武器になる経済指標 武器になる経済指標

ヒントは期待できないジャクソンホール 今後は米住宅市場に注目?

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月72,000円程度で推移するだろう
  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう
  • 日銀は政策金利を9月に1.25%とした後、27年末までに2.25%とするだろう
  • FEDはFF金利を、年内は3.75%で据え置くだろう
  • 8月入り後、米国の利上げ観測が後退している。これは世界的な株価上昇を促す重要な要素であろう。また日本においてはドル円の円安に歯止めをかけ得る。FF金利先物から逆算した9月FOMCにおける利上げ確率は、7月29日のFOMC直前において99%であった。その後、7月雇用統計で雇用者数の弱さと、平均時給の上昇率鈍化が示され、更に7月CPIでインフレ率の鈍化傾向が確認されたことから、8月25日時点で54%まで低下した。市場参加者が織り込む年内の利上げ回数は0.98回と、遂に1回を割り込んだ。筆者は、年内の利上げは見送られると予想している。

  • 年内の金融政策について、日本時間8月28日の23時に予定されているウォーシュ議長のジャクソンホール講演は収穫に乏しいものとなろう。毎年恒例のFRB議長によるジャクソンホール講演は「8月FOMC」の性格を有することもあるが、ウォーシュ議長は短期的な金融政策について多くを語らない姿勢を固持しており、ジャクソンホール講演でもそれが貫かれると思われる。ましてや今年のシンポジウムの主題は「金融イノベーション――決済と政策への含意(Financial Innovation: Implications for Payments and Policy)」であり、ステーブルコイン、暗号資産、デジタル通貨といった革新的な資産を既存の金融システムとどういった形で融合させるか等が議論される場である。足もとの金融政策に対する言及は多くないだろう。ウォーシュ議長は、地区連銀総裁・理事が金融政策について頻繁に見解を示すことにも否定的であるから、自らがFOMC後の記者会見以外の場において、金融政策について言及するとは考えにくい。

  • 上述のとおり筆者は、インフレ関連指標の軟化傾向が続くことで利上げ観測が後退し、米金利が低下に向かうと予想している。政策決定にあたって最も重要なのはインフレ率であるが、その他の要素として住宅関連指標が存在感を増してくる可能性があるとみている。利上げを主張するタカ派寄りのFed高官は、現在の金融環境が十分に引き締め的でないことを理由に掲げているが、住宅関連指標は総崩れとも言うべき状況にあり、ここに引き締め効果が見て取れる。

  • 8月25日に発表された7月の米新築住宅販売件数は前月比▲10.5%、60.7万件(年率)と弱かった。また同日発表された7月の住宅着工許可件数(確報)は前月比+4.3%と増加も、水準は143.3万件(年率)と低い。この間、住宅建設業者の景況感を示すNAHB住宅市場指数は8月も35と低空飛行が続いている。そして最も弱さが目立つのが中古住宅販売件数であり、過去3年程度は400万件(年率)割れを巡る攻防を続けている。販売価格中央値は前年比+2.0%と落ち着いているものの、住宅ローン金利の高止まりが打撃となり、買い手にとって手が届きにくい状況にある。言わずもがな、住宅市場は金利に敏感な部門である。今後、インフレ率が鈍化すれば、景気の下振れに配慮する観点から、こうしたデータがFed高官に注目されるのではないか。

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藤代 宏一


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