする(Today's policy action will support a timelier return to the Committee's 2 percent goal.)」であった。

  • 記者会見では「金融政策の処方薬が効き始めているというのが、FOMCの圧倒的な判断だ」、「金融緩和の度合いを一部取り除いた際、金融市場の状況への影響は想定通りだった」、「9月初め以降、テクノロジ⁠ー関連分野の内外で、金利が影響を及ぼしているのを見てきた」などと、既往の利上げによる経済活動への影響が観察されつつあることに言及があった。

  • 遅行指標である物価統計(PCEデフレーターやCPI)にその影響はまだ表面化していないものの、最近のクレジット市場における一部の新興AI企業の社債価格下落、或いは株式市場におけるAI・半導体株(SOX指数)の下落が「引き締め効果」の一部であるとの認識であろう。もちろん、長期金利の上昇・高止まりもそれに含まれると思われる。この点、筆者はハト派的であると感じた。

  • 今回新たに得られた情報としては、来年以降のFOMC運営に関するものがあった。ウォーシュ議長は、2027年は年8回のFOMCのうち1回を戦略策定に充て、政策変更の採決を行わない方針を示した。2028年にはそうした会合を2回設け、政策変更の機会を6回に減らすという。ウォーシュ議長は、予てから「毎回のFOMCで今月は利上げするか、据え置くか」という近視眼的な議論に距離を置きたいとの意向を示しており、この方針はそれに沿ったものであると理解される。

  • なお、政策変更の場を減らした事例としては、かつての日銀やECBがある。日銀は2015年まで金融政策決定会合を年14回開催し、それぞれ政策変更を議論していた。ECBも2014年までは(金融政策を議論する)理事会を年12回開催しており、2015年に現在の8回(6週間に一度)とした。筆者の知る限り、政策変更を議論する機会が減ったことで、実体経済や金融市場に有意な影響があったとの議論はない。

  • ただし、ウォーシュ議長はこれまで是とされてきた、金融政策に関する丁寧な情報発信をすることに異論を唱えており、その点で上記2中銀の事例と単純比較することはできない。日銀やECBは、会合は減らしても情報発信を削減することはなく、むしろ強化してきたように思える。それはFedも同様で、パウエル議長は従前に年4回だった記者会見を2019年からは年8回(=毎回のFOMC)に増やし、市場参加者との円滑なコミュニケーションに努めてきた。ウォーシュ体制でのFOMC運営の変更が実体経済や金融市場に与える影響を考察することは難しいが、強いて言えば、景気が急速に悪化する場合など、対応が後手に回る可能性が高まり、またそれに対する懸念が金融市場のボラティリティを増幅させる懸念がある。金融環境を引き締めたいFedにとってはむしろ好都合なのかもしれない。

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。