武器になる経済指標 武器になる経済指標

日銀 7月会合続報

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月44,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150程度で推移するだろう。
  • 日銀は9月に利上げを実施するだろう(政策金利は+0.25%)。
  • FEDは9月に利下げを開始、FF金利は25年末に4.00%(幅上限)への低下を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。S&P500は▲2.3%、NASDAQは▲3.6%で引け。VIXは18.0へと上昇。

  • 米金利はツイスト・スティープ化傾向。予想インフレ率(10年BEI)は2.269%(▲0.6bp)へと低下。
    実質金利は2.013%(+3.9bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は▲15.1bpへとマイナス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はJPYが最強。USD/JPYは153後半へと下落。コモディティはWTI原油が77.6㌦(+0.6㌦)へと上昇。銅は9104.0㌦(▲62.0㌦)へと低下。金は2415.7㌦(+8.4㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ(前日差)
米国 イールドカーブ(前日差)

米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国 長短金利差(2年10年)
米国 長短金利差(2年10年)

米国イールドカーブ、前日差、名目金利・予想インフレ率・実質金利、長短金利差
米国イールドカーブ、前日差、名目金利・予想インフレ率・実質金利、長短金利差

注目点

  • 筆者は昨日の当レポートで「金融政策決定会合を1週間後に控えた現時点において『日銀 利上げ決定へ』などという観測記事やリーク報道が何も出ていないことからすると、7月の利上げ確率は低いと判断せざるを得ない」として利上げ予想時期を7月から9月に変更した。

  • その数時間後、ロイター通信から2つの観測報道が流れた。ひとつは「日銀、国債購入3兆円程度に違和感なし 利上げ時期は慎重に判断」、もうひとつは「BOJ to weigh rate hike next week, detail plan to halve bond buying, sources say」という英語記事であった。英語版の表題は「日本銀行 来週の金融政策決定会合で利上げを検討へ」といったところか。表題は何となく似ているが、後述するとおり記事の内容は微妙に異なっており、同じ記事の日本語版と英語版という位置づけではない。結論を先取りすると日本版は「利上げなし」、英語版は「利上げはきわどい判断」という内容であった。この記事が発表される前、7月は約0.04%pt相当の利上げが織り込まれていたものが、記事発表後は0.07%ptに上昇した。僅かと言えば僅かであるが、英語版の記事に反応した(海外?)投資家が相当数存在したことを物語る。為替は一段と円高が進行した。

  • まず日本語版の利上げに関する要旨は以下のとおり。

「今後1‐2年の国債買い入れの減額方針を決定するとともに経済・物価情勢を点検し、追加利上げの要否について議論する」

「追加利上げに関しては、その必要性ではおおむね一致しているものの、弱含んでいる消費動向を確認すべきとの意見もあり、慎重に時期を判断するとみられる」

「日銀内では経済・物価情勢が想定通りに進んでいることに加え、円安に伴う物価上昇リスクが強まっているとして利上げを支持する声が広がりつつある。一方、足元の個人消費の弱さへの懸念は強く、追加利上げに当たっては消費の持ち直しを今後のデータで確認する必要があるとの指摘が出ている。日銀では、追加利上げに向けた素地は整いつつあるとして、今回の会合で利上げが見送られても、近い将来の利上げを予想する向きもある」

⇒利上げの判断は、全体として慎重ないしは中立的と判断する読者が多いだろう。追加利上げの要否について議論するのは当然であり、その時期の判断について「慎重」と修飾されているなら、「今回ではない」と読むのが自然だろう。結びの一文は「今回の会合で利上げが見送られても、近い将来の利上げを予想する向きもある」とされており、利上げ先送り論が強いとの印象を与える内容になっている。

  • 次に英語版の要旨は以下のとおり。記事内では4人の「関係者」の発言が記載されていた。

「消費見通しの不確実性を考慮すると、決定はきわどいものになる」
(The decision will be a close call and a hard one to make," given uncertainty over the consumption outlook)

「今動くか年後半にするかは、本当に微妙な判断」
(It's really a judgment call, in terms of whether to act now or later this year)

「今後数ヶ月以内で利上げする可能性が高いことは明らかだ。問題はその時期だ」
(What's clear is that the BOJ will probably raise rates in coming months. It's just a question of timing)

「日銀にとって、まだまだ道のりは長い。もう一度利上げしても、金融環境は非常に緩和的なままだ」
(For the BOJ, there is still a long way to go. Another rate hike will still keep Japan's monetary condition very loose)

⇒翻訳によって解釈には幅がありそうだが、英語記事の方が利上げに前向きな印象があり、利上げは五分五分と判断する人も多いだろう。日本人としては「関係者」がどのように日本語で発言したかを知りたいところだが、少なくとも英語記事においては7月会合における利上げ議論が俎上に上っている印象を受ける。事実、債券市場や為替市場では当該記事が意識されたとみられる。

  • やや皮肉なことに、当該英語記事が喚起した日銀の利上げ観測によって、7月の利上げ確率は低下したと言えるだろう。日銀にとって喫緊の課題になりつつあった円安が一服したことが大きい。この為替水準ならば日銀は様子見を選択する余裕がありそうだ。日銀は名目賃金の更なる上昇を確認した上で、個人消費の回復を待ち、9月に利上げを実施するのではないか。

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。