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2026.08.20
米国経済
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米国:高い不確実性の中、7月鉱工業生産は拡大継続
~自動車低下(▲2.1%)も、AI関連や他業種の好調がカバー~
桂畑 誠治
1.生産は拡大も市場予想を下回る
26年7月の米国鉱工業生産は、前月比+0.2%(前月:+0.3%)と市場予想中央値の同+0.3%をわずかに下回った。イランを中心とした中東情勢の緊迫化に伴い先行きへの不確実性は高いものの、足元の生産拡大のモメンタムは維持されており、生産活動は総じて活発化していると評価できる。
公益事業は、7月の全米平均気温が過去最高水準となったことから同+0.5%(前月:+0.1%)とプラス幅を拡大した。一方、鉱業部門は、前月比+0.2%と6月の同+0.3%からプラス幅を縮小した。地政学リスクに伴うエネルギー価格の上昇を受けて石油・天然ガス掘削が大幅な伸びを記録したものの、金属採掘の低迷や原油抽出自体の調整がこれを相殺した。さらに、製造業部門は、同+0.2%(前月:+0.3%)と鈍化したが、市場予想中央値と一致した。自動車・同部品部門が直近まで3カ月連続で高い伸びとなった反動のほか、夏季定期メンテナンス・モデル切り替えに伴う一時休止の集中、電子部品・サプライチェーンのボトルネック等を背景に同▲2.1%とマイナスに転じ、全体を押し下げたものの、ハイテクが力強い伸びを維持した。

2.AI関連が拡大傾向維持と製造業の二極化
製造業全20業種のうち、7月に拡大したのは12業種と6月と同数だった。プラス成長となった業種では、木材製品(+2.4%)、コンピューター・電子(+1.9%)、一次金属(+1.4%)、航空宇宙・その他輸送機器(+1.4%)、電気設備・機器・同部品(+1.3%)、加工金属(+1.2%)、一般機械(+0.8%)、繊維(+0.8%)、家具・同関連製品(+0.7%)、その他耐久財(+0.4%)、プラスチック・ゴム(+0.2%)、石油・石炭製品(+0.2%)と続いた。
一方で、印刷・同サポート(▲2.5%)、アパレル・皮革(▲1.9%)、食品・飲料・たばこ(▲0.7%)、紙・パルプ(▲0.7%)、その他製造業(▲0.2%)、非鉄(▲0.2%)、化学(▲0.2%)といった素材・消費財関連を中心に低下が目立ち、自動車・同部品(▲2.1%)を含めた計8業種は縮小を余儀なくされた。このように、7月単月では半導体やAIインフラ関連が力強い一方で、個人消費の選別化や生活防衛意識による消費財や非耐久財が鈍化するなど製造業の二極化が示された。
3.鉱工業生産の回復トレンドは鈍化、設備稼働率は依然として低水準
生産の基調を3ヵ月移動平均・3ヵ月前対比年率で確認すると、7月の鉱工業全体は公益のプラス転換にもかかわらず、製造業、鉱業の伸び鈍化によって同+2.8%(前月+4.2%)へと減速している。鉱業は+1.0%(同+2.9%)へと減速した。また、製造業生産は+3.4%(同+5.2%)と鈍化したが高い伸びを維持した。このベースでは、自動車・同部品も同+15.1%(同+20.4%)と高い伸びを維持したほか、ハイテク関連が+23.4%(同+14.5%)と増勢を強め全体の底上げに寄与している。
一方、生産能力の拡大が続くなかで生産が小幅上昇したことで、7月の設備稼働率は鉱工業で76.3%(前月76.2%)、製造業が76.0%(前月75.9%)とそれぞれわずかに上昇した。ただし、これらは依然として長期平均(1972~2025年平均)をそれぞれ3.1ポイント、2.2ポイント下回っており、足元の生産の勢いは強いものの、サプライチェーンにおける生産能力の余力は依然として大きいままである。この稼働率の余裕は、サプライチェーンの供給制約や国内生産が逼迫しておらず、経済の過熱感が抑えられていることを示唆している。市場ではインフレ再燃に伴う利上げが強く警戒されているものの、生産・稼働率の面からは直ちに需要超過による過熱を示唆するものではなく、金融引き締め加速への過度な懸念を和らげる材料といえる。
4.2026年通期の製造業生産の加速予想
26年通期の製造業生産の見通しについては、今後さらなる加速が予想される。足元の前年同月比の伸びは製造業全体で+1.2%(前月+1.5%)と鈍化したが、通期では前年比+1.5%(25年+0.8%、24年▲1.0%)に達する見込みである。これは、2025年に成立した「OBBBA (One Big Beautiful Bill Act) 」による各種減税や投資促進策の効果が本格化し、個人消費の底上げや企業の設備投資拡大を直接的に支えるためである。さらに、旺盛なAI需要の急拡大や、製造業の国内回帰(リショアリング)、地政学リスクの長期化に伴う軍事装備品の需要増、そして歴史的に低い水準にある在庫を背景とした意図的な在庫補充活動(リストッキング)などが、今後の米国製造業を強力に牽引していくものと期待される。



桂畑 誠治
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 桂畑 誠治
かつらはた せいじ
-
経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済
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