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揃いつつある政策修正の理由(日銀) 国内賃金上昇+海外金利安定

藤代 宏一

  • 日銀は本日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定。輸入物価上昇によって消費者物価は3%を超える状況が続くものの、国内景気の回復が不十分であるとの認識から金融環境を引き締める必要性は乏しい、というこれまでの判断が維持された格好だ。為替については政府の為替介入とFedの利上げ幅縮小観測が相まって円安が一服しているため、それを理由に金融政策を修正する必要性は一段と乏しくなった。

  • 展望レポートによると2022年度の消費者物価(除く生鮮食品)は前年度比+2.9%へと0.6%pt上方修正され、2023~24年度は共に1.6%とされた(7月時点では2023年度が+1.4%、2024年度が+1.3%)。依然として2%の物価目標達成は「一時的」であるとの見通しが維持された。

  • もっとも、インフレを取り巻く状況はここへ来て変化の兆しがある。筆者が注目しているのは賃金動向。現時点で黒田総裁は賃金上昇率が十分に高まっていないことを緩和継続の理由にしているが、人手不足感が強まる下で企業収益が高水準を維持している現状に鑑みると、2023年度に向けて賃金が加速度的に上昇し、日銀の想定を上回る可能性はある。その場合、消費者物価はエネルギー要因を抜きにしても1%を優に上回って推移するだろう。今回の展望レポートによれば生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価(日銀型コアCPI)は2023~24年度が共に+1.6%とされている。仮に日銀型コアCPIの+1.6%という見通しに日銀自身が自信を深めるなら、現在の「超」緩和的な金融政策の修正を模索する可能性は十分にある。

  • またここへ来て海外金利にピークアウト感が漂いつつあることも重要。YCC修正にあたって最大の障壁となるのは(コントロール解除時の)10年金利急騰であるが、海外中銀の金融引き締めが一服し世界的に金利上昇圧力が弱まれば、政策修正は幾分容易になる。

  • 現時点で筆者は、少なくとも黒田総裁の任期満了まではYCCを軸とする現在の金融緩和策が維持されるとの見通しを維持している。海外経済の不透明感が強い現状では、日銀が出口戦略に舵を切った直後にグローバルなリセッションが到来し、デフレ的状況に舞い戻る危険性があるためだ。ただし欧米経済がソフトランディングを遂げ、日本国内の賃金が上昇することで賃金と物価が相互刺激的に上昇する兆しがみえれば、日銀がYCCの修正を模索する機運は高まる。

藤代 宏一


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