武器になる経済指標 武器になる経済指標

基調的物価上昇率2%到達後の金融政策

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月72,000円程度で推移するだろう

  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう

  • 日銀は政策金利を12月に1.5%とした後、27年末までに2.25%とするだろう

  • FEDはFF金利を、年内は4.0%で据え置くだろう

  • 日経新聞は10月22日に「日銀10月会合、連続利上げ見送りへ 2%物価目標は事実上到達」と題する記事で10月29~30日の金融政策決定会合で政策金利を据え置く方針であることを報じた。展望レポートでは、基調的な物価上昇率が2%に到達したことを記述するという。

  • 日銀は、これまで基調的な物価上昇率の2%到達時期を「2026年度後半から2027年度にかけて」と予想してきた。したがって、2026年度後半に突入するこの時期に2%到達の認識を示すことに違和感はない。とはいえ、これまで「表面的な消費者物価上昇率は2%を超えていても、基調的な物価上昇率は2%に到達していない」という認識が金融緩和度合いの調節(利上げ)をゆっくり進めることの理論的根拠となってきた以上、そうした認識変化は政策の局面が変わることを改めて印象付ける。

  • その上で10月会合の注目点を整理する。筆者は①米FOMCの結果、②高田委員と田村委員の投票行動、③浅田委員と佐藤委員の物価認識、④植田総裁の記者会見が重要と考える。

  • ①10月FOMCは利上げ見送りが中心的な予想となっており、筆者も見送りを予想する。FF金利先物から逆算した利上げ確率は7%程度と低水準にあり、さすがのウォーシュ議長もサプライズ利上げは選択しないだろう。9月FOMC後にジェファーソン副議長、ウォラー理事、ウィリアムズ・NY連銀総裁など中枢メンバーが連続利上げに積極的でない発言をしていることを踏まえれば、少なくとも12月までは利上げを待つと考えられる。なお、仮にFedがサプライズ利上げをした場合でも、日銀は様子見を選択すると予想される。日米金利差の拡大によって円安が進む可能性は否定できないが、現在の為替水準から判断すると、慌てて追随利上げする必要性は乏しいだろう。

  • ②利上げ見送りに対して、高田委員と田村委員が反対票を投じるか否かも注目したい。高田委員は、政策金利の据え置きに対して1月、3月、4月、7月の4回の会合で反対票を投じており、今回も利上げを主張するとみられる。田村委員は4月の据え置きに際しては利上げを主張して反対票を投じたものの、7月は賛成票を投じており、今回どう動くかは興味深い。仮に田村委員も利上げを主張するならば、次回以降の利上げ観測を強める要因になろう。一方で、声明文等における「物価の基調判断」に対する反対票は取り下げる公算が大きい。

  • ③基調的な物価上昇率が2%に到達したとの認識に対して、浅田委員と佐藤委員が反対票を投じる可能性はある。両委員は、日本経済の足腰の弱さを理由に9月会合で利上げに反対票を投じた経緯があり、今回もハト派色を前面に押し出す可能性がある。仮に反対票が投じられれば、円安を誘発し得る。

  • 最後に、植田総裁の記者会見はいつもながら言質を与えずに終わると予想されるが、3~4ヶ月に一度の利上げが標準になりつつあることは確認できるだろう。すなわち、今回の利上げ見送りは、飽くまで時間調整を目的とするもので、連続利上げを選択しなくてはいけないほど物価の基調が上振れているわけではない、との認識を示すだろう。間接的に12月ないしは1月の利上げを示唆すると考えられる。

  • なお、金融政策を読むうえで重要となる2027年春闘が10月22日に実質的に開幕した。連合は要求賃上げ率を「6%中心、5%以上」、ベア相当部分を「4%中心、3%以上」にするとした。定期昇給を含んだ数値は、2026年春闘で掲げた「5%以上」よりも表現を強め、目標を高めた格好となっている。ここから判断すると、日銀が重視している毎月勤労統計(共通事業所版)における一般労働者の所定内給与の上昇率は、現在の3%弱から加速する可能性がある。毎月勤労統計で観測される賃金上昇率は、過去数年、製造業の存在感が強い春闘賃上げ率の数値(2026年はベア相当分が3.5%)ほどには高まらない傾向があることを勘案する必要はあるが、利上げが続く可能性を高めると判断される。

藤代 宏一


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