株高不況 株高不況

・雇用増はなかったことに 移民抜きには語れない米雇用統計 ・次期総裁 あまりにも流動的

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月45,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
  • 日銀は利上げを続け、2026年前半に政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が▲0.3%、NASDAQが▲0.0%で引け。VIXは15.2へと低下。

  • 米金利はカーブ全般で金利低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.374%(▲1.6bp)へと低下。
    実質金利は1.699%(▲7.0bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は+56.3bpへとプラス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はUSDが全面安。USD/JPYは147後半へと下落。コモディティはWTI原油が61.9㌦(▲1.6㌦)へと低下。銅は9897.5㌦(▲0.5㌦)へと低下。金は3624.0㌦(+46.7㌦)へと上昇。

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注目点①

  • 8月米雇用統計は雇用者数の増加傾向が風前の灯火となり、失業率は僅かに上昇した。トランプ政権が厳格化した移民政策によって、外国生まれの雇用者数が減少に転じたことで、労働市場の拡大が鈍った。

  • 8月の雇用者数は前月比+2.2万人となり、市場予想(+7.5万人)を下回った。同時に過去分は2.1万人分が下方修正されたことから、雇用者数の3ヶ月平均は+2.9万人へと減速。過去数ヶ月、過去分の下方修正がきつくなっており、6月分に至っては速報値が示した+14.7万人という堅調な姿は見る影もなく、▲1.3万人に修正されている。年初来では48.8万人の雇用者数の増加が「なかったこと」になっている。なお直近3年は6月分の下方修正幅が突出して大きくなっており、夏場に雇用者数の増勢が鈍化する一因となっている。もっとも、2024年のように年後半に上方修正が優勢となり、米景気減速が和らいだ経験もあり、今年も同様の軌跡を辿る可能性に一定程度留意したい。

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  • 2025年入り後、雇用増の鈍化として重要な要素は移民であり、これが労働市場の縮小均衡に寄与している。移民抑制政策を背景に移民労働者数(外国生まれの雇用者数)は前年比▲2.5%と2ヶ月連続で減少。前年差でみれば81万人もの減少であり、トレンドは明確に下方屈折している。それをネイティブの雇用増(前年比+2.3%)が補うことで、全体として労働者数の減少は回避されているが、安価な労働力としての移民が抑制されれば、低成長と賃金インフレが併存する確率は高まる公算が大きい。

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  • 失業率の公表値は4.3%へと0.1%上昇し、2024年6月以降のレンジ上限を突破した。小数点2桁では4.32%となり、こちらもレンジ上限を上回った。4.3%という数値は、依然として完全雇用に近い数値と言えるが、米国内で失業を経験せず本国に帰国する移民の存在を踏まえれば、実体を過小評価している可能性はある。またこの間、U6失業率、すなわちフルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人等も失業者と見なす基準も8.1%へと0.2pt上昇しており、労働市場が質的にも悪化方向にあることが示された。労働参加率は62.33%へと小幅に上向いたが、基調的にみれば上向きの気配はない。就労目的で滞在する移民(労働参加率が高い)が減少しており、労働参加率に低下圧力が生じている。

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  • 平均時給は前月比+0.3%、前年比+3.8%と概ね横ばいであった。労働市場が縮小均衡に近い状態にあることから、労働需給はさほど緩んでおらず、結果として賃金上昇率に大きな変化が生じていないとみられる。JOLTS統計で示されていたとおり、労働市場は「辞めない・雇わない・解雇しない」の構図にあり、そうした下で賃金は伸縮的でなくなっている可能性がある。今後、安価な労働力としての移民が減少する中、その代替の労働力としてネイティブが充足されれば、平均時給に上昇圧力が生じるだろう。Fedが利下げに二の足を踏むとしたら、関税インフレよりもこちらが重要な要素になるのではないか。

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注目点②

  • 石破総裁が遂に辞意を表明した。9月8日に総裁選前倒しの是非を問う予定であったことから、その前日に自ら総裁の座を退くことで「踏み絵」を実施せず、党の分裂回避に努めた格好だろう。先行きは、総裁選がフルスペックになるか「党大会に代わる両院議員総会」になるのか不透明である上、今回も多くの候補者が出ることが予想され、情勢は余りにも流動的である。もっとも、金融市場では高市氏の総裁就任が一定程度意識されているとみられ、初期反応として9月8日午前10時時点は円安・株高の反応がみられている。

藤代 宏一


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