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2026.09.08
日本経済
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実質賃金は改善続くも、先行きは物価上振れが重石に(26年7月毎月勤労統計)
~夏のボーナスは明確に増加、冬も増加の公算大~
新家 義貴
- 要旨
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- 2026年7月の毎月勤労統計では、現金給与総額が前年比+4.7%と強い結果となったが、共通事業所ベースでは同+2.8%であり、本系列の伸びは割り引いてみる必要がある。もっとも、共通事業所ベースでも名目賃金は堅調に増加し、実質賃金もプラスを維持していることから、所得環境の改善は続いている。良好な結果と判断して良い。
- 共通事業所ベースの所定内給与は前年比+3.0%と、6月と同じ高い伸びを維持した。一般労働者は同+2.7%、パートタイム労働者は同+5.4%。春闘賃上げの反映や人手不足を背景に、賃金の基調は引き続き良好である。
- 特別給与は共通事業所ベースで同+2.7%となった。6月に同+7.1%と急増した後で反動が懸念されていたが、7月も増加が続いた。6、7月を均しても良好で、2026年夏のボーナスは前年を明確に上回ったと評価できる。好調な企業収益や人手不足などが背景にある。
- 名目賃金は今後も高めの伸びを維持するとみられる一方、物価上昇率は秋以降高まる可能性が高く、26年末から27年初にはCPIコアが前年比で+3%を窺う展開になると予想される。年末にかけて、物価上昇率の高まりが実質賃金を再び下押しするリスクに注意が必要であり、一時的に実質賃金がマイナスになる可能性も否定できない。
1. 本系列の結果は割り引いて見る必要があるが、全体として概ね良好な内容
2026年7月の毎月勤労統計(厚生労働省)は、名目賃金、実質賃金ともに良好な結果となった。所定内給与が高い伸びを維持するなか、夏のボーナスも明確に増加し、賃金全体を押し上げている。
現金給与総額は前年比+4.7%となった。6月の同+4.0%から伸びが拡大し、非常に高い伸びとなっている。名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金も前年比+2.4%となり、6月の同+2.2%からプラス幅が拡大した。実質賃金は2026年入り後、プラス基調で推移しており、所得環境の改善が続いている。
なお、報道等で言及されることの多いこの本系列は、調査対象事業所の部分入れ替えやベンチマーク更新等の影響を受けやすく、月次の賃金動向の基調を判断するうえでは必ずしも適さない。そうした観点からは、1年前と当月の双方で回答している調査対象のみに限定して集計した「共通事業所」ベースの前年比を併せて確認することが望ましい。
この共通事業所ベースでみると、7月の現金給与総額は前年比+2.8%となった。一般労働者は同+2.7%、パートタイム労働者は同+5.1%である。本系列の+4.7%と比べれば伸びは低く、本系列の高い伸びをそのまま賃金の基調とみることには慎重さが必要だろう。一方、共通事業所ベースでも現金給与総額は3%近い伸びを維持しており、賃金の基調は引き続き良好である。
なお、共通事業所ベースの現金給与総額を「持家の帰属家賃を除く総合」で実質化すると、7月の実質賃金は前年比+0.6%となる。本系列の+2.4%ほどの強さではないものの、実質賃金はプラス圏を維持しており、家計の実質購買力は引き続き改善していると評価できる。
2. 所定内給与は着実な増加が続く
所定内給与(共通事業所ベース、以下同じ)は前年比+3.0%と、6月と同じ高い伸びを維持した。内訳では、一般労働者が前年比+2.7%、パートタイム労働者が同+5.4%となった。パートタイム労働者の伸びが目立つものの、一般労働者についても+2%台後半の増加が続いており、賃金の基調は良好である。
なお、本系列の所定内給与は前年比+4.1%と大幅に伸びているが、共通事業所ベースでは+3.0%である。本系列の数字だけをみれば賃金上昇率が一段と加速したようにみえるが、共通事業所の動きを踏まえれば、賃金の基調としては前年比+3%前後の高い伸びが続いているとみるのが妥当だろう。
特に強いのがパートタイム労働者であり、共通事業所ベースでも所定内給与が同+5.4%となっている。最低賃金引き上げの効果に加え、深刻な人手不足を背景に、企業が人材確保のため時給を引き上げていることが影響しているとみられる。
所定内給与増加の背景にあるのが、2026年春闘で実現した高い賃上げである。連合の春闘最終集計では、賃上げ率が5.01%となった。歴史的な賃上げとなった2025年春闘からはやや鈍化したものの、それでも5%台の高い賃上げが実現した。また、組合員数300人未満の組合では4.69%と、前年の4.65%から小幅ながら伸びが拡大した。上昇率は大企業に及ばないものの、中小企業でも人材確保の観点から高い賃上げが実施されている。
所定内給与は、今後も高めの伸びを維持する可能性が高い。春闘賃上げの反映が8月にかけてさらに進むことに加え、人材の確保・定着のための賃上げも続ける必要がある。当面、共通事業所ベースの所定内給与は、前年比+2%台後半から+3%程度の高い伸びで推移すると予想される。
3. 夏のボーナスは明確に増加。冬も増加の公算大
6月に続き、7月も夏のボーナスの支給が多い時期に当たる。共通事業所ベースの特別給与は6月が前年比+7.1%、7月が同+2.7%と増加が続いた。特別給与は支給時期の違いによって月ごとの振れが大きいため、6月の急増の後、7月に反動で落ち込むことを懸念していたが、7月もプラスを維持している。6月と7月を均してもはっきりプラスであり、2026年夏のボーナスは明確に増加したと評価してよい。
夏のボーナス増加の背景には、底堅い企業収益がある。中東情勢の悪化や資源価格上昇が企業活動の重石となるなかでも、企業収益は全体として高い水準を維持している。企業はこれまでのコスト上昇をある程度販売価格に反映できており、賃金や賞与を引き上げる余力は保たれているとみられる。
加えて、人手不足の深刻化もボーナスを押し上げる要因になっている。人材の確保や定着のためには、月例給与だけでなく賞与を含めた処遇改善が重要になっている。物価上昇が続くなか、家計負担への配慮から従業員への還元を強める必要性も高い。2026年春闘では月例給与だけでなく、一時金でも増額回答が目立っており、こうした企業の前向きな姿勢が夏のボーナスに反映されたとみられる。
冬のボーナスについても前年を上回る可能性が高いとみている。中東情勢を巡る不透明感は残るものの、これまでのところ企業収益への影響は限定的であり、収益環境は良好である。人手不足を背景とした処遇改善の必要性も引き続き強く、企業が賞与を抑制する状況にはない。今後、資源価格の高止まりや景気減速によって企業収益が大きく悪化しない限り、冬のボーナスも前年を上回る可能性が高いだろう。
夏のボーナスの増加に続いて冬のボーナスも増加すれば、所定内給与の高い伸びと相まって家計所得を押し上げ、個人消費を下支えする材料になるだろう。
4. 物価上昇が懸念材料。秋以降に鈍化・下振れリスク
以上を踏まえると、7月の毎月勤労統計は総じて良好な結果だったと評価できる。本系列の現金給与総額の前年比+4.7%という数字は割り引いてみる必要があるものの、共通事業所でみても同+2.8%と良好な数字であり、所定内給与も同+3.0%と高い伸びを維持している。夏のボーナスも6、7月ともに増加しており、賃金上昇の基調は強いままである。
今後も実質賃金のプラス基調が続くかどうかは、名目賃金の底堅さに加え、物価がどの程度で推移するかに左右される。名目賃金については、2026年春闘の高い賃上げや人手不足を背景に、目先大きく崩れる可能性は低い。所定内給与は当面、前年比+2%台後半から+3%程度の高い伸びを維持するとみられる。
一方、年末にかけては物価上振れによる実質賃金の下振れリスクに注意が必要である。8月の東京都区部CPIでは、政府による電気・ガス料金支援が下押しとなるなかでも、日用品やサービス価格に強さがみられ、物価上昇圧力が続いていることが確認された。先行きも、食料品や日用品を中心に既往のコスト上昇の価格転嫁が進むことや電気・ガス代の上昇などから、物価は秋以降伸びを高め、CPIコアは26年末から27年初にかけて前年比+3%を窺う展開になることが予想される。
所定内給与が前年比+2%台後半から+3%程度の伸びを維持したとしても、物価上昇率が同程度まで高まれば、実質賃金には大きな下押し圧力がかかる。実質賃金が再びマイナスに転じる可能性も否定できないだろう。
このように、実質賃金改善の持続性は引き続き物価次第である。7月の毎月勤労統計は、所得環境の改善が続いていることを示す前向きな内容だったが、その改善が今後も続くかどうかは、賃金の伸びが高めで推移するか、そして物価上昇率がそれを下回る状態を維持できるかに左右される。年末にかけては、物価上昇率の高まりが実質賃金を再び下押しするリスクに注意が必要だ。
新家 義貴
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。





