- 要旨
-
-
日経平均株価は先行き12ヶ月39,000円程度で推移するだろう。
-
USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
-
日銀は半年に一度の利上げを続け、2026年1月までに政策金利は1.0%に到達しよう。
-
FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
-
金融市場
-
前営業日の米国市場は、S&P500が+1.0%、NASDAQが+1.2%で引け。VIXは16.8へと低下。
-
米金利はカーブ全般で金利上昇。予想インフレ率(10年BEI)は2.317%(+2.4bp)へと上昇。
実質金利は2.180%(+9.3bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+46.5bpへとプラス幅縮小。 -
為替(G10通貨)はUSDが独歩高。USD/JPYは144後半へと上昇。コモディティはWTI原油が64.6㌦(+1.2㌦)へと上昇。銅は9693.0㌦(▲46.5㌦)へと低下。金は3322.7㌦(▲28.0㌦)へと低下。
注目点
-
トランプ関税の影響が警戒されていた5月の米雇用統計は安心感のある結果であった。仔細にみれば弱さも散見されたが、全体としては雇用環境に大きな変化がないことを印象付ける結果であった。こうしたデータは、Fedにインフレの帰趨を見極めるための時間的余裕を与えることで、利下げ再開時期を先延ばしにする効果がある。
-
5月の雇用者数は前月比+13.9万人となり、同+12.6万人を見込んでいた市場予想を小幅ながら上回った。過去2ヶ月分は合計▲10.0万人分が下方修正されたことから、3ヶ月平均値では+13.5万人と加速感に乏しい結果であったが、それでも労働市場に非連続な変化が観察されなかったことは朗報と言える。業種別では、景気循環の影響をさほど受けない教育・ヘルスケア(+8.7万人)が大きく伸びた他、レジャー・ホスピタリティ(+4.8万人)が堅調。その他では運輸(+0.6万人)と建設(+0.4万人)が小幅に増加した。反対に専門(▲1.8万人)は減少。また関税の影響を受けやすいとされる製造業(▲0.8万人)と小売(▲0.7万人)においても小幅ながら雇用が削減された。もっとも、5月の企業サーベイ(ISM、PMI)に基づくと企業が雇用を慎重化させた様子は見受けられなかった。またCB消費者信頼感調査における雇用判断DIもみても非連続な変化は生じていない。企業は、トランプ大統領の通商政策が穏健な方向に向かうとの見方から労働力を維持しているのだろう。株式市場では、投資家が「強硬な関税案は引っ込められるはず」との算段から、トランプ大統領の過激な発言で株価が下落した際、それを好機とみて安値を積極的に拾いにいくトレードが一部で流行している。企業が雇用を維持している背景にも「関税は下がるはず」という思考様式があるのではないか。就業形態別ではフルタイムが微減、パートタイムが増加であった。
- 失業率は4.2%と横ばいであった。小数点2桁では4月の4.19%から5月は4.24%へと上昇し、2024年6月に4%を突破してからは概ね横ばいで推移している。直近では新規失業保険申請件数がやや増加傾向にあるものの、5月時点では失業率に影響を与えるには至っていなかった模様。またJOLTS統計の解雇率も低位で安定している。これらを踏まえれば、やはり現時点で労働市場が変調をきたしているとは考えにくい。失業者を広義の尺度で捉えて算出するU6失業率、すなわちフルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人を失業者と見なす基準でみても7.8%と横ばいとなり、2月につけた8.0%を依然として下回っている。

- この間、労働市場の厚みを示す労働参加率は大きくみれば横ばいとなっている。5月の62.37%という水準はパンデミック発生後の「戻り高値」である2023年8月(62.78%)を下回るものの、潜在的に達成可能な水準(CBOによる推計値)は凌駕しており、労働供給に大きな問題はないと判断される。55歳以上(38.4%→38.2)の労働参加率が一向に上向かない中、25-54歳は83.4%と高水準にある。

- 賃金由来のインフレの帰趨を読む上で重要な平均時給は前年比+3.87%(4月:+3.86%)と概ね横ばい。前月比では4月に+0.19%と控えめな伸びになった後、5月は+0.42%と反動がみられ、瞬間風速を示す3ヶ月前比年率(3ヶ月平均値)は+3.55%(4月+3.37%)と大きくみれば、鈍化傾向にある。賃金インフレの落着きを窺わせる数値であり、この点はFedに政策の自由度を与える。賃金由来のインフレに対する懸念から、利下げが遅れるリスクは低下していると判断される。もちろん通商交渉の進展次第であるが、関税インフレが限定的となれば「景気が悪くなればFedが動ける」という安心感が生じよう。

藤代 宏一
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。









