武器になる経済指標 武器になる経済指標

移民労働者減少による質の悪いインフレに注意(25 年8月米CPI)

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月45,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
  • 日銀は利上げを続け、2026年前半に政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が+0.8%、NASDAQが+0.7%で引け。VIXは14.7へと低下。

  • 米金利は長期ゾーンが低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.361%(+0.7bp)へと上昇。
    実質金利は1.658%(▲3.3bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は+47.3bpへとプラス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はUSDが全面安。USD/JPYは147前半へと下落。コモディティはWTI原油が62.4㌦(▲1.3㌦)へと低下。銅は10051.5㌦(+38.5㌦)へと上昇。金は3645.0㌦(▲8.1㌦)へと低下。

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注目点

  • 9月FOMCより先の金融政策を読む上で注目すべき米CPIは8月にやや下げ渋り、連続利下げの必要性に疑問を投げかけた。一方、同時間帯に発表された新規失業保険申請件数は急増し、こちらは連続利下げを促す結果であった。なお、ここでいう連続利下げは毎回のFOMCにおける利下げを指す。

  • 8月CPIは前月比+0.4%、前年比+2.9%となり、前月比の伸びは市場予想の+0.3%を上回った。エネルギーは前月比+0.7%と2ヶ月ぶりに上昇、食料が同+0.5%と2023年1月以来の高い伸びとなった。コアCPIは前月比+0.3%、前年比+3.1%と何れも市場予想に一致した。ただし、前月比の数値を小数点3桁までみると+0.346%であり、もう少しで四捨五入後の数値が+0.4%となるところであった。コアCPIの瞬間風速は前月比年率が+4.2%、3ヶ月前比年率が+3.7%、3ヶ月前比年率3ヶ月平均が+2.9%と加速の兆候が認められる。

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  • トランプ関税の直接的な影響を観察するためにコア財に目を向けると、前月比+0.28%、前年比+1.53%とやや加速感がみられるものの、依然として非連続的な変化は回避されている。関税負担がサプライチェーン各社に分担され、消費者段階へさほど及んでいないことが示されている。ただし、自動車など対米輸出価格が引き下げられるなど、関税負担が出荷元の国で消化されている品目があることに留意が必要だろう。事実、新車は前月比+0.3%と僅かな上昇に留まっている。中古車は同+1.0%と大きく伸びたが、それでも水準は2025年3月を下回っており、自動車全体として価格は安定している。もっとも、今後より広範な品目で関税負担分が米国内に持ち込まれれば、財インフレが加速感を強める可能性はある。「関税インフレは一時的、1度限り」という見方もあるが、価格転嫁が段階的に実施されることで、インフレが長期化することも考えられる。

  • サービス物価は前月比+0.32%、前年比+3.59%となり、7月から概ね横ばいであった。家賃が前月比+0.44%、前年比+3.63%とやや加速感を強めた。もっとも、Zillow Indexやケースシラー住宅価格指数などから判断すると、先行きのCPI家賃は鈍化が見込まれており、さほど問題視する必要はないと思われる。他方、家賃を除くコアサービスは前月比+0.33%、3ヶ月前比年率で+4.16%、3ヶ月前比年率3ヶ月平均で+3.04%と加速感がみられ、前年比でみても+3.21%と上向きの気配がある。今後、相対的に低賃金の移民が本国に送還され、ネイティブに代替されると、企業の労働コストが増加し、質の悪いインフレが発生する可能性は否定できない。実際、雇用統計では移民(≒外国生まれ)の雇用者数減少が確認されている。

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  • 以上、8月CPIはインフレ再加速の兆候が散見されたが、9月の利下げを妨げるほどではなかった。他方、新規失業保険申請件数は予想以上の増加となり、失業率上昇の懸念を惹起した。9月6日を含む週は26.3万件へと前週比2.7万件増加し、4週移動平均でも24.1万件へと上向きの曲線を描いている。筆者は、米国の労働市場が「辞めない・雇わない・解雇しない」の構図にあると指摘してきたが、今週発表分の数値はこの見方に疑問を投げかける。また本国に強制送還される不法移民は失業保険を申請できないことから、現在の失業保険申請件数が労働市場の悪化度合い、すなわち潜在的な失業率の上昇圧力を過小評価している可能性にも注意が必要であろう。もちろん1週間分の失業保険申請件数を過度に重視してしまうことには慎重にありたいが、来週以降も増加が続くようだと警戒感を一段引き上げる必要がある。

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藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。