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2025.12.19
アジア経済
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台湾中銀、景気見通しを上方修正のうえ、7会合連続で金利据え置き
~AI関連需要、米関税政策、中国の景気減速リスク、地政学リスクに加え、台湾ドル相場にも要注意~
西濵 徹
- 要旨
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台湾中銀は、12月18日の定例会合で政策金利を7会合連続で2.000%に据え置いた。過去実施した断続的な利上げの効果もあり、足元のインフレは落ち着いた動きをみせる。さらに、住宅ローン規制や預金準備率引き上げなども奏功して、急上昇した不動産価格も落ち着きを取り戻している。したがって、追加的な金融引き締めに動く必要性は後退しているとみられる。
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台湾経済は輸出依存度が高く、米国向け輸出比率も大きいためトランプ関税の影響が懸念される。しかし、足元ではトランプ関税の本格発動を前にした輸出の駆け込みなどを背景に、景気は想定以上に堅調な動きが続いている。先行きは輸出に駆け込みの反動が出ることが懸念されるものの、輸出受注は堅調に推移するなど底堅さを示唆する。よって、中銀は当面、様子見姿勢を維持したと考えられる。
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中銀は声明文で、世界経済はAI関連需要を追い風に緩やかに成長している一方、米国の関税政策や中国本土の景気減速リスク、地政学リスクなど不確実性が高まっていると指摘した。台湾経済については、成長率見通しを上方修正、インフレ率見通しを下方修正し、金利据え置きが妥当と判断したとしている。
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楊金龍総裁は今回の決定が全会一致であるとしたうえで、インフレが落ち着いている限り追加利上げは不要との見解を示した。一方で、米国の関税政策や中国景気、為替動向などのリスクを注視し、必要に応じて柔軟に政策対応する姿勢を強調した。ただし、台湾ドル相場の行方は金融政策の選択肢を縛るであろう。
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台湾(中華民国)中央銀行は、12月18日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利を7会合連続で2.000%に据え置くことを決定した。台湾においてはここ数年、コロナ禍後の経済正常化に加え、商品市況の高止まりや米ドル高による台湾ドル安で輸入物価が上昇し、インフレは高止まりしてきた。このため、中銀は2022年初めから物価と為替の安定を目的とする断続的な利上げを実施するとともに、24年6月からは政策金利を据え置き、引き締め姿勢を維持してきた。結果、インフレ率は2022年半ばには一時14年ぶりの高水準となったものの、その後は鈍化に転じた。そして、直近11月は前年比+1.23%と4年半ぶりの低水準となるなど落ち着きを取り戻している。一方、台北市を中心とする不動産価格は2023年以降に上昇ペースを強めて過去最高値を更新し、新たなインフレ要因への懸念が高まった。こうしたことから、中銀は2024年6月の定例会合では政策金利を据え置く一方、特定地域に対する住宅ローン規制強化のほか、預金準備率を25bp引き上げる事実上の引き締めに動いている。その後も、中銀は住宅ローン規制の一段の強化に加え、預金準備率を引き上げる対応をみせた。こうした対応が奏功し、台北市周辺の不動産価格は横這いで推移するなど落ち着きを取り戻している。よって、中銀にとっては一段の金融引き締めに動く必要性は後退しているとみられる。


台湾経済はアジア新興国のなかでも構造面で輸出依存度が相対的に高いうえ、輸出全体に占める米国向け比率も約4分の1を占めるほか、対米輸出額は名目GDP比で18%に達するため、いわゆる『トランプ関税』による悪影響が懸念された。トランプ米政権は当初、台湾に対する相互関税の税率を32%としたものの、その後の協議を経て20%と、ASEAN(東南アジア諸国連合)主要国とほぼ同水準に引き下げられている。このところの台湾景気を巡っては、トランプ関税の本格発動を前にした輸出駆け込みの動きも追い風に、7-9月の実質GDP成長率も前期比年率+7.02%と堅調な推移をみせており、1-9月までの経済成長率は前年同期比+7.2%と2024年通年(+5.3%)を上回る伸びとなっている。なお、先行きについては駆け込みの動きが出た輸出に反動が出ることが見込まれるほか、雇用や設備投資にも影響を与える可能性は残る。しかし、足元の景気が想定以上に強含みする動きが続いているほか、輸出受注も堅調な推移をみせるなど、当面の輸出の堅調さを示唆しており、中銀は様子見姿勢を維持したと考えられる。


会合後に公表した声明文では、世界経済について「9月会合以降、AI(人工知能)などの発展を追い風に生産拡大の動きが続いて緩やかに成長している」とする一方、先行きは「主要国は新興技術への投資拡大や拡張的な財政政策を続ける一方、米国の関税政策は世界貿易の足かせとなる可能性がある」としたうえで「AI産業の動向、米国経済や貿易政策の行方、中国本土景気の動向、主要国中銀の政策運営、地政学リスク、気候変動などに伴う不確実性が増大する可能性がある」との認識を示した。一方、台湾経済について「AI関連需要の旺盛さが輸出や民間投資を押し上げるとともに、民間消費も回復して想定を上回る好調さが続いている」としたうえで、経済成長率も「今年は+7.31%となり、来年は+3.67%に鈍化する」と9月時点(今年は+4.55%、来年は+2.68%)からともに上方修正している。また、物価について「足元の鈍化の動きは物品税の免除や減税に加え、食料品価格の安定が追い風になっている」としたうえで、インフレ率も「今年は+1.66%となり、来年は+1.63%に鈍化する」と9月時点(今年は+1.75%、来年は+1.66%)からともに下方修正する一方、先行きは「商品価格や国内のサービス物価、天候要因に左右される」との見方を示している。今回の決定について「世界経済や金融市場の見通しを巡る不確実性や、米国経済や貿易政策の行方が台湾経済に及ぼす潜在的影響を慎重に検討し、金利を据え置くことが経済、金融の健全な発展の維持に寄与すると判断した」としている。そして、先行きの政策運営については「AI関連産業の動向、米国経済や貿易政策の影響、中国景気の減速リスク、主要国中銀の金融政策、地政学リスク、異常気象といった不確実要因が台湾経済や金融動向、物価に与える影響を注視する」としたうえで、「金融市場と物価の安定と景気下支えを図るべく必要に応じて適時適切な調整を図る」との従来からの見方を維持した。
会合後に記者会見に臨んだ中銀の楊金龍総裁は、今回の決定について「全会一致で決定された」としたうえで、「経済や金融の安定に資するものと考えている」とした。その上で、「米国の関税政策や中国本土の景気減速リスク、地政学リスクを注視しつつ、適時適切に調節を行う」としつつ、足元の政策運営について「適切であり、引き締めながらも柔軟な基調を維持している」、「来年もFRB(米連邦準備制度理事会)の政策運営を注視する」との認識を示した。なお、このところの金融市場において台湾ドル安圧力が掛かるなど資金流出圧力に直面していることについて「AIバブルへの警戒感が影響している可能性があるが、そうした修正の動きがあることは正常なこと」との見方を示している。そして、先行きの政策運営について「インフレが落ち着いた推移をみせれば、追加利上げを行う根拠はない」としたうえで、先行きの台湾ドル相場について「来年は米国からの111億ドル規模の兵器購入パッケージの履行もあり、米ドルに対して調整するとは見込んでいない」との見通しを示した。しかし、トランプ関税による実体経済への悪影響が見込まれるなか、台湾ドル相場の行方についても不透明な展開が続くことで、金融政策の選択肢を縛る可能性に引き続き注意する必要がある。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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