インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

韓国、25年2Qは輸出駆け込みで拡大も、先行きは不透明感山積

~4-6月GDPは前期比年率+2.44%と5四半期ぶりの高成長も、通商協議の行方が今後を左右~

西濵 徹

要旨
  • このところの世界経済と国際金融市場は、トランプ米政権の関税政策に翻弄されている。米国は韓国に対して25%の相互関税を課す方針を示すなど圧力を強めており、外需依存度が高い同国経済に大きな打撃が予想される。一方、足下では関税発動を見越した「駆け込み輸出」が景気を押し上げ、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+2.44%と5四半期ぶりの高い伸びとなっている。ただし、先行きの輸出環境や内需には不透明感が強く、仮に相互関税が発動されれば景気に深刻な悪影響が出ることは必至とみられる。
  • 6月の大統領選を経て発足した李在明政権は、景気回復を最重要課題に据えており、大規模な補正予算を編成して財政出動を拡大させている。一連の政策により相当程度景気は押し上げられる可能性はある一方、財政状況の悪化が懸念される。また、足下では首都ソウルの不動産価格が急上昇するなど昨年来の利下げの副作用とも呼べる動きも顕在化している。米国との通商協議の行方は予断を許さない状況にあるが、その行方次第で韓国経済は大幅な下押し圧力に直面する可能性がある。足下のウォン相場は米ドル安が下支えする動きがみられるものの、その行方には注意を払う必要性が高まっていると捉えられる。

このところの世界経済や国際金融市場はトランプ米政権の関税政策に翻弄されている。米国は安全保障上の脅威への対応を理由に、自動車や自動車部品、鉄鋼製品、アルミ製品に対する追加関税を発動している。さらに、貿易赤字の縮小を目的に、すべての国に一律10%、一部の国や地域に非関税障壁に応じて税率を上乗せする相互関税を課す方針を示した。米国は4月に相互関税を一旦発動させるも、直後に上乗せ分を90日間停止し、個別に通商協議を行う方針へと転換した。他方、中国は相互関税への報復措置に動き、米中双方が応酬を重ねた結果、互いに高関税を課す貿易戦争に発展した。その後の米中協議を経て、5月に米中は互いに報復関税を撤廃した上で、上乗せ関税を90日間停止して追加協議を行うことで合意し、貿易戦争は一旦収束した。また、米国は今月初めに多くの国に対する上乗せ分の停止期限を8月1日に延長し、各国にあらためて関税を通告するなど協議の加速化を目指す姿勢をみせる。中国との協議を巡っても、期限延長を前提にした交渉方針が示されるなど、難航している様子がうかがえる。一方、米国との通商協議を巡っては、英国、ベトナム、インドネシア、フィリピン、そして、日本が合意に至り、数ヶ国が合意間近と報じられているものの、その行方は依然として不透明である。事実、日本は急転直下での合意に至ったものの、直前までは協議が難航していると報じられており、実際の状況とは乖離していた模様である。このことから、足下では様々な国が協議の進展を示唆する向きをみせているものの、過度に楽観も悲観にも傾く必要性は低いものと捉えられる。

こうしたなか、米国は韓国に対する相互関税を25%と設定している。韓国はアジア新興国のなかでも構造面で外需依存度が相対的に高い上、対米輸出額も名目GDP比7%に達するため、25%の関税が課せられれば、同国経済に深刻な悪影響を与えるとみられる。さらに、対米輸出のうち4割を自動車や自動車部品、鉄鋼製品、アルミ製品といった追加関税の対象が占めており、トランプ関税が外需の足かせとなることは避けられない。足下では自動車や自動車部品に25%、鉄鋼製品やアルミ製品に50%の追加関税が課される一方、相互関税は一律分の10%に抑えられている。他方、米国は銅や医薬品のほか、半導体に対する追加関税を検討している模様であり、仮に追加関税の対象が広げられれば、外需を取り巻く環境は一段と厳しさが増すことが懸念される。よって、輸出企業の間では相互関税の引き上げや追加関税が打ち出される前に輸出を拡大させる『駆け込み』の動きが活発化しており、短期的にはこうした動きが景気を押し上げることが期待される。韓国と米国の通商協議を巡っては、当初は交渉が先行しているとみられたものの、その後は政局を巡る混乱も影響して一進一退の様相をみせている。6月の大統領選を経て発足した李在明(イ・ジェミョン)政権の下で立て直しが図られているものの、協議の行方は依然として見通しが立ちにくい状況にある。よって、来月1日付で相互関税の上乗せ分が発動するなど、価格競争を巡る環境が激化すれば一転して輸出に下押し圧力が掛かることは避けられないと予想される。

図表
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上述したように、足下の輸出に駆け込みの動きが出ていることを反映して、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+2.44%と前期(同▲0.87%)から2四半期ぶりのプラス成長に転じるとともに、5四半期ぶりの高い伸びとなっている。中期的な基調を示す前年同期比ベースの成長率も+0.5%と前期(同▲0.0%)から2四半期ぶりのプラス成長に転じており、頭打ちの傾向が一服した様子がうかがえる。財輸出が4四半期ぶりの拡大に転じるとともに、5年弱ぶりのペースで拡大するなど駆け込みの動きが顕在化しているほか、生産拡大に向けた素材・部材など原材料需要を反映して輸入も3四半期ぶりの拡大に転じている。また、足下のインフレが中銀目標近傍で推移している上、中銀は昨年以降に計4回、累計100bpの利下げに動いており、こうした動きが個人消費を下支えする様子もうかがえる。その一方、輸出の先行き不透明感が企業部門の設備投資を抑制しているほか、首都ソウル以外の不動産市況は低迷を受けて住宅需要も力強さを欠くなど、民間需要は弱含む推移が続く。さらに、大統領選の実施を受けて政府消費は拡大するも、政局混乱による政府機能の不全状態を受けて公的需要は下振れしている。そして、輸出駆け込みに向けた生産拡大が進んだことを反映して、在庫投資の成長率寄与度はプラス(前期比年率+0.74pt)となっている。よって、足下の景気は久々の高成長となったものの、先行きに不透明要因が山積する状況にあることに留意する必要がある。

図表
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李在明政権は、最重要課題に早期の経済の立て直しと景気回復を掲げるとともに、その実現に向けた取り組みを強化している。具体的には、政権発足から2週間で20.2兆ウォン相当の追加歳出を含む総額30.5兆ウォン(GDP比1.2%)規模の2次補正予算を編成している。なお、同国では前政権が総額13.8兆ウォン(GDP比0.5%)規模の1次補正予算を成立させたばかりであるが、2次補正予算では李氏の看板政策である商品券(国民1人当たり15~30万ウォン相当)配布、建設関連の財政支援、人工知能(AI)分野や中小企業への投資、中小企業向け債務再編プログラムなどが盛り込まれた。他方、補正予算の施行により景気は相当程度押し上げられる可能性がある一方、2次補正予算は19.8兆ウォン相当が国債発行により賄われる計画であるなど、財政状況の悪化は避けられない。よって、中銀は金融緩和による低金利政策を通じて景気下支えを図ることで政府と政策の歩調を合わせる動きをみせているが、足下では首都ソウルを中心とする不動産価格が急上昇するなど昨年来の利下げの『副作用』とも呼べる動きが顕在化している(注1)。仮に米国との通商協議が進まず相互関税が課されれば、外需の不透明感が高まり、雇用環境も急速に悪化するとともに、家計債務を巡るリスクが高まることも考えられるなど、中銀の政策対応が困難の度合いを増す事態も予想される。足下のウォン相場は、トランプ米政権の政策運営の不透明さを理由に米ドル安が進んでいる。しかし、先行きについては景気に対する不透明感や政策対応の困難さが相場の足かせとなる可能性に留意する必要がある。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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