株高不況 株高不況

「無難」な雇用統計 ただし賃金インフレは落ち着く気配にある

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月125程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは、2022年は毎FOMCで利上げを実施するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。NYダウは▲1.0%、S&P500は▲1.6%、NASDAQは▲2.5%で引け。VIXは24.8へと上昇。
  • 米金利はカーブ全般で金利上昇。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.765%(+8.2bp)へと上昇し、実質金利は0.171%(▲5.6bp)へと低下。
  • 為替(G10)はUSDが最強。USD/JPYは130後半へと上伸。コモディティはWTI原油が118.9㌦(+2.0㌦)へと上昇。金は1845.4㌦(▲21.1㌦)へと低下。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ(前日差)
米国 イールドカーブ(前日差)

米国 予想インフレ率(10年BEI)
米国 予想インフレ率(10年BEI)

米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

注目点

  • 5月米雇用統計は「無難」な結果となり、Fedの金融政策見通しに影響を与えるものではなかった。6・7月にそれぞれ50bpの利上げを敢行した後、9月FOMCにて利上げ幅を25bpに戻すのか、あるいは50bpで据え置くのか、その判断材料として5月雇用統計の結果はインパクトに欠ける結果であった。もっとも、後述するように賃金インフレが和らぐ兆候は強まっている。この動きが一過性要因でなければ、9月FOMCの利上げ幅が25bpに落ち着く可能性を高める。

  • 民間非農業部門雇用者数は前月比+39.0万人となり4月と同程度の伸びであった。もっとも市場予想(+31.8万人)は上回っており、この点において景気減速懸念を和らげる数値であった。宿泊飲食店等接客業(レジャー・ホスピタリティ)が+8.4万人と伸びを牽引したほか、教育(+7.4万人)や運輸(+4.7万人)、建設(+3.6万人)が伸び、政府部門(+5.7万人)も増加に貢献。この結果、雇用者数は2020年1月を100とすると99.7まで回復した。

米国 雇用者数
米国 雇用者数

米国 雇用者数
米国 雇用者数

米国 業種別雇用者数
米国 業種別雇用者数

  • 失業率は3.6%と4月から不変(小数点2桁でも3.62%と不変)。もっとも、労働参加率(62.24%→62.34%)の上昇と併せて考えると、ポジティブな結果であった。就業率(就業者数÷人口)は60.08%へと0.09%pt回復。企業の人手不足感が著しく、求人件数が高止まりする中、労働市場へ(再)参入する動きが復活したことは供給制約の長期化懸念を和らげる。ただし、失業者を最も広義な尺度で捉えて算出するU6失業率(フルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人を失業者と見なす)が7.1%へと2ヶ月連続で上昇したことはネガティブ。空前の人手不足下において労働需給のミスマッチが拡大している可能性がある。

米国 失業率
米国 失業率

米国 失業率
米国 失業率

米国 労働参加率・就業率
米国 労働参加率・就業率

  • 平均時給は前月比+0.3%、前年比+5.2%と市場予想(前月比+0.4%、前年比+5.5%)を下回る伸びに落ち着いた。3ヶ月前比年率では+4.50%、同3ヶ月平均では+4.34%と下方屈折。このように瞬間風速が減速基調にあることから判断すると、前年比伸び率は間もなくピークアウトすると思われる。賃金上昇については、購買力が「インフレ負け」しないとの視点でみればポジティブだが、インフレの原因が賃金上昇にあるとの見方に基づけばやはりネガティブである。過去数ヶ月のトレンドである前年比5%超の伸びは2019年対比で明確に高く、正常な状態とは言い難い。その点において今回の結果は「良い鈍化」と捉えて差し支えないだろう。

米国 平均時給
米国 平均時給

  • 週平均労働時間は34.6時間と前月比横ばいであった。パンデミックの回復初期局面にあたる2020年後半は少ない人手で生産活動を支える構図にあり平均労働時間は著しく長期化したが、労働市場の量的回復が進むなか、パンデミック発生前のレンジ(34.3~34.6)の上限で推移した。これらの結果、名目総賃金(就業者数×時給×労働時間)は前年比+9.63%とピークアウト感が認められ、3ヶ月前比年率(3ヶ月平均)では+7.7%へと減速した。

  • 5月雇用統計は極めてタイトな労働需給の逼迫度合いが落ち着き、賃金の異常な上昇が終息しつつあることを示唆した。もっとも、10日発表の5月CPIは前年比+8.3%と高止まりが予想されており、インフレのぶり返しが懸念される状況にある。コアCPIは前年比+5.9%へと0.3%ptの減速が予想されているとはいえ、Fedが金融引き締めの手を緩める直接的な材料になるとは考えにくい。

藤代 宏一


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