武器になる経済指標 武器になる経済指標

7 月米CPI 年内利上げなしを正当化

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月72,000円程度で推移するだろう
  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう
  • 日銀は政策金利を10月に1.25%とした後、27年末までに2.0%とするだろう。
  • FEDはFF金利を、年内は3.75%で据え置くだろう。
  • 8月12日に発表された米7月CPIは市場予想に概ね沿った結果となり、安心感のある結果であった。インフレの勢いは想定の範囲内であり、利上げ観測を後退させるものであった。Fedの年内利上げ観測は燻ぶるものの、物価と表裏一体の関係にある賃金上昇率は落ち着いている。これらを踏まえれば、年内の利上げは見送られる可能性が高い。今回の結果を受けてFF金利先物が織り込む9月の利上げ確率は5割弱から4割弱へと低下した。依然として年内1.1回分の利上げが織り込まれた状態にあるものの、今後そうした予想は利上げなしの方向へ修正されていく可能性が高いとみる。FF金利先物が織り込む利上げ確率は、ウォーシュ議長が多くを語らないため、サプライズ利上げに対する警戒感が含まれている可能性があろう。

  • 7月CPIの数字を整理すると、ヘッドラインCPIは前月比+0.1%、前年比+3.4%となり市場予想に一致した。前年比では6月の+3.5%から減速。4月に急伸したエネルギーは前月比▲1.5%、前年比+14.7%へと鈍化した。この間、食料品は前月比+0.1%、前年比+2.9%と落ち着きを維持しており、この点は朗報であった。ヘッドラインの高止まりは、引き続き原油高・ガソリン高の影響で多くを説明できる。コアCPIは前月比+0.2%、前年比+2.5%へと減速した。瞬間風速は、前月比年率が+2.6%(6月:▲0.2%)、3ヶ月前比年率が+1.6%(同+2.3%)、3ヶ月前比年率・3ヶ月平均が+2.4%(同+2.9%)と明確に減速している。現時点でエネルギー価格上昇はコア項目にさほど波及していない。

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  • コアCPIを財とサービスに分解すると、コア財が前月比+0.2%、前年比+0.8%と減速基調にあり、コアサービスは前月比+0.2%、前年比+3.0%と鈍化している。コア財は新車、中古車価格が落ち着くなか、医療ケア財(処方薬など)が下落した。コアサービスは家賃が前月比+0.1%へと減速したほか、宿泊設備が同▲2.8%と大きく下落、自動車保険も同▲0.3%と3ヶ月連続で下落した。コア財、コアサービスともに現時点で加速の気配に乏しい。また、家賃を除くコアサービス、いわゆるスーパーコアも前月比+0.2%、前年比では+2.8%と減速基調にある。ここで企業の価格設定行動を読む観点からNFIB中小企業調査に目を向けると、7月調査では3ヶ月先の販売価格計画を問う項目が落ち着いており、やはりインフレ再加速の兆候に乏しい。

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  • この間、サービス価格の軌道を決める平均時給が安定していることを再認識する必要があろう。①雇用統計で示される数値は前年比+3.2%と下向き基調にあり、コロナ期前とさほど変わらない。また②アトランタ連銀が算出する賃金トラッカーで観察されていた転職者の賃金上昇率も6月時点で前年比+4.1%と安定を取り戻している。それに加えて③転職活動の活発度合いを示す自発的離職率が低水準にあること、④NY連銀が調査する消費者の予想物価上昇率が安定していることなどを踏まえれば、2022年のようなインフレに発展する蓋然性はかなり低いと判断される。

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藤代 宏一


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