株高不況 株高不況

工作機械受注が教えてくれる景況感 遂に伸び率はマイナス

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月137程度で推移するだろう。
  • 日銀は現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは23年3月までにFF金利(誘導目標上限値)を5.0%へと引き上げるだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。NYダウは+0.1%、S&P500は+0.9%、NASDAQは+1.9%で引け。VIXは22.5へと低下。
  • 米債市場は休場。
  • 為替(G10)はUSDが全面安。USD/JPYは138近傍へと低下。コモディティはWTI原油が86.5㌦(+0.6㌦)へと上昇。銅は8271.5㌦(+167.0㌦)へと上昇。金は1753.7㌦(+40.0㌦)へと上昇。

注目点

  • 工作機械受注統計(日本工作機械工業会)によると10月の受注額(原数値)は1411億円であった。筆者作成の季節調整値は前月比▲1.8%、1408億円と2ヶ月連続で減少し3ヶ月平均値は▲0.8%と減少傾向にあり、前年比伸び率(原数値)は▲5.4%と2020年10月以来のマイナス圏に転落した。内訳は国内向けが季節調整済み前月比+1.0%、原数値前年比▲11.4%。外需は円安による嵩上げ効果があったにもかかわらず季節調整済み前月比▲5.3%、原数値前年比▲2.4%と弱かった。受注額は全体としてみれば高水準を維持しているものの、伸び率で評価するとその景況感は冴えない。グラフの印象は水準と伸び率で大きく異なる。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

  • 日本の工作機械受注は、そのサイクルが世界経済の包括的指標であるOECD景気先行指数やアナリストの業績予想(TOPIX予想EPS)と連動性を有する。OECD景気先行指数は日本における内需回復が支えとなるも、高インフレの混乱に見舞われている米国とエネルギー戦略の難しさに直面している欧州の激しい落ち込みに先導され、リーマンショックとパンデミック発生直後の混乱期を除くとITバブル崩壊時のボトム付近まで低下している。中国のゼロコロナ戦略見直しが反転のきっかけになると期待されるが、当局の頑な姿勢に鑑みると過度な期待は禁物だろう。そうした下で、直近はグローバル製造業PMIが2ヶ月連続で50を割り込み、なおかつ新規受注・在庫バランスが悪化するなど景気のダウンサイドリスクが高まっており、こうした現状を踏まえると当面のOECD景気先行指数は更なる低下が予想される。そうした下で日本企業の業績予想(TOPIX予想EPS)も伸び率が鈍化してきた。日本企業の業績予想は円安による嵩上げ効果もあって欧米対比で底堅さを維持しているとはいえ、海外景気の減速に対する懸念が高まっている。工作機械受注はこうした風向きの悪さと一致しているようにみえる。

図表4
図表4

図表5
図表5

図表6
図表6

  • 受注サイクルの位置取りを確認するために縦軸に工作機械受注の水準(36ヶ月平均からの乖離)、横軸に方向感(6ヶ月前比)をとった循環図をみると、直近は左上局面(高水準・伸び率マイナス)に位置している。これは受注が高水準を維持するものの、その勢いが明確に失われていることを意味しており、過去の経験則に従うなら今後の受注は高水準から減少を続け、左下方向(低水準・伸び率マイナス)へと旋回する軌道を描くと予想される。今後、株式市場における業績下振れ警戒感は一段と強まると予想され、それは循環図上の「左下」に移行する局面で最も強くなると考えられる。もっとも、その前後で一部の先見的な投資家は受注サイクル底打ちを先取りして動き始めるだろう。逆張り的な視点で見れば、大底への到達を見極める段階に入っていると言える。

図表7
図表7

藤代 宏一


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