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2026.10.22
アジア経済
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フィリピン中銀、原油高とペソ安の「二重苦」に直面し、大幅利上げに舵
~インフレ圧力の高まりを受けて利上げ幅を拡大、金融引き締めの長期化も~
西濵 徹
- 要旨
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- フィリピン中銀は、10月22日の定例会合で政策金利を50bp引き上げ、5.50%とすることを決定した。4会合連続の利上げとなり、今回は利上げ幅を拡大するなど、金融引き締めの度合いを強化した。背景には、イラン情勢の悪化に伴う原油高や、金融市場における通貨ペソ安の進行を受けてインフレ圧力が強まったことがある。9月のインフレ率は前年比+7.2%と中銀の目標を大幅に上回っている。中銀はインフレ率が2027年も高水準で推移し、2028年に目標中央値の3%に近付くとの見通しを示した。レモロナ総裁は、今回の利上げが為替安定を目的とするものではないと強調する一方、追加利上げや緊急利上げの可能性を排除しない姿勢を示した。先行きもイラン情勢の不透明感やペソ安圧力が続く可能性があり、さらなる金融引き締めを迫られる展開も予想される。
フィリピン中央銀行は、10月22日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利である翌日物リバースレポ金利を50bp引き上げ、5.50%とすることを決定した。同行は、4月の定例会合で約2年半ぶりの利上げに舵を切り、その後も6月、8月の定例会合で追加利上げを実施しており、今回で4会合連続の利上げとなる。さらに、今回は利上げ幅を拡大させるなど金融引き締めの度合いを強めており、政策金利も2025年6月以来の高い水準となった。
背景には、イラン情勢の悪化による原油高が世界的なエネルギーインフレを招くなか、同国は原油需要の9割以上を輸入に依存しており、その影響に晒されやすいことがある。直近9月のインフレ率は前年比+7.2%と中銀の目標レンジ(2~4%)を大きく上回っている(図1)。さらに、原油などエネルギー資源価格の高止まりは輸入額の増加を通じて対外収支を悪化させており、金融市場では通貨ペソの対ドル相場が最安値を更新するなど、輸入物価の押し上げがインフレ圧力を一段と増幅させる懸念も高まっている。このため、中銀としては物価安定に向けた『より強力な』対応を示す必要があるとの判断から、今回は市場予想を上回る大幅利上げに舵を切ったと考えられる。

会合後に公表した声明文では、先行きの物価動向について「今後数ヵ月は一段の加速が見込まれる」としたうえで、「インフレ率は2027年も高水準で推移し、2028年には目標の中央値(3%)に近付く」との見通しを示した。さらに、「コアインフレ率も上昇が予想され、潜在的なインフレ圧力の高まりを示唆している」との見方を示した。その理由として、「イラン情勢の再燃による原油価格の上昇」、「交通運賃の上昇によるインフレの上振れリスクが高まっている」ほか、「エルニーニョ現象による農業生産や価格へのリスク」を挙げた。一方で、景気動向について「先行きは財政支援による回復が見込まれる」との見通しを示した。
今回の決定については「インフレ圧力の高まりと、さらなる上振れリスクに対して強力な政策対応の必要性を認識した」との考えを示した。先行きについて「今回の対応が金融環境を適切に抑制的なものにする」、「副次的な影響を含めてインフレ期待をしっかりと抑える」との見通しを示した。また、先行きの政策運営については「物価安定という主要任務に基づいて、インフレ率を3%に戻すべくあらゆる措置を講じる用意がある」と過去数会合と同じ文言を載せており、追加利上げに含みを持たせた。
会合後の記者会見に臨んだレモロナ総裁は、物価見通しについて「これまでの想定に比べて悪い」との見方を示した。今回の決定を受けた政策スタンスについて「抑制的であるが、十分に抑制的であるかは定かでない」と追加利上げに含みを持たせた。今回の利上げについて「ペソ相場の安定を目的としたものではない」、「われわれは多少為替介入を実施しているが、相場の乱高下を防ぐことを目的としたもの」として、為替安定のための利上げではないと付言した。とはいえ、「ペソ安はインフレを招く恐れがあり、懸念している」と述べるなど、その動向を注視する姿勢をみせた(図2)。先行きの政策運営について「さらなる利上げの可能性を排除しない」、「利上げ幅については25bpか50bp、それ以上かは言えない」としつつ、「緊急利上げの必要性も議論された」とした。こうした姿勢は、中銀が切迫した状況に直面していることを示唆している。イラン情勢は見通しが立ちにくく、ペソ相場についても下落圧力に晒される展開が続く可能性があり、その動向には注意が必要である。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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