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ルペン氏に仏大統領選出馬の望み

~ルペン・バルデラの双頭体制で支持層拡大を目指す極右~

田中 理

要旨
  • フランスの次期大統領レースのフロントランナーである極右政党のルペン候補は、公金横領の罪で公職停止の判決が下り、次期大統領選挙への出馬が難しくなったが、控訴裁判所は1日、2026年夏までに不服申し立ての審理を終えることを表明。有罪判決が覆されれば、2027年の大統領選挙への出馬の道が開ける。次の大統領選挙を展望するのは時期尚早だが、中道票を固めるフィリップ元首相と、ルペン氏かバルデラ氏の極右候補による一騎打ちとなる可能性が高い。

4月1日付けレポート「ルペン氏有罪で、仏大統領選出馬が困難に」では、マクロン大統領が退任する次のフランス大統領選の世論調査でリードする極右政党・国民連合のマリーヌ・ルペン候補が公金横領の有罪判決で5年間の公職停止となり、大統領選の出馬が危ぶまれると伝えた。その後の報道によれば、パリの控訴裁判所は1日、3月31日の有罪判決に対して3件の不服申し立てがあり、これを受理し、2026年の夏に判決を下せるように本件の審理を進めるとの発表があった。公職停止は即時効力を持ち、不服申し立てがあった場合も、その効力は停止されない。昨日時点では、2027年の大統領選挙までに結審せず、ルペン氏の出馬への道が断たれるとみられていたが、控訴裁判所が迅速に審理を進める意向を示唆したことで、有罪判決が覆った場合には出馬への道が開かれることになる。判決直後に行われた世論調査では、極右支持者だけでなく、与党(中道と中道右派)支持者の一部でも判決が政治的な意図に基づくとみられている(図)。

これにより、ルペン氏がこの段階で国民連合の大統領候補の座をバルデラ党首などに譲る可能性は後退した。有罪判決の確定後に候補の座を譲った場合も、大統領選挙までには1年近くの時間があり、後継候補の選挙戦が準備不足に終わる可能性も少ない。1日のレポートで指摘した通り、有力な代替候補であるバルデラ氏は、政治経験の浅さや党内基盤の弱さを指摘する声もあるものの、先の欧州議会選挙とフランス国民議会(下院)選挙で同党を過去票獲得に導いた。ソーシャル・メディアを駆使し、若者を中心に抜群の訴求力を誇る。悲願の政権奪還には極右政党の脱悪魔化(普通の政党へのイメージ刷新)が不可欠で、ルペン一家の一員でないことも浮動票獲得につながる。他方で、ルペン候補はイデオロギー重視の伝統的な党支持層や現状に不満を抱える低所得層・労働者階級に加えて、最近では都市部の中産階級やエリート層にも支持を広げつつある。移民や治安に加えて、教育、購買力、雇用などのテーマを積極的に取り上げ、党所属議員には上品な服装や立ち振る舞いを徹底させる「ネクタイ戦略」を進めている。大統領候補がこのままルペン氏となる場合もバルデラ氏と交代する場合も、次の大統領選挙の最有力候補の1人となることは間違いない。

次の大統領選挙を展望するには些か気が早いが、三選禁止でマクロン大統領が退陣し、後継候補として中道票を集める可能性が高いのは、右派寄りの中道政党・地平線を率いるフィリップ元首相とマクロン大統領が旗揚げした中道政党・再生に所属するアタル元首相の2人。有権者の間にはマクロン大統領への不信感も根強く、マクロン路線の踏襲者と受け止められることがプラスに働くとは限らない。フィリップ氏が最近、政権から距離を置き始めているのは、そうした意図があるのだろう。多くの左派票を集める可能性が高いのは、極左政党・不服従のフランスのメランション候補と、かつて二大政党の一角を占めた中道左派の社会党に近いグリュックスマン氏の2人。極左と社会党の間に溝が広がっており、左派票が分断する可能性が高い。その場合、決選投票は、中道票を固めるフィリップ元首相と、ルペン氏かバルデラ氏の極右候補の一騎打ちとなる。過去2回と同様に反極右票が集まり、対立候補が勝利するのか。更なる脱悪魔化が奏功し、三度目の正直となるのか、目を離せない。

当面の注目点としては、国民連合が昨年12月と同様に、左派が主導する内閣不信任案に同調し、バイル政権を退陣に追い込むか否かだろう。年後半には国民議会の解散・総選挙が解禁されるが、公職停止中のルペン氏は前倒し解散時に議会選挙に出馬できず、議員資格を失う。大統領選挙への出馬に議員資格は必要ないため、このまま解散に持ち込むのか、今回の判決が自身の失脚と大統領選挙の勝利阻止を狙った政治的な意図が働いたものであると糾弾し、議会や公の場で有権者にアピールする機会を重視するのかは、現時点では見通せない。バイル政権が存続できるかは、左派や極右の動向だけでなく、左派連合から離脱した社会党の動向も鍵を握る。社会党はバイル政権の発足と予算成立時の内閣不信任案に同調せず、消極的に政権を支持した。だが、有権者にマクロン大統領支持に回ったと受け止められることは避けたい。年金改革の見直しや来年度予算案での所得分配強化などの要求が通らない場合、新たな政局展開も予想される。

以 上

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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