武器になる経済指標 武器になる経済指標

10 月利上げが現実味を帯びてきた

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月72,000円程度で推移するだろう

  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう

  • 日銀は政策金利を26年12月に1.25%とした後、28年央までに2.0%とするだろう。

  • FEDはFF金利を、年内は3.75%で据え置くだろう。

  • OIS金利から逆算した10月の金融政策決定会合における日銀の利上げ確率が84%まで高まった。原油価格が落ち着いていた7月1日時点でさえ58%と比較的高水準であったが、その後の原油価格上昇を受けて、日銀が10月にも動くとの見方が強まってきた。対象期間を12月まで拡張するとほぼ完全に1回分の利上げが織り込まれている。

  • この間、予想ターミナルレートの代理指標である2年先1年金利は2.1%を超える水準で推移している。日銀の政策対応がビハインド・ザ・カーブに陥り、急速かつ大幅な利上げを迫られる状況を市場参加者が想定するには至っていないものの、粘着的なインフレに対して日銀が利上げを継続するとの見方が強まっていると読むことができる。また、この間に進展した食料品の消費税減税とその終了を見据えた給付の開始など、一連の景気対策が基調的なインフレを加速させるとの予想も芽生えつつあるようにみえる。

図表
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  • 10月までの焦点は、やはり物価であろう。この点、通常であれば消費者物価が最重要指標となるが、現在はガソリン価格(暫定税率廃止とガソリン価格を170円程度に抑える措置)と電気・ガス代(4月検針分で終了後、7月に再開)が政府の補助等によって抑えられており、実勢が把握しにくい状態にある。したがって、当面はノイズが混入しにくい企業物価指数、或いはアンケート調査が重要になろう。なお、本日発表された6月の消費者物価(除く生鮮食品)は前年比+1.6%であった。

  • 他方、国内企業物価は6月に前年比+7.1%と伸びを高めている。3月以降の原油高によって円建て輸入物価が同+29.7%と急上昇し、それに伴うコスト増が国内企業物価に波及したことが見て取れる。こうした動きについて、6月の金融政策決定会合における「主な意見」では「企業間取引におけるやや速いスピードでの価格転嫁が、消費者段階における幅広い品目の価格上昇に波及していく可能性がある」「輸入物価を起点に価格転嫁が早まる可能性が高い」など警戒感を示す声が記載されていた。

図表
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  • 日銀短観でも、企業の価格設定行動が強まっていることが明らかになっている。6月調査における企業のインフレ見通しは、1年後の販売価格見通しが+3.7%へと跳ね上がった。原油高に伴うコスト増を価格転嫁する計画が浮き彫りになった形だ。他方、意外なことにも、企業が予想する日本全体の物価上昇率は+2.7%でさほど変化はなかった。原油価格(≒仕入価格)がある程度落ち着くとの想定があるのかもしれない。ここから判断すると、企業は「平均以上」あるいは「コスト以上」の値上げを計画している、と読むことができる。日銀短観9月調査でこうした強気な価格戦略が示されるようであれば、10月の利上げがより現実味を帯びてくるだろう。

図表
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  • それでも筆者は現時点で12月の利上げ予想を維持する。やはり「半年に1度の利上げ」という暗黙の前提を崩すには、賃金・物価上昇率の明確な上振れといった根拠が必要になろう。物価の実勢が把握しにくいなか、現時点で賃金上昇率は3%程度であり、2022~23年に米国が経験したような高い伸びには至っていない。むろん、為替動向次第ではあるが、12月まで待つ時間的余裕はあるように思える。

藤代 宏一


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