株高不況 株高不況

政策金利1%到達に向けた準備体操

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月54,000円程度で推移するだろう
  • USD/JPYは先行き12ヶ月160円程度で推移するだろう
  • 日銀は利上げを続け、2026年後半に政策金利は1.0%に到達しよう
  • FEDはFF金利を26年前半までに3.5%へと引き下げ、その後は様子見に転じるだろう
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が+0.2%、NASDAQが▲0.3%で引け。VIXは14.9へと低下。

  • 米金利はカーブ全般で小動き。予想インフレ率(10年BEI)は2.263%(▲0.7bp)へと低下。

実質金利は1.877%(+1.7bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+61.4bpへとプラス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが中位程度。USD/JPYは155半ばで推移。コモディティはWTI原油が57.6㌦(▲0.9㌦)へ低下。銅は11872.0㌦(+315.5㌦)へ上昇。金は4285.5㌦(+89.1㌦)へ上昇。

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経済指標・注目点

  • 12月の金融政策決定会合では、利上げが広く予想されており、もはや市場参加者の目線は声明文の変化や総裁記者会見に移行している。植田総裁は、記者会見がハト派であると受け止められ、会見中に円安が進行する事態を避けたいと思っているだろう。2024年4月、12月などがそれに該当する。

  • 今回、注目すべきは「中立金利」との距離感を巡る表現。12月会合で予想されている利上げによって政策金利水準は0.75%となり、中立金利の下限値として広く意識されている1%に近づく。ここで改めて、中立金利の認識を整理すると、以下のとおりである。

  • 現時点で中立金利は最低1%との見方が多い。これは自然利子率の推計値である▲1.0%~1.5%に、中長期的な物価目標である2%を足したもので、+1.0%~+2.5%という数値が広く知られている。この数値は2023年までのデータを基に日銀スタッフがペーパーで示したもので、現在も植田総裁を含む日銀政策委員がよく講演などで参照している。もっとも、長期にわたって政策金利が0%近辺にあった日本では、政策金利の変動に対して経済・物価がどう反応したのかを検証するデータが存在せず、ゆえに中立金利の推計が特に困難であることが理解されている。したがって、中立金利の推計値は参考値程度でしかない。

  • これまで実施してきた約0.5%ptの利上げによって、物価上昇率は低下せず、経済成長率が鈍化した確かな形跡がみられないことから判断すると、0.5%という政策金利水準が中立金利を下回っているというのは、それなりの高い確度で言えるだろう。

  • 実際、植田総裁は12月4日の参院財政金融委員会で、現在の金融政策を「様々な観点からみて緩和的な状態が続いている」として、「中立金利>政策金利」の状態にあると評価している。また中立金利について「現在はかなり広い幅でしか推計できていない概念だが、今後もう少し狭めることができたら適宜公表していきたい」と発言した。「中立金利の公表」と聞くと、Fedが示しているようなドットチャート形式を想起させるが、筆者は具体的な数値の公表はなく、日銀スタッフのペーパーによって新たな数値が示される程度のものを想定している。

  • いずれにしても現在、推計値の下限である1%が中立金利の目安として意識されているのは事実であり、1%が緩和・引き締めの分水嶺であるとする向きも相応にあろう。仮に中立金利が1%なのであれば、次回の利上げで政策金利と中立金利の距離は僅か0.25%まで縮まり、その次の利上げを以って、金融緩和局面は終了することになる。

  • このように中立金利の推計領域まで「あと一歩」に迫る中、植田総裁の発言に何らかの変化があるのではないか。最も蓋然性の高そうな変化としては、「中立金利は1%よりも、もう少し高いところにあると推計される」、「中立金利それ自体が、現在進行形で上がっている可能性がある」などとして、中立金利(特に下限)の認識に変更を加えることであろう。そうすることで利上げ打ち止め感を浮上させることなく、為替市場を牽制することができる。もし万が一、植田総裁が中立金利を1%と推定しているなら、12月会合では「政策金利水準は中立的になりつつある」などといった表現に変化するはずである。その場合、利上げ打ち止め感が一気に広がり、円安が進行しよう。

  • 現在、日銀は難しい立場にある。高市政権は12月の利上げは容認すると伝わっているものの、拙速な金融引き締めによって景気を冷やしてしまうことには極めて神経質であると思われ、中立金利の下限と意識されている1%に迫る利上げを厭わない日銀の政策態度を歓迎しないだろう。日銀は中立金利の認識を何らかの形で上方修正することによって「中立金利>政策金利」の状態を維持し、高市政権に対しては「依然として緩和的である」と説明するのではないか。

藤代 宏一


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