お金と経済・お金のしくみ お金と経済・お金のしくみ

景気予測調査から見た四半期決算見通し

~「業務用機械」の収益大幅上方修正は新紙幣効果の可能性~

永濱 利廣

要旨
  • 2024年4-6月期の法人企業景気予測調査を見ると、24年度計画では、売上高計画が小幅上方修正も、経常利益計画は減益計画が小幅下方修正。
  • 増収計画の上方修正率が高い業種は「非鉄金属」「業務用機械」「電気・ガス・水道」「生活関連サービス」「その他の輸送用機械」と続く。「非鉄金属」については、資材価格や24年問題に伴う輸送コスト上昇等を受けた製品価格の値上げが寄与した可能性。「業務用機械」については、券売機や自販機などの新紙幣特需が計上された可能性。「電気・ガス・水道」については、コスト増に伴う価格転嫁の影響が大きい。「生活関連サービス」については値上げの反映、「その他の輸送用機械」については、円安に伴う輸出の売上高膨張も寄与している可能性。
  • 経常利益計画が大幅上方修正されている業種は「業務用機械」「情報通信機械」「医療・教育」「金融保険」「農林水産」の順となる。「業務用機械」は新紙幣刷新効果が出ている可能性。「情報通信機械」や「農林水産」「非鉄金属」は諸々のコスト増加分を価格転嫁しているものの依然として減益計画になっている。「医療・教育」については、診療報酬改定やリスキリング推進など公的要因が後押しとなった可能性がある。「金融、保険」については、これまでの市場環境や利ザヤの改善に加えて、保険会社の政策保有株売却益が寄与していることが推察される。
  • より直近の動向が反映される6月日銀短観の業種別収益計画(7月公表)も今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。
目次

経常利益が下方修正

6月13日に公表された2024年4-6月期法人企業景気予測調査は、今年5月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、今期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。

そこで本稿では、今年7月下旬からの四半期決算発表で、今年度の企業業績計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。

下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業の各調査時期における売上高と経常利益計画の今年度見通しの推移を見たものである。まず売上高を見ると、製造業・非製造業とも増収率は上方修正となっている。このため、四半期決算でも今期の売上高計画が上方修正される業種には注目が集まるものと推察される。

一方の経常利益は、製造業で今年度減益計画の減益幅が前回調査から拡大する一方で、非製造業は縮小している。このことから、7月下旬からの四半期決算発表では、製造業を中心に今年度の経常利益計画の下方修正が出てくることが予想されるが、そうした中でも、経常利益計画の上方修正が打ち出される業種には注目が集まるものと推察される。

企業収益計画
企業収益計画

増収率上方修正の「非鉄金属」「業務用機械」「電気・ガス・水道」

以下では、7月下旬からの四半期決算で、今期売上高計画で上方修正が期待される業種を見通してみたい。下表は業種別売上高計画を前年比と前回調査からの修正率で比較したものである。

売上高計画(2024年4-6月期景気予測調査) 前年度比
売上高計画(2024年4-6月期景気予測調査) 前年度比

結果を見ると、24年度は「木材・木製品」「鉱・採石・砂利採取」「建設」「その他のサービス業」以外の全業種で増収計画となっている。

こうした中で、前年比の上方修正率が高い業種は「非鉄金属」「業務用機械」「電気・ガス・水道」「生活関連サービス」「その他の輸送用機械」となっている。なお、「業務用機械」の主な製品としては、事務用、サービス・娯楽用、計量器、測定器、分析機器・試験機、測量、理化学機械、医療用品、光学・レンズ、武器等が含まれる。また、「生活関連サービス」を詳細に見ると、我々の生活に密着したクリーニング業や理容業、美容業、銭湯、スーパー銭湯、エステティック業、リラクゼーション業、ネイルサービス業、旅行業、結婚相談業、家事サービス業、冠婚葬祭業、等になる。

まず「非鉄金属」については、資材価格や24年問題に伴う輸送コスト上昇等を受けた製品価格の値上げが寄与した可能性が示唆される。また「業務用機械」については、7月から紙幣が刷新されることになっており、券売機や自販機などの新紙幣特需が計上された可能性が高い。

一方、「電気・ガス・水道」については、前回調査から中東情勢緊迫化に伴う化石燃料上昇や円安が進んだため、コスト増に伴う価格転嫁の影響が大きいことが推察される。

他方、「生活関連サービス」については、燃料コスト上昇や人手不足に伴う人件費増等により、値上げが反映されたことが予想される。なお、「その他の輸送用機械」については、諸々の値上げに加えて、円安に伴う輸出の売上高膨張も寄与している可能性がある。

「業務用機械」「情報通信機械」「医療・教育」等が増益率大幅上方修正

続いて、経常利益計画から増益率の上方修正が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、多くの業種で減益計画となっており、これは国内企業物価や企業向けサービス価格上昇等に伴うコスト増が主因と推察される。

こうした中、経常利益の上方修正が目立つ業種は「業務用機械」「情報通信機械」「医療・教育」「金融、保険」「農林水産」等であり、いずれも二桁を上回る上方修正率となっている。

特に「業務用機械」は増益率も高いため、売上高計画のところでも指摘したように新紙幣刷新効果が出ている可能性が高い。一方、「情報通信機械」や「農林水産」は増収率が高い中で減益幅が大幅縮小となっていることからすれば、諸々のコスト増加分を価格転嫁しているものの、依然として減益計画になっていることが推察される。

一方、「医療・教育」については増収率も高いことから、診療報酬の改定やリスキリングの推進など公的な要因が後押しとなった可能性がある。

また「金融、保険」については、これまでの市場環境や利ザヤの改善に加えて、保険会社の政策保有株売却益が寄与していることが推察される。

なお、日銀が7月に公表する6月短観の業種別収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、直近の影響をより織り込んでいる可能性が高いため、6月短観における大企業の収益計画も四半期決算と今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。

経常利益計画(2024年4-6月期景気予測調査)
経常利益計画(2024年4-6月期景気予測調査)

永濱 利廣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

永濱 利廣

ながはま としひろ

経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ