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2025.01.24
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シンガポール通貨庁、外部環境を警戒しつつ「慎重な緩和」にシフト
~米ドル高や「トランプ2.0」を警戒しつつ、物価と景気の安定へ金融政策を慎重な緩和に移行~
西濵 徹
- 要旨
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- シンガポール通貨庁(MAS)は24日の定例会合で金融政策を緩和方向にシフトさせる決定を行った。今回の決定では、政策手段のうち名目実効為替レート(NEER)の実勢上昇率(傾き)をやや緩やかにするとした。足下のインフレは商品高の一巡も影響して頭打ちの動きを強めている。他方、堅調な推移をみせた景気は米トランプ政権による政策運営を警戒して急ブレーキが掛かる懸念がくすぶる。こうしたなか、米ドル高にも拘らずNEERは上昇基調が続くなど周辺国に比べて物価への影響は軽微に留まってきた。他方、足下では米ドル高が一段と進んでNEERに頭打ちの兆しが出ており、MASは今回の決定に際して「慎重な緩和」に留めたとみられる。外部環境に不透明要因が山積するなか、当面は慎重な緩和を続けると予想される。
シンガポール通貨庁(MAS)は、24日に開催した定例会合において金融政策を緩和方向にシフトさせる決定を行った。MASは、金融政策の調整手段として名目実効為替レート(NEER)の政策バンド(許容変動幅)の幅、中央値、実勢上昇率(傾き)を用いているが、今回は「実勢上昇率(傾き)をやや緩やかにする」と緩和方向にシフトさせる決定を行った。MASによる政策変更は7会合ぶりであり、インフレ鈍化を理由にアジア新興国のなかで中銀が利下げに動く流れに追随したとみられるほか、緩和シフトそのものもコロナ禍対応を目的に動いた2020年3月以来のこととなる。シンガポールではここ数年、商品高やコロナ禍一巡による景気回復の動きに加え、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨SGドル安が輸入物価を押し上げるなど、インフレが高進して2022年後半には一時14年ぶりの高水準となった。しかし、その後は商品高の動きが一巡するとともに、中国の景気減速を反映する形で原油をはじめとする国際商品市況が上値の重い推移をみせてきたことも重なり、インフレは頭打ちの動きを強めた。なお、その後も国際金融市場においては米ドル高圧力がくすぶる展開が続き、アジアをはじめとする新興国通貨は調整の動きを強めるとともに、SGドルも対米ドル相場に調整圧力が掛かる動きがみられた。しかし、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の堅調さも追い風にSGドルは周辺のアジア新興国通貨に比べると調整度合いは小幅に留まり、SGドルの名目実効為替レートは一昨年以降も緩やかな上昇が続くなど、周辺国に比べて通貨安圧力は抑えられてきた。結果、こうした動きも追い風にインフレは頭打ちの動きを強めており、直近12月のインフレ率は前年同月比+1.61%となっているほか、コアインフレ率は同+1.80%と3年強ぶりの低水準となるなど落ち着いた動きをみせている。他方、昨年の同国景気は米国など主要国景気の堅調さなどを追い風に底入れする展開が続いてきたものの、米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて、トランプ政権は発足前から関税をてこに『ディール(取引)』を引き出す戦略をみせるなど政策運営に対する懸念が高まるなか、底堅い動きをみせた企業マインドは下振れしており、景気に急ブレーキが掛かる懸念が高まっている。なお、米大統領選後は米ドル高の動きが一段と強まるとともに、周辺国通貨に対して比較的堅調な推移をみせたSGドル相場も調整の動きを強めるなど、底堅いく推移してきた名目実効為替レートも頭打ちに転じている。ただし、依然として名目実効為替レートは高水準で推移するなど物価への影響は軽微とみられ、金融市場においてはMASがいずれかの政策手段を通じて緩和シフトに動くとの見方が強まっていた。今回の決定において幅と中央値を据え置いた背景には、上述したようにこのところの米ドルが多くの通貨に対して強含みするなど、米ドル高が進むなかで名目実効為替レートを取り巻く環境が変化していることも影響したと考えられる。会合後に公表した声明文では、昨年10月の前回会合以降の名目実効為替レートについて「米ドル高が強含むなかでSGドルの対米ドル相場は調整したが、緩やかに政策バンドの範囲内で推移している」とした上で、景気動向について「世界的な貿易政策の動きが重石になる形で緩やかなものに留まる」として「生産活動は潜在成長率並みで推移して今年の経済成長率は+1~3%になる」との見通しを示している。また、物価動向については「政策運営を通じて今年のコアインフレ率は+1~2%、インフレ率も+1.5~2.5%の範囲内で推移する」との見通しを示す一方、「景気と物価動向は外部環境を巡る不確実性に左右される」としている。その上で、今回の決定について「慎重な調整は政策バンドの緩やかな上昇軌道と一致しており、中期的な物価安定を確実なものとするため」としており、米国の政策運営や米ドル相場を巡る不透明感がくすぶるなか、当面は慎重な政策運営を継続する展開が続くと予想される。



西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

